間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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★【新婚旅行編】一日目:優越感とは違う、愛されているっていう幸福感とも

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 好きにしてとは言ったものの、そこは紳士なバアルさん。そのつど俺の顔色を窺ってくれながら、そっと唇を寄せている。

 遠慮がちなそれは、スマートないつもとは全然違ってキレイなリップ音もしない。かといって、甘やかすように食んでくれる訳でも。

「ん……あ、ふ……」

 でも、俺はしっかり気持ちよくなれていた。むしろ、指で触れてもらっている時よりも感じちゃってるかもしれない。

 なんせ、視覚効果がスゴいのだ。体勢的に上目遣いになっちゃってるとことか。俺が擽ったくならないように、ふわふわのお髭が触れてしまわないように、軽く口を突き出しているとことか。

 彼を見ているだけで、胸の辺りが疼いてしまう。もっと頭を撫で回したくなってしまう。

 何なんだろう? この気持ちは……俺だけしか知らないバアルさんっていう優越感とは違うし。愛されてるなっていう幸福感とも、少し違うような……

「……いかがでしょうか?」

 ついつい、じっと見つめてしまっていたからだろう。尋ねてきた声色も、眼差しも不安そうだった。

「……大丈夫……気持ちいいよ……」

 頭を撫でながらそう返せば、納得してくれたらしかった。柔らかく微笑んで、再び唇を慎重に寄せてきた。

 この不思議な感覚は、一旦置いておこう。目の前のバアルさんの方が大切だからな。

 指通りのいい髪を梳きながら、何度もキスを送ってもらいながら、胸元から広がっていく淡い感覚に浸る。ちょっぴりもどかしさはあれど、俺はこのひと時を楽しんでいた。

 新たな段階へと進んだのは、リップ音が鳴り始めてから。乳輪の近くばかりを触れていた唇が、積極的に先端に触れ始めてからだった。

「んっ……あ、あっ……そこ……もっと……」

「……畏まりました」

 すっかり俺は自分から求めるようになっていた。掠めただけで、全身で驚きを示してしまっていたさっきとは打って変わって。

 もう、キスされるのには慣れたと思われたんだろう。薄く開いた唇からちろりと出てきた赤い舌。熱く濡れた舌先が、おずおずと乳首を舐めてきた。

「は、ぁ……んっ……」

「……此方は?」

「……いい、よ……気持ちいい……」

 唇でしてもらえていた時は微かだった。でも、こっちは強い。ちょっと触れてもらえただけなのに、痺れているみたいにピリピリして。

「……その……さっきより、好き……かも……」

 少し強引な彼へと、スイッチが切り替わったみたいだった。

 伝えてすぐに吸い付かれたのだ。食べるみたいに含まれて、飴でも味わっているみたいに舌で満遍なく舐められていく。

「あっ、ふぁ……そ、それ、駄目……っ」

「ん……は、何故? 悦んで……んっ、頂けて、いるようですが?」

「や、喋っちゃ……は、うぁ……あっ、あ……っ」

 触れた吐息にすら感じてしまったのだ。口では抵抗しながらも、求めるように彼の頭を抱き寄せてしまっているのだ。バレバレにも程がある。

 だから止まってくれる訳がなかった。それどころか、俺のホントの望みを叶えてくれようと、ますます強く吸い付いてきた。

 長くて大きな彼の舌は温かくて、乳首を包み込むようにねっとりと纏わりついてきて。それだけでも十分に、頭がくらくらするくらいに気持ちがいいのに、何度も吸われてしまうと。

「んん……んっ、あ、も、きちゃ……バアル……」

 ボヤけた視界の中で、俺を見上げていた瞳が微笑むのが見えた。それはそれは嬉しそうに。

 陽だまりのように温かい笑みとは違う、色気が漂う妖しい微笑み。珍しく悪魔じみたそれに心を鷲掴みにされてしまった。一気にあふれてしまっていた。
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