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【新婚旅行編】一日目:デザートみたいな料理の正体
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「此方は、サーモンとほうれん草のテリーヌ」
「ああっ、これがテリーヌ」
「ええ。そして此方は、鶏とキャベツのコンソメアスピックでございます」
「アス、ピック?」
テリーヌという言葉には聞き覚えがあった。多分、テレビとかで。ただ、アスピックに関しては、聞いたことも。一体、このゼリーな一切れの、どの部分がアスピックなんだろうか?
初めて聞いた単語を頭の中で繰り返していると、バアルさんがたおやかな手を差し出してきた。俺よりもひと回り大きな手の上に手品みたく突然、緑色の結晶が現れた。投影石だ。
白い彼の手が淡い緑の輝きに染まっていく。彼の魔力が込められたことで、投影石が持つ機能の内の一つが発動したんだろう。石から一筋の光が放たれていく。
俺達の目線の方へ、宙へと放たれた光の中に画像が浮かんだ。まるでプロジェクターのように。そこには、パウンドケーキを焼く時の物と似た型が、大きく表示されていた。
バアルさんの手のひらが、今度は画像を指し示した。
「テリーヌとは、此方のテリーヌ型という長い型に詰めて作る料理のことでございます。アスピックはゼリー……つまりは、コンソメゼリーでございますね」
「ふへぇ……」
やっぱり、お洒落だ。型に入れて形を良くしたり、コンソメをゼリーにするなんて。
今回のバアルさんの豆知識講座は、食事の前だからか短めだった。さらりと終えて、投影石を再び煙のように消してから、再びフォークを手に取った。
「では、どちらからお召し上がりになられますか?」
「えっと……じゃあ、アスピックで」
指名理由は単に気になったから。だって、コンソメなんて、スープかポテトチップスでしか食べたことないもんな。多分、味は想像してるのと同じだろうけれど、ゼリーって。
「畏まりました」
軽く会釈をしてから銀のフォークがアスピックに入る。食べやすいよう一口サイズにしてくれてから、俺の口元へと差し出された。
「……んっ、おいひぃでふ!」
口に入れた瞬間、旨味が広がった。ぷるぷるな食感が舌の上でとろりと溶けたのだ。これはスープでは味わえない。
後から続くキャベツのシャキシャキした歯ごたえと、柔らかな鶏肉も絶妙だ。食感が楽しい。あっさりとしているけれど、これだけでも十分に満足感のある、味わい深い料理だ。スゴいなアスピック。
「それは何より……では、お次はテリーヌをどうぞ」
瞳を細めた彼の手により、今度はテリーヌが。二つの層が楽しめるように縦長に切られた一口が、フォークに乗せられ俺の口へと運ばれていく。
「……これも美味しい」
ムースだと思っていた俺の感覚は、さして遠くはなかったよう。口当たりが滑らかだ。サーモンの旨味がダイレクトに伝わってくる。けれども、しつこくはない。ほうれん草のお陰だろう。
初めての食感に、初めての美味しさ。感動した俺が、小皿をキレイに空にしてしまうのに、さほど時間はかからなかった。
最後の一口を手づから食べさせてくれたバアルさん。俺が一口食む度に微笑んでいた眼差しが、お肉が盛られた皿の方へと向く。
「……お肉は、どちらからお召し上がりになられますか?」
「ローストビーフが食べたいですっ」
白い髭を蓄えた口元に浮かぶ、楽しそうな微笑みが深くなる。すかさず「畏まりました」とバラのように盛られたお肉を一切れ小皿へと取り分け、フォークで差し出してくれた。
「ん……うまっ! すっごく柔らかいですよっ、このローストビーフっ」
一枚丸ごとは大きいかと思いきや、あっさりと噛み切れた。しっかりと下味がつけてあって、なおかつお肉の甘みが強いから、ソース無しでも美味しく食べられるな。
「それは、それは……では、お次は鴨に」
「ちょ、そろそろ交代しましょうよ! 俺ばっかり食べちゃってるじゃないですかっ」
「ああっ、これがテリーヌ」
「ええ。そして此方は、鶏とキャベツのコンソメアスピックでございます」
「アス、ピック?」
テリーヌという言葉には聞き覚えがあった。多分、テレビとかで。ただ、アスピックに関しては、聞いたことも。一体、このゼリーな一切れの、どの部分がアスピックなんだろうか?
初めて聞いた単語を頭の中で繰り返していると、バアルさんがたおやかな手を差し出してきた。俺よりもひと回り大きな手の上に手品みたく突然、緑色の結晶が現れた。投影石だ。
白い彼の手が淡い緑の輝きに染まっていく。彼の魔力が込められたことで、投影石が持つ機能の内の一つが発動したんだろう。石から一筋の光が放たれていく。
俺達の目線の方へ、宙へと放たれた光の中に画像が浮かんだ。まるでプロジェクターのように。そこには、パウンドケーキを焼く時の物と似た型が、大きく表示されていた。
バアルさんの手のひらが、今度は画像を指し示した。
「テリーヌとは、此方のテリーヌ型という長い型に詰めて作る料理のことでございます。アスピックはゼリー……つまりは、コンソメゼリーでございますね」
「ふへぇ……」
やっぱり、お洒落だ。型に入れて形を良くしたり、コンソメをゼリーにするなんて。
今回のバアルさんの豆知識講座は、食事の前だからか短めだった。さらりと終えて、投影石を再び煙のように消してから、再びフォークを手に取った。
「では、どちらからお召し上がりになられますか?」
「えっと……じゃあ、アスピックで」
指名理由は単に気になったから。だって、コンソメなんて、スープかポテトチップスでしか食べたことないもんな。多分、味は想像してるのと同じだろうけれど、ゼリーって。
「畏まりました」
軽く会釈をしてから銀のフォークがアスピックに入る。食べやすいよう一口サイズにしてくれてから、俺の口元へと差し出された。
「……んっ、おいひぃでふ!」
口に入れた瞬間、旨味が広がった。ぷるぷるな食感が舌の上でとろりと溶けたのだ。これはスープでは味わえない。
後から続くキャベツのシャキシャキした歯ごたえと、柔らかな鶏肉も絶妙だ。食感が楽しい。あっさりとしているけれど、これだけでも十分に満足感のある、味わい深い料理だ。スゴいなアスピック。
「それは何より……では、お次はテリーヌをどうぞ」
瞳を細めた彼の手により、今度はテリーヌが。二つの層が楽しめるように縦長に切られた一口が、フォークに乗せられ俺の口へと運ばれていく。
「……これも美味しい」
ムースだと思っていた俺の感覚は、さして遠くはなかったよう。口当たりが滑らかだ。サーモンの旨味がダイレクトに伝わってくる。けれども、しつこくはない。ほうれん草のお陰だろう。
初めての食感に、初めての美味しさ。感動した俺が、小皿をキレイに空にしてしまうのに、さほど時間はかからなかった。
最後の一口を手づから食べさせてくれたバアルさん。俺が一口食む度に微笑んでいた眼差しが、お肉が盛られた皿の方へと向く。
「……お肉は、どちらからお召し上がりになられますか?」
「ローストビーフが食べたいですっ」
白い髭を蓄えた口元に浮かぶ、楽しそうな微笑みが深くなる。すかさず「畏まりました」とバラのように盛られたお肉を一切れ小皿へと取り分け、フォークで差し出してくれた。
「ん……うまっ! すっごく柔らかいですよっ、このローストビーフっ」
一枚丸ごとは大きいかと思いきや、あっさりと噛み切れた。しっかりと下味がつけてあって、なおかつお肉の甘みが強いから、ソース無しでも美味しく食べられるな。
「それは、それは……では、お次は鴨に」
「ちょ、そろそろ交代しましょうよ! 俺ばっかり食べちゃってるじゃないですかっ」
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