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【番外編:立場・種族逆転】アオイ! 貴殿にバアル殿のお世話係を命ずる!
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目に止まったのは、添付されている写真。男の人だ。白い髭が似合っているカッコいい人。
執事さん、何だろうか? 形は違うけれど、レタリーさんのような黒いスーツを着ている。この人が、もしかして。
「名前はバアル殿、43歳。現世では、かなり有名な大企業の社長秘書をしていたらしい」
「……43」
分かってはいたけれど……短命だな、人間って。いや、今回は寿命を全う出来なかったんだから、尚更なんだけどさ。
「死神の手違……いや、私達、地獄の民の不手際により、彼の命を刈ってしまった。そればかりか先ほども伝えた通り、今現在、彼は此方へと落ちてきてしまっている」
「恐らくですが、死神の鎌の不具合かと」
「天の神と死神協会も、そうとしか考えられぬ、と結論を出したようだ。私も同じ見解だ」
付け加えてくれたレタリーさんに軽く頷いて、ヨミ様が再び俺を見つめた。眉間には、深いシワが刻まれている。
「……彼が、このまま寿命を全う出来ていれば、確実に天国へと迎えられていたであろう」
「スゴく良い人……だったんですね」
「うむ……此度の件は、我が国における最大の不祥事である。早急に彼の身の安全を確保し、全身全霊でお詫びせねばならぬ」
「っ……俺が、お力になれることは?」
重く沈んでいた空気が変わった。
ヨミ様が勢いよく椅子から立ち上がる。積み重なっていた書類の一部がはらりと舞う。高い腰まで伸ばしている艷やかな黒髪をふわりと靡かせながら、たおやかな手のひらを俺へと向けた。
「その言葉を待っていたぞ、アオイ! 貴殿にバアル殿のお世話係を命ずる! 今すぐに彼の元へと向かい、城へと安全に連れてきて欲しい!」
「お、お世話係、ですか!? 俺が!?」
以上。一連のやり取りがあったのが、ほんの数分前。結果、俺は件のバアル様が落ちてきているであろう場所へ『裁きの大地』へ向かっているという訳で。
ヨミ様からの頼みだ。断れる訳がない。むしろ嬉しかった。あの人は、いつも大変なことを一人で背負い込んでしまうから。それに。
威厳たっぷりな微笑みと共に贈られた、激励の言葉が頭を過る。
『貴殿ならば、彼とも自然に接することが出来るであろう? 人間という種族に対して否定的な感情だけでなく、興味を持っている兄上ならば』
……ヨミ様の言い分はもっともだ。
この世界の役割上、落ちてくる人間は、天の神様すら赦すことが出来なかった悪い人間ばかり。だから、皆、誤解してしまっている。人間は、弱くて、心が醜い者ばかりなんだって。
でも、俺は教えてもらっていたから。サタン様とヨミ様から、良い人間も居るのだと。お二人の話を聞いて、憧れていたから。
「国の図書館にも、少しだけど置かれているんだけどなぁ……現世の歴史に名を残している偉人さん達のお話……俺以外に借りている人、ほとんど見たことがないけどさ」
ボヤいている内に、目的地が近づいてきたようだ。周囲の空に、晴れ渡る青に、少しずつ黒が滲んできている。魔力の流れも変わってきている。羽と触角がピリピリして気持ちが悪い。この地特有の嫌な空気に釣られてか、不安が過った。
「……大丈夫かな、バアル様……急がないと……」
もし、俺が着くよりも先に落ちてきてしまっていたら……きっと怖い思いをさせてしまっていることだろう。俺は速度を早める為に、さらに強く羽をはためかせた。
執事さん、何だろうか? 形は違うけれど、レタリーさんのような黒いスーツを着ている。この人が、もしかして。
「名前はバアル殿、43歳。現世では、かなり有名な大企業の社長秘書をしていたらしい」
「……43」
分かってはいたけれど……短命だな、人間って。いや、今回は寿命を全う出来なかったんだから、尚更なんだけどさ。
「死神の手違……いや、私達、地獄の民の不手際により、彼の命を刈ってしまった。そればかりか先ほども伝えた通り、今現在、彼は此方へと落ちてきてしまっている」
「恐らくですが、死神の鎌の不具合かと」
「天の神と死神協会も、そうとしか考えられぬ、と結論を出したようだ。私も同じ見解だ」
付け加えてくれたレタリーさんに軽く頷いて、ヨミ様が再び俺を見つめた。眉間には、深いシワが刻まれている。
「……彼が、このまま寿命を全う出来ていれば、確実に天国へと迎えられていたであろう」
「スゴく良い人……だったんですね」
「うむ……此度の件は、我が国における最大の不祥事である。早急に彼の身の安全を確保し、全身全霊でお詫びせねばならぬ」
「っ……俺が、お力になれることは?」
重く沈んでいた空気が変わった。
ヨミ様が勢いよく椅子から立ち上がる。積み重なっていた書類の一部がはらりと舞う。高い腰まで伸ばしている艷やかな黒髪をふわりと靡かせながら、たおやかな手のひらを俺へと向けた。
「その言葉を待っていたぞ、アオイ! 貴殿にバアル殿のお世話係を命ずる! 今すぐに彼の元へと向かい、城へと安全に連れてきて欲しい!」
「お、お世話係、ですか!? 俺が!?」
以上。一連のやり取りがあったのが、ほんの数分前。結果、俺は件のバアル様が落ちてきているであろう場所へ『裁きの大地』へ向かっているという訳で。
ヨミ様からの頼みだ。断れる訳がない。むしろ嬉しかった。あの人は、いつも大変なことを一人で背負い込んでしまうから。それに。
威厳たっぷりな微笑みと共に贈られた、激励の言葉が頭を過る。
『貴殿ならば、彼とも自然に接することが出来るであろう? 人間という種族に対して否定的な感情だけでなく、興味を持っている兄上ならば』
……ヨミ様の言い分はもっともだ。
この世界の役割上、落ちてくる人間は、天の神様すら赦すことが出来なかった悪い人間ばかり。だから、皆、誤解してしまっている。人間は、弱くて、心が醜い者ばかりなんだって。
でも、俺は教えてもらっていたから。サタン様とヨミ様から、良い人間も居るのだと。お二人の話を聞いて、憧れていたから。
「国の図書館にも、少しだけど置かれているんだけどなぁ……現世の歴史に名を残している偉人さん達のお話……俺以外に借りている人、ほとんど見たことがないけどさ」
ボヤいている内に、目的地が近づいてきたようだ。周囲の空に、晴れ渡る青に、少しずつ黒が滲んできている。魔力の流れも変わってきている。羽と触角がピリピリして気持ちが悪い。この地特有の嫌な空気に釣られてか、不安が過った。
「……大丈夫かな、バアル様……急がないと……」
もし、俺が着くよりも先に落ちてきてしまっていたら……きっと怖い思いをさせてしまっていることだろう。俺は速度を早める為に、さらに強く羽をはためかせた。
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