間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】四日目:とあるスタッフ達は、みんなの想いに応えたい

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「でね、そのお客様方なんだけど……以前のお客様とは違うみたいなのよ。前回の方々は親子で、それもヨミ様とサタン様と雰囲気が似ていらっしゃったでしょう?」

「そうだったみたいですね」

 その伝説のお客様達の来訪は、惜しいことに私がこちらで働く前だった。だから先輩方から聞いた話でしか知らない。

 でも、その武勇伝自体は、まるで私自身も見ていたかのように事細かく知っている。先輩方がご自身の自己紹介の後に、必ずといっていいほどその話しをしてくれていたお陰で。

 それほどまでに衝撃的だったんだろう。私自身もこちらでパークの皆と過ごす日々を重ねるほど、その凄さを理解することが出来たから。

「でも、今回の方々はご夫婦、しかも新婚さんなんですって! お互いの魔力の花を身に着けていて、そりゃあ仲睦まじいご様子だったって話よ」

「わぁ……素敵ですね。多分、新婚旅行ですよね? 南エリアに数ある観光地の中でも、このパークを選んでもらえるなんて……」

「嬉しいわよねぇ……頑張っている甲斐があるっていうか……」

「はい……」

 訪れてくれたお客様の笑顔を見る度に、かつての自分の心躍る感動を思い出す。私もなれているのだろうか。あの日、夢のようなひと時をくれた彼らの一員に。

「っていっても、皆の協力があってこそですけど」

「それは当然だけれども、素直に誇っていいんじゃない? 頑張っているのは事実なんだし。ほら、みんなも、そうだそうだって言ってくれてるわよ?」

「え?」

 先程まであんなに熱心に練習を重ねていたのに。いつからこちらを見ていたのだろうか。私達のすぐ近くに、ガラスの壁に沿うように彼らが集まってきていた。皆、柔らかな眼差しで私達を見つめている。

 本当に言ってくれている気がする。私も皆の一員だって認めてくれているような。

 少ししんみりとした気分に浸ってしまっていると、先輩から励ますように背中を叩かれた。俯きかけていた顔を上げれば、そのまま優しく撫でてくれた。

 ふと思い出したように先輩が声を上げた。明るく弾んでいて、ここら一帯に響き渡るような声だった。

「あっ、あとそのお客様方の魔力の花のことなんだけど。形は違うんだけど、色はバアル様とアオイ様のお花とそっくりなんですって」

「へぇ、珍しいですね」

「でしょ? 花の形が似ることはよくあることだけれど、色はねぇ。魔力の本質ってのは千差万別だから、一つとして同じ色になることはないって聞いていたんだけれど」

「実はそのお客様方、バアル様とアオイ様の変装だったりして? お忍びで新婚旅行に来られたとか……」

 浮かんだのは、ありもしないもしかして。見ているだけで釣られて笑顔になってしまうほど、仲睦まじいお二方が、ヨミ様と世界を救って下さったのに謙虚なお二方が、もし私の勤めるパークに来てくれていたら。

 それはとても光栄で、皆に自慢したくなるくらいに誇らしくて嬉しいことなのだけれど。

「あら、もしそうだとしたら素敵ね! みんなが歓迎してくれているみたいで」

「ですよねっ」

「だからって訳じゃあないけれど、私達も頑張らないとね。張り切っているみんなの想いに応える為にも今日もバッチリサポートしないと!」

「はいっ」

 また、ぽんっと私の背中を叩いてから先輩が微笑む。いつものように私が、頑張ろうね、と皆に声をかけると、いつも以上に元気な水しぶきが返事代わりに返ってきた。
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