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★【新婚旅行編】一日目:……お手伝いして、差し上げましょうか?

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 後悔、先に立たずとは言うけれども。今の俺には、悔いる余裕すら。ただただ彼の膝の上から落ちてしまわないよう、幅の広い肩を掴んでいるだけで精一杯……

 いや、ウソだ。縋りつくように掴んでいながらも、ちゃっかり腰を振ってしまっている。硬くそそり立つ彼の先端が、大きなカリの段差が、俺のいいところに当たるように。

「は、ぁ……んっ、ん……んぁっ……あ、あっ……」

 夢中で心地よさを求めてしまっている俺を、宝石よりも美しい瞳が見つめている。銀糸のようにキレイな睫毛を伏せることなく、ただその緑の煌めきに映し続けている。

 整えられたお髭がカッコいい口元が絶えず綻んでいる。でも、気持ちよさによるものではない。喜んでくれているというか、楽しんでいるというか。

「……浅いところが、お好きですか?」

 ずっと前立腺に擦りつけるようにヘコヘコ揺らしてしまっていたからだろう。うっとりとした声で尋ねられてしまった。

 けれども止まらない。止められない。俺の意思でしているハズなのに。俺の身体なんだから、止めようと思えば止まってくれるハズなのに。

「あっ、あっ、好き……気持ち……でも、奥、寂し……欲しいよ……」

 口の方もだ。言わなくてもいいことまで伝えてしまっていた。もう、バカになってしまっているのかもしれない。気持ちが良すぎて。

 ここまでいってるんだから、いくところまでいってしまえばいいのに。肝心なところでヘタれな俺が出てしまっていた。勇気を出せなかった。浮かせている腰を落として、彼のものを根元まで咥え込むことが出来なかった。

 ずっと小刻みに腰を振っている俺を見かねたんだろう。バアルさんが助け舟を出してくれた。

「……お手伝いして、差し上げましょうか?」

 ただ、了承する間もなく実行されてしまったのだけれど。

「ひゃうっ……あっ、うぁ、あ、あ……っ」

 尋ねられてすぐだった。腰を掴まれて、一気に下へと引き寄せられた。ただでさえ締め付けてしまっていた内壁をこじ開けるように、彼の太い陰茎が奥へと押し進んでいく。

 頭の中で鈍い音が聞こえたような気がして、目の前で星が瞬いたような気がして。

 また俺は、情けのない声を上げながら、全身を震わせていた。分厚く盛り上がった胸板に、力なく寄りかかってしまっていた。

「くっ……ふ……お可愛らしい、ですね……挿れただけで、達してしまわれて……」

「う、ぁ……ごめん、なさ……はっ、はぁ……ありが、と……手伝って、くれて……」

「……誠に私の妻は可愛いですね……意地悪をしてしまったというのに……」

 ……手伝ってくれたのに? バアルのお陰で全部入ってるのに? 気持ちよくなれたのに?

 噛み締めるような呟きの意味が、良く分からなかった。ふわふわと熱に浮かされている頭は、タガが外れてしまったみたい。気持ちいい最中なのに、もっと、もっと、と欲が込み上げてしまっている。

 気持ちよく、なりたい……バアルと一緒に……いっぱい、気持ちよく……

 突き動かされるように俺は腰を揺らしていた。

 さっきまでの躊躇はなんだったのか。自分から軽く腰を浮かせては、体重を乗せながら落としてを繰り返す。彼が突いてくれる時よりも、刺激としては物足りない。でも、興奮は劣らなかった。

「く……あっ、アオイ……んっ、ぅ……」

 だって、彼が感じ始めてくれたんだから。首まで赤くして、額に汗を滲ませて。細めた瞳を濡らしながら、艶のある声を漏らしているんだから。

「バアルっ、バアル……ね、気持ちいい? 俺で、気持ちよく……なって、くれてる……?」

 嬉しくて、聞きたくなってしまった。彼の口から聞きたかった。でも、その質問が、何やら一線を超えてしまったようで。

 また大きな手に、腰をしっかりと掴まれた。

「ひぁっ……あっ、あ、バアル……まっ、んぁっ、あっ……」

 バアルさんが、ひたすらに俺を突き上げている。俺達を支えているベッドの揺れが、その激しさを物語っていた。

 硬い先端が最奥ばかりを抉るように突いてくる。俺がイっても止まることはない。気付いてくれているだろうに。ぶち撒けたもので、彼の隆起した腹筋を汚してしまっているのだから。イく度に、彼のものを締め付けてしまっているのだから。

 まだ一分と経ってはいないだろう。けれども俺は、すでに高みから下りられなくなってしまっていた。一緒だ。変わらない。訳が分からないまま、ただひたすらにイき続けて。

 せめて、彼に抱きつきたかった。でも、手足に力が入らない。引き締まった首に腕を絡めようとしても伸ばせない。括れた腰に足を回そうとしても持ち上げられない。

 ……顔も見れない……キスも出来ない。

「ひぅ、あっ、あぁっ……んむっ、ん、ふ……」

 言葉になっていない声しか上げられなくなっていたのに、思いが伝わってくれたんだろうか。バアルさんが口づけてくれた。優しく、何度も。

 甘やかすようなキスのお陰だろう。気持ちよくてぐちゃぐちゃだった気分が少し落ち着いてきた。今なら、彼の顔が。

 見えたのは、切なく歪ませながらも微笑んでいるバアルさん。細められた瞳に宿っている光は、身を焦がすように熱いのに、心が安らぐほどに温かくて。

「んんっ……ん、ぅ……は、ふぁ……」

 目の前が白く染まっていくような幸福の最中、俺は一際大きく身体を震わせていた。

 くぐもった喘ぎが聞こえてから、強く疼いた俺の中に熱い何かが広がっていく。激しく揺れていた腰が、俺を突き上げていた彼のものが、脈打つように震えている。

「はぁ、はっ……アオイ……」

「……よか、た……バアルも、いっしょに……」

 伝えることが出来て満足したからだろう。身体の力がカクンと抜けて、目の前が真っ黒に塗りつぶされていく。弾力のある彼の温もりを感じながら、強い気怠さに俺は身を委ねた。
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