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【新婚旅行編】四日目:とある兵士達は二人を見守り、写真に収め、そして
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仲睦まじく手を繋ぎ、時折微笑みを交わし合っているバアル様とアオイ様。御夫婦が静かに歩み寄れば、お二方の訪問を歓迎するようにわらわらと集まってくる。
照れたような笑顔を浮かべたアオイ様がその小さな手をそっと伸ばせば、それぞれ頭を差し出してくる。ちゃんと順番を守りつつも、早くこっちも撫でて欲しいと催促せんばかりに。
早くもお二人方のお姿は埋もれてしまっていた。ライオンにゾウ、ウサギにリス。ユニコーン、グリフォン、フェンリル、ヒュドラ。大小様々な生き物達が集って出来た囲いの中心へと。まだ、訪れて間もないというのに。
これほどまでに明らかな大歓迎を受けていれば、注目を浴びてしまうのは必然。お二方と同じく、この触れ合い広場にいらっしゃるお客さん方の視線も、スタッフの方の視線すらもお二方のもの。驚き、呆気、感動、興奮、羨望、様々な種類の眼差しが注がれ続けている。
「いやぁ、東のゾーンでもモテモテでいらっしゃるな」
驚きと尊敬の念を込めて呟けば即座に返ってきた。
「はは、全く。撮影が捗るね」
頭の上からは、楽しげな笑いと共に。
「当たり前だろ、バアル様とアオイ様だぞ? お二方の魅力は種族を超えるんだよ!」
隣からは、今更何を言ってんだ、とでも言いたげな熱のこもった声が。
今日も今日とて俺達は、ただただ癒やしの時間を過ごさせてもらっている。バアル様とアオイ様、御夫婦の新婚旅行を見守らせてもらっている。
俺が肩車をしているベィティは、カメラマンに転職したかのよう。終始、投影石を手にバアル様とアオイ様のベストショットの撮影に励んでいる。
今となってはベィティの仕事は重要業務の一つだ。なんせ、我らが主が、ヨミ様が御夫婦の写真を心待ちにしていらっしゃるからな。
隣のコイツはというと……シアンはというと……いや、まぁ、ほとんど通常運転だったな。違いがあるといえば、アオイ様の親衛隊として気ぃ張っている時間よりも、御夫婦のファンでいる時間が長ぇってだけで。
にしても、投影石を空中に飛ばせないからって、一番背の高い俺が肩車することになるとは。仕方がないんだけどよ。認識阻害の術がかかった俺達の手から離れちまうと、投影石だけが周囲の客に見えちまうからな。そしたら、芋づる式に俺達の存在までバレちまうかもしれねぇ。
万が一のリスクは減らせるだけ減らしておかねぇとな。御夫婦が気兼ねなく安全に、心ゆくまで新婚旅行を楽しめるようにする為にも。
「ぐぅ……っ」
改めて気を引き締め直していると、俺の隣で周囲に気を配っていたシアンが急に胸を押さえながら背を丸めた。
「おいおい、大丈夫か?」
「アオイ様が……アオイ様が……」
「アオイ様がどうしたって……」
小刻みに震えているシアンの背を撫でながら耳を澄ませる。少し遠くに聞こえる生き物達の鳴き声、楽しげに戯れる声に混じっているアオイ様の声だけに意識を集中させていく。
「……え、バアルさんとの馴れ初めを教えて欲しい、ですか? ……初めましての時もカッコいいなって思ってたんですけど……意識したのは、心細かった俺を何も言わずに抱き締めてくれた時……ですかね……」
段々と萎んでいく愛らしい声に反して、周りの鳴き声が賑やかになる。どうやら、質問攻めにあっていたらしい。
そういや西の触れ合い広場でも、小さな声で自己紹介をしていらしたな。奥さんにしてもらえたとか、バアル様の幸せは任せて欲しいとか、健気だけれども頼もしいことを仰っていらしたっけ。
その時もシアンは胸を押えて……って、なんだ。今回もまたいつもみてぇに悶えていただけかよ。心配させやがって。
「って、や、やっぱり照れますね……ひょわ、っ、バアル……」
よくよく見れば、尻尾をブンブン振っていたシアンの背を宥めていると、勢いよくバアル様がアオイ様を抱き締めていらした。アオイ様への通訳を放棄したまま、彼の華奢な身体を腕の中へと閉じ込めている。ああ……これは、また。
照れたような笑顔を浮かべたアオイ様がその小さな手をそっと伸ばせば、それぞれ頭を差し出してくる。ちゃんと順番を守りつつも、早くこっちも撫でて欲しいと催促せんばかりに。
早くもお二人方のお姿は埋もれてしまっていた。ライオンにゾウ、ウサギにリス。ユニコーン、グリフォン、フェンリル、ヒュドラ。大小様々な生き物達が集って出来た囲いの中心へと。まだ、訪れて間もないというのに。
これほどまでに明らかな大歓迎を受けていれば、注目を浴びてしまうのは必然。お二方と同じく、この触れ合い広場にいらっしゃるお客さん方の視線も、スタッフの方の視線すらもお二方のもの。驚き、呆気、感動、興奮、羨望、様々な種類の眼差しが注がれ続けている。
「いやぁ、東のゾーンでもモテモテでいらっしゃるな」
驚きと尊敬の念を込めて呟けば即座に返ってきた。
「はは、全く。撮影が捗るね」
頭の上からは、楽しげな笑いと共に。
「当たり前だろ、バアル様とアオイ様だぞ? お二方の魅力は種族を超えるんだよ!」
隣からは、今更何を言ってんだ、とでも言いたげな熱のこもった声が。
今日も今日とて俺達は、ただただ癒やしの時間を過ごさせてもらっている。バアル様とアオイ様、御夫婦の新婚旅行を見守らせてもらっている。
俺が肩車をしているベィティは、カメラマンに転職したかのよう。終始、投影石を手にバアル様とアオイ様のベストショットの撮影に励んでいる。
今となってはベィティの仕事は重要業務の一つだ。なんせ、我らが主が、ヨミ様が御夫婦の写真を心待ちにしていらっしゃるからな。
隣のコイツはというと……シアンはというと……いや、まぁ、ほとんど通常運転だったな。違いがあるといえば、アオイ様の親衛隊として気ぃ張っている時間よりも、御夫婦のファンでいる時間が長ぇってだけで。
にしても、投影石を空中に飛ばせないからって、一番背の高い俺が肩車することになるとは。仕方がないんだけどよ。認識阻害の術がかかった俺達の手から離れちまうと、投影石だけが周囲の客に見えちまうからな。そしたら、芋づる式に俺達の存在までバレちまうかもしれねぇ。
万が一のリスクは減らせるだけ減らしておかねぇとな。御夫婦が気兼ねなく安全に、心ゆくまで新婚旅行を楽しめるようにする為にも。
「ぐぅ……っ」
改めて気を引き締め直していると、俺の隣で周囲に気を配っていたシアンが急に胸を押さえながら背を丸めた。
「おいおい、大丈夫か?」
「アオイ様が……アオイ様が……」
「アオイ様がどうしたって……」
小刻みに震えているシアンの背を撫でながら耳を澄ませる。少し遠くに聞こえる生き物達の鳴き声、楽しげに戯れる声に混じっているアオイ様の声だけに意識を集中させていく。
「……え、バアルさんとの馴れ初めを教えて欲しい、ですか? ……初めましての時もカッコいいなって思ってたんですけど……意識したのは、心細かった俺を何も言わずに抱き締めてくれた時……ですかね……」
段々と萎んでいく愛らしい声に反して、周りの鳴き声が賑やかになる。どうやら、質問攻めにあっていたらしい。
そういや西の触れ合い広場でも、小さな声で自己紹介をしていらしたな。奥さんにしてもらえたとか、バアル様の幸せは任せて欲しいとか、健気だけれども頼もしいことを仰っていらしたっけ。
その時もシアンは胸を押えて……って、なんだ。今回もまたいつもみてぇに悶えていただけかよ。心配させやがって。
「って、や、やっぱり照れますね……ひょわ、っ、バアル……」
よくよく見れば、尻尾をブンブン振っていたシアンの背を宥めていると、勢いよくバアル様がアオイ様を抱き締めていらした。アオイ様への通訳を放棄したまま、彼の華奢な身体を腕の中へと閉じ込めている。ああ……これは、また。
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