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【新婚旅行編】四日目:今になって解けた謎
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お互いにお互いの魅力を語り合うという、何ともカオスな惚気合戦。聞かされている方はたまったもんじゃあないだろうに、フェニックスとコルテは終始嬉しそうに聞いてくれていた。
それどころか、それぞれが俺とバアルさんの好きポイントを出してくるという、嬉しいけれども照れくさい参戦の仕方まで。そんな、背中の擽ったさが絶えない写真の振り返りが一段落ついた頃、フェニックスが再び頭を下げてきた。
『本日は誠に楽しいお時間をありがとうございます。それから、申し訳ございませんでした。お礼が遅れてしまったどころか、魔力の枯渇という貴方方が一番大変な時にお見舞いに向かうことも出来ずに……』
「気にしないで下さい。そのお気持ちだけで十分ですから。それに、間違ってたらすみませんけど、何か来れない事情があったんじゃないですか? 例えば、この場所を守らないといけなかったとか」
今はもう、この世界を飲み込まんとしていた穢れの脅威はない。
でも、フェニックスはずっとここに居るみたいだった。パーク内ではなく、この世界の最期の避難所となる予定だったこの白い空間に。ということは、まだここを守る必要があるということだろう。
『……御推察の通りです。私はこの地を守る必要がございます。たとえ、この穏やかな平和が未来永劫続いたとしても。それが、私の使命。その約束が、我らが神との最後の繋がりなのですから』
「神様との、繋がり……」
『はい。とはいっても、これは全て私の我が儘。我らが神が魔力の花を咲かせてくれたことで契約も薄れてしまった今、皆を縛るものは何もないのですが……』
神様との契約がどういった内容だったのかは俺には知る由もない。でも、ここに居る皆さんは、今だったらこのパークを出ていこうと思えば何処へでも行けるようだ。別のエリアにだって、何なら国を出て行くことだって。
『まぁ、この通り。誰も住み慣れたパークを出ようとはしなかったのですがね』
嘴の先を軽く数回打ち鳴らしてから、フェニックスは瞳を細めた。その表情は困っているようにも、嬉しそうにも見えた。
『存外、カモフラージュとして行っていたパークでのお仕事を気に入っているようでして。以前と変わらず此方でお世話になっております』
小さく尾羽根を揺らしながら、今度は誇らしげに勧めてくる。
『もし、お時間に余裕がありましたら、是非ショーを観に行ってあげて下さい。皆、お客様を楽しませるべく、日々練習を重ねておりますので』
「はいっ、必ず観に行きます! 東と西のゾーンへはショーの時間に合わせて向かう予定だったので。ね、バアルさん」
「ええ、大変楽しみにしております」
『それは、それは……皆も喜んでくれるでしょう。私も含めて、ひと目だけでもアオイとバアルにお会いしたいと切望しておりましたので。世界を救ってくれたお礼を、神の願いを叶えてくれたお礼をお伝えしたいと』
フェニックスが向けてくれる眼差しは、その瞳に宿っていた感謝は、俺にとっては眩しいほど。
むしろ、俺の方こそお礼を言いたいくらいなのに。皆さんの助けがあったからこそ、今こうしてバアルさんと、大好きな方々と一緒に日々を過ごせているのだから。
「俺、皆さんに会ってきますね。俺も皆さんに力を貸してくれたお礼を言いたいから」
大きな手が繋いでくれる。顔を向けるとバアルさんが小さく頷いてくれた。俺と同じ気持ちなんだと伝えてくれた。
『……そうですか……では、お先に皆に伝えておいても宜しいでしょうか? 貴方方が会いたがっていると。当初の約束では、新婚旅行を邪魔しないよう離れたところから見守ることに決めておりましたので」
「ああ、それで。中々皆さん姿を見せてくれなかったんですね」
今になって、何の気配もしなかった謎が解けるとは。
『はい……ただ、幼子達はアオイの魔力に惹かれるがまま、押しかけてしまったようですが……』
「あの時分では、まだ上手く私達の正体を見破ることが出来なかったのでしょう。皆様、アオイに触れ合ってから、ようやく分かったようでしたので」
「そうだったんですね」
バアルさんが補足として話しを継いだ後、フェニックスが『ご迷惑をおかけしました』とまた頭を下げてしまった。全然気にしていないんだと、むしろ嬉しかったんだと伝えれば、すぐに頭を上げてくれたけど。
それどころか、それぞれが俺とバアルさんの好きポイントを出してくるという、嬉しいけれども照れくさい参戦の仕方まで。そんな、背中の擽ったさが絶えない写真の振り返りが一段落ついた頃、フェニックスが再び頭を下げてきた。
『本日は誠に楽しいお時間をありがとうございます。それから、申し訳ございませんでした。お礼が遅れてしまったどころか、魔力の枯渇という貴方方が一番大変な時にお見舞いに向かうことも出来ずに……』
「気にしないで下さい。そのお気持ちだけで十分ですから。それに、間違ってたらすみませんけど、何か来れない事情があったんじゃないですか? 例えば、この場所を守らないといけなかったとか」
今はもう、この世界を飲み込まんとしていた穢れの脅威はない。
でも、フェニックスはずっとここに居るみたいだった。パーク内ではなく、この世界の最期の避難所となる予定だったこの白い空間に。ということは、まだここを守る必要があるということだろう。
『……御推察の通りです。私はこの地を守る必要がございます。たとえ、この穏やかな平和が未来永劫続いたとしても。それが、私の使命。その約束が、我らが神との最後の繋がりなのですから』
「神様との、繋がり……」
『はい。とはいっても、これは全て私の我が儘。我らが神が魔力の花を咲かせてくれたことで契約も薄れてしまった今、皆を縛るものは何もないのですが……』
神様との契約がどういった内容だったのかは俺には知る由もない。でも、ここに居る皆さんは、今だったらこのパークを出ていこうと思えば何処へでも行けるようだ。別のエリアにだって、何なら国を出て行くことだって。
『まぁ、この通り。誰も住み慣れたパークを出ようとはしなかったのですがね』
嘴の先を軽く数回打ち鳴らしてから、フェニックスは瞳を細めた。その表情は困っているようにも、嬉しそうにも見えた。
『存外、カモフラージュとして行っていたパークでのお仕事を気に入っているようでして。以前と変わらず此方でお世話になっております』
小さく尾羽根を揺らしながら、今度は誇らしげに勧めてくる。
『もし、お時間に余裕がありましたら、是非ショーを観に行ってあげて下さい。皆、お客様を楽しませるべく、日々練習を重ねておりますので』
「はいっ、必ず観に行きます! 東と西のゾーンへはショーの時間に合わせて向かう予定だったので。ね、バアルさん」
「ええ、大変楽しみにしております」
『それは、それは……皆も喜んでくれるでしょう。私も含めて、ひと目だけでもアオイとバアルにお会いしたいと切望しておりましたので。世界を救ってくれたお礼を、神の願いを叶えてくれたお礼をお伝えしたいと』
フェニックスが向けてくれる眼差しは、その瞳に宿っていた感謝は、俺にとっては眩しいほど。
むしろ、俺の方こそお礼を言いたいくらいなのに。皆さんの助けがあったからこそ、今こうしてバアルさんと、大好きな方々と一緒に日々を過ごせているのだから。
「俺、皆さんに会ってきますね。俺も皆さんに力を貸してくれたお礼を言いたいから」
大きな手が繋いでくれる。顔を向けるとバアルさんが小さく頷いてくれた。俺と同じ気持ちなんだと伝えてくれた。
『……そうですか……では、お先に皆に伝えておいても宜しいでしょうか? 貴方方が会いたがっていると。当初の約束では、新婚旅行を邪魔しないよう離れたところから見守ることに決めておりましたので」
「ああ、それで。中々皆さん姿を見せてくれなかったんですね」
今になって、何の気配もしなかった謎が解けるとは。
『はい……ただ、幼子達はアオイの魔力に惹かれるがまま、押しかけてしまったようですが……』
「あの時分では、まだ上手く私達の正体を見破ることが出来なかったのでしょう。皆様、アオイに触れ合ってから、ようやく分かったようでしたので」
「そうだったんですね」
バアルさんが補足として話しを継いだ後、フェニックスが『ご迷惑をおかけしました』とまた頭を下げてしまった。全然気にしていないんだと、むしろ嬉しかったんだと伝えれば、すぐに頭を上げてくれたけど。
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