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【新婚旅行編】四日目:必要のなくなった、元最期の場所
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『夫婦水入らずの時間をお邪魔しておいてなんですが、もう少しだけお付き合い頂けませんか?』
申し訳無さそうに切り出してきたフェニックスからのお誘いに、迷うことなく俺は乗った。バアルさんが、まだ話したそうにしていたのもある。けれども、俺自身もまだ話したかったのだ。
このまま立ち話では、と招かれたのは更に森の奥。暗さは増すばかりだが、フェニックスが照らしてくれているお陰でもう薄闇に怯える必要はない。
「そういえば、なんで俺達のこと分かったんですか? バアルさんが認識阻害の術をかけてくれているのに」
道すがら、ふと思い出した今更な事柄。何の脈絡もなく話しかけてしまっていたけれど、フェニックスは快く答えてくれた。
『私達には、その類の術はほとんど効かないのですよ。まだ魔力を上手く扱えない、幼い子達は別ですが』
「彼らは個々の意思や生命を宿していれど、その存在自体は魔力そのもの……私達よりも、魔力の流れを感じることに長けております故」
「成る程、それで俺のことも人間だって分かったんですね」
『ええ。ですが、そうでなくとも私達が貴方を見間違うことなどございませんが』
意味深な言葉により、俺が抱いた疑問が解けることはなかった。目的地に着いたのだろう、フェニックスが止まったのだ。
でも、目の前は行く手を遮るかのように木々が立ちはだかっているだけ。茂みも高く、隙間なく生い茂っている。とてもじゃないが、鋭く尖った枝葉に足を刺されることなく通り抜けるのは不可能に近い。
『しばしお待ちを……今、開けますね』
「え?」
開けるって、何処を?
不思議に思っている内に、更に不思議なことが起きた。フェニックスがひと鳴きしただけで、木々が、茂みが、勝手に左右に動いて道を開けたのだ。
それどころかご立派な高い門まで、突然生えてきた蔦が伸びていき、絡み合って作られていく。歓迎してくれているように蔦で出来た門にぽんっ、ぽんっ、ぽんっと咲いた花はフェニックスの羽と似た赤だった。
バアルさんは驚いてはいないみたい。幼い頃からの付き合いらしいから、来たことがあるんだろう。
『どうぞ』
「は、はい、お邪魔します」
「失礼致します」
門をくぐった瞬間感じた不思議な感覚。水面から顔を出した時のような。
一瞬の内に終わってから、ガラリと変わった雰囲気。さっきまで俺達が居たハズの、コピー&ペーストしたような木々の景色は何処にもない。ただ、ひたすらに白が広がっていた。
バアルさんとの儀式会場を思い出すような、白い石造りの床が何処までも続いているように見える。天井も果てしない。見上げたままでいると目眩がしてしまいそう。どれだけ目を凝らしても、こちらも果ては見えなかった。
「あの、ここは……?」
『今は、私の家です』
「今は?」
『ええ、万が一の際には、国民全員を穢れから守る為の避難所となる予定でした……ですが、貴方方のお陰でその万が一もなくなりましたからね』
元、避難所か……確かにこれだけの広さがあれば問題はなさそうだ。なんなら、街の一つや二つ簡単に作れてしまいそう。こちらには便利な術がたくさんあるんだもんな。
『どうぞ、あちらにお座りになられて下さい。私は此方に止まらさせて頂きますので』
フェニックスが嘴で示した先には、いつの間にやらテーブルとイスが二脚。その側には一本の木のように大きな止まり木が現れていた。どれも晴れ渡る空のように青かった。全てが白の世界だと、よりその鮮やかさが際立って見えた。
フェニックスが止まり木に落ち着いたのを見届けてから、バアルさんと一緒に席に着く。すると今度は、俺たちの前にそれぞれティーカップが現れた。
やっぱりカップも青かった。それどころか湯気が立ち上っている紅茶もキレイな青。どうぞ遠慮せずに、と促されて早速頂いた風味は爽やかで、不思議で、ほんのり甘かった。口当たりの良い、飲みやすいお茶だった。
『どうやら、すでに息子とはお会い出来ていたようですね』
「……息子さん、ですか?」
幼いケルベロスやペガサス達には会えたけど……フェニックスの子供なんて。
「イド君のことでございますよ」
「イド君……ああ、最初に俺達のガイド役になってくれようとしていた」
『ええ「イド」は此方の皆様が考えてくれたニックネームで、本名は「☆#%&」ですが』
なんて言ったんだろう? 全然聞き取れなかった。名前の部分だけ、全く聞いたことのない未知の言語のように聞こえたから。
「彼らにとって、名前は特別な意味を持ちます故……私達が咲かせることが出来る魔力の花のように、特別な想いを寄せている間柄でしか聞くことが叶わないのです」
「ああ、それで……」
『アオイならば、すぐに聞き取れるようになると思いますよ? 貴方の魔力は大変温かくて心地がいい。ヨミやサタン、バアルと同じで私達が好む魔力です。それに、貴方はこの世界にとっての救世主の一人なのですから』
申し訳無さそうに切り出してきたフェニックスからのお誘いに、迷うことなく俺は乗った。バアルさんが、まだ話したそうにしていたのもある。けれども、俺自身もまだ話したかったのだ。
このまま立ち話では、と招かれたのは更に森の奥。暗さは増すばかりだが、フェニックスが照らしてくれているお陰でもう薄闇に怯える必要はない。
「そういえば、なんで俺達のこと分かったんですか? バアルさんが認識阻害の術をかけてくれているのに」
道すがら、ふと思い出した今更な事柄。何の脈絡もなく話しかけてしまっていたけれど、フェニックスは快く答えてくれた。
『私達には、その類の術はほとんど効かないのですよ。まだ魔力を上手く扱えない、幼い子達は別ですが』
「彼らは個々の意思や生命を宿していれど、その存在自体は魔力そのもの……私達よりも、魔力の流れを感じることに長けております故」
「成る程、それで俺のことも人間だって分かったんですね」
『ええ。ですが、そうでなくとも私達が貴方を見間違うことなどございませんが』
意味深な言葉により、俺が抱いた疑問が解けることはなかった。目的地に着いたのだろう、フェニックスが止まったのだ。
でも、目の前は行く手を遮るかのように木々が立ちはだかっているだけ。茂みも高く、隙間なく生い茂っている。とてもじゃないが、鋭く尖った枝葉に足を刺されることなく通り抜けるのは不可能に近い。
『しばしお待ちを……今、開けますね』
「え?」
開けるって、何処を?
不思議に思っている内に、更に不思議なことが起きた。フェニックスがひと鳴きしただけで、木々が、茂みが、勝手に左右に動いて道を開けたのだ。
それどころかご立派な高い門まで、突然生えてきた蔦が伸びていき、絡み合って作られていく。歓迎してくれているように蔦で出来た門にぽんっ、ぽんっ、ぽんっと咲いた花はフェニックスの羽と似た赤だった。
バアルさんは驚いてはいないみたい。幼い頃からの付き合いらしいから、来たことがあるんだろう。
『どうぞ』
「は、はい、お邪魔します」
「失礼致します」
門をくぐった瞬間感じた不思議な感覚。水面から顔を出した時のような。
一瞬の内に終わってから、ガラリと変わった雰囲気。さっきまで俺達が居たハズの、コピー&ペーストしたような木々の景色は何処にもない。ただ、ひたすらに白が広がっていた。
バアルさんとの儀式会場を思い出すような、白い石造りの床が何処までも続いているように見える。天井も果てしない。見上げたままでいると目眩がしてしまいそう。どれだけ目を凝らしても、こちらも果ては見えなかった。
「あの、ここは……?」
『今は、私の家です』
「今は?」
『ええ、万が一の際には、国民全員を穢れから守る為の避難所となる予定でした……ですが、貴方方のお陰でその万が一もなくなりましたからね』
元、避難所か……確かにこれだけの広さがあれば問題はなさそうだ。なんなら、街の一つや二つ簡単に作れてしまいそう。こちらには便利な術がたくさんあるんだもんな。
『どうぞ、あちらにお座りになられて下さい。私は此方に止まらさせて頂きますので』
フェニックスが嘴で示した先には、いつの間にやらテーブルとイスが二脚。その側には一本の木のように大きな止まり木が現れていた。どれも晴れ渡る空のように青かった。全てが白の世界だと、よりその鮮やかさが際立って見えた。
フェニックスが止まり木に落ち着いたのを見届けてから、バアルさんと一緒に席に着く。すると今度は、俺たちの前にそれぞれティーカップが現れた。
やっぱりカップも青かった。それどころか湯気が立ち上っている紅茶もキレイな青。どうぞ遠慮せずに、と促されて早速頂いた風味は爽やかで、不思議で、ほんのり甘かった。口当たりの良い、飲みやすいお茶だった。
『どうやら、すでに息子とはお会い出来ていたようですね』
「……息子さん、ですか?」
幼いケルベロスやペガサス達には会えたけど……フェニックスの子供なんて。
「イド君のことでございますよ」
「イド君……ああ、最初に俺達のガイド役になってくれようとしていた」
『ええ「イド」は此方の皆様が考えてくれたニックネームで、本名は「☆#%&」ですが』
なんて言ったんだろう? 全然聞き取れなかった。名前の部分だけ、全く聞いたことのない未知の言語のように聞こえたから。
「彼らにとって、名前は特別な意味を持ちます故……私達が咲かせることが出来る魔力の花のように、特別な想いを寄せている間柄でしか聞くことが叶わないのです」
「ああ、それで……」
『アオイならば、すぐに聞き取れるようになると思いますよ? 貴方の魔力は大変温かくて心地がいい。ヨミやサタン、バアルと同じで私達が好む魔力です。それに、貴方はこの世界にとっての救世主の一人なのですから』
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