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★【新婚旅行編】一日目:話が違うんじゃない?

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 紅茶を楽しんだ後、バアルさんにベッドへと横抱きで運んでもらった俺は、身に纏っていた服を全て脱がされてしまった。

 壊れ物にでも触るように丁寧に、けれども手早く。無論、パンツも。まぁ、さっきまで穿いていたのは、特別なヤツじゃなくていつものボクサーだったしな。

 じゃあ、お返しにと、俺が彼の服へと手を伸ばそうとしたら抱き締められて、キスしてもらえて。頭ん中にお花が咲いてしまっている内に、お膝の上へと招かれちゃっていて、今に至るって訳で。

 ……触ってくれるのは嬉しいんだけれど……いつまで焦らすつもりなんだろう。

 ちゃっかりご自分だけ服を着たままなあたり、まだ一緒に気持ちよくなってくれるつもりはなさそう。当分は俺ばっかりになっちゃいそうだ。

 ……話が違うんじゃない? 俺がバアルさんをちゃんと感じられるまで、抱いてくれるんじゃ?

「ふっ……は、んぅ……バ、アル……」

「……いかがなさいましたか?」

 俺の呼びかけに応えてはくれたけれども、手は止まってはいない。

 温かい手のひらは、シックスパックに隆起している彼の腹筋とは違ってぺったんこな俺の腹を、全然くっきり浮かんでいない筋肉のラインを、なぞるように撫でている。ぶんぶん、ぱたぱたと、ご機嫌そうな音を触覚と羽で鳴らしながら。

「……その、さ……今から、いっぱい……してくれるんでしょ? 俺が、分かるまで……」

「ええ」

「じゃ、じゃあ、さ……別に、飛ばしちゃってもいいんじゃない?」

「はい?」

 言葉を濁してしまったせいだ。賑やかだった音が止んでしまった。手を止めて、バアルさんが俺の顔を覗き込んでくる。優しい眼差しが不思議そうに細められていた。

「えっと……」

 なんと伝えたら。エッチの前にすること、とか? いや、もう始まってるだろ。こういう触れ合いも含めて、だろ。

「この、さ……ウォーミングアップっていうか……」

「ウォ……? ああ、前戯のことでございますね」

「ぜっ……う……は、はぃ……」

 ただでさえ熱を持っていた頬がますます熱くなっていく。俺が言わんとしていたことが伝わったのは、何よりなんだが。

 バアルさんは納得したように口元を綻ばせた。けれども、すぐに凛々しい眉が下がっていってしまう。彫りの深い顔が曇っていってしまう。

 もしかしなくても、水を差しちゃった? 折角、いい雰囲気だったのに、俺、余計なことを言ってしまったんじゃ……

「申し訳ございません……愛しい妻の頼みとはいえ、飛ばす訳には……御身は、誠に繊細でいらっしゃいます。御身体は勿論のことでございますが、心の準備もしっかりと整えておかねば……」

「ふぇ……」

 滲み出かけていた不安は、あっさり杞憂へと。更には、大きく高鳴った鼓動をますます駆け足にさせられてしまうとは。

「それに、仰って頂けていたでしょう?」

「え?」

「キスもいっぱいして欲しい……と」

「あ……」

 そのお強請りは、昼間のビーチにて。ちゃんと覚えていてくれたんだ。俺は、すっかりすっぽ抜けてしまっていたってのに。

 ごめんねを言う間もなかった。太ももに触れてくれていたハズの手が、俺の顎を掬い上げる。ご自身からも高い鼻先を擦り寄せて、距離を詰めてくれる。

 唇に触れた吐息が熱い。切なげに伏せられた睫毛は、まるで銀の糸のように美しくて。少し影になった、鮮やかな緑の瞳に吸い込まれてしまいそうで。

「そもそも先程は、貴方様の美しくも愛らしい御姿に魅了され、年甲斐もなく性急にことを進めてしまいました……ですから、今暫くこの老骨めに御慈悲を……貴方様を、ゆっくり愛でさせては頂けないでしょうか?」

 即座に心を鷲掴みにされてしまった。歌うように紡がれた熱烈なお願いに、熱心に見つめてくる真っ直ぐな眼差しに。

「っ……はひ……どうぞ、好きなだけ……」

「ありがとうございます……」

 幸せそうに微笑む唇が、ゆっくりと重ねられていく。柔らかな温もりと触れ合えた瞬間、頭の芯が甘く痺れていくような錯覚を覚えた。
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