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【番外編:立場・種族逆転】キレイな笑みには裏がある
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※受けと攻めの立場と種族が本編と逆転しています。エイプリルフールネタなので、色々とご都合主義なところがあります。ご注意下さい。
以下、見なくても大丈夫な設定。その後、本編。
・アオイ(受け)
人外。地獄の民。見た目は10代後半から20代前半の青年。額に金属のように細い二本の触覚、背中に半透明の羽を有しているが、それを除けば外見だけは人間と変わらない。
魔力量は平凡なのに、何故か生まれつき時を操るという唯一無二の術が使える。とある使命の為に魔力量とは釣り合っていないその力を何度も行使した結果、見た目の成長が他の民よりも遅くなってしまった。なので、一般的な地獄の民よりも実年齢との差が大きい。
幼い頃に先代王サタンに引き取られ、実の息子のように育てられた。現王ヨミとは兄弟のように仲が良い。
・バアル(攻め)
人間。43歳。社長秘書。
先代の社長には若い頃に拾ってもらった恩があるが、息子である現社長の傍若無人ぶりに辟易していた。
両親を早くに亡くしており、会社というよりは先代社長に人生を捧げていた為、現世に未練がない。
容姿端麗で仕事もできて運動神経抜群。人当たりもいいので、それなりに友人はいたし、恋人もいた。が、向こうの熱意に負けて付き合っていただけなので、誰とも長くは続かない。毎回、仕事のほうが大事なんだと結論づけられ、相手の方から離れていった。
人間が落ちてくるらしい。
とはいっても、そのこと自体は、ここでは珍しいことではない。俺達の世界は、罪に穢れた人間達にとって最後の受け皿なのだから。
けれども、今回は特例中の特例だ。だって、落ちてきたのは。
「穢れていない人が落ちてくるんですかっ!? それも、まだ寿命を全うしていない人が!?」
つい上げてしまっていた大きな声が、整然とした執務室に響き渡る。どうしようもないのだけれど、反射的に俺は開きっぱなしの口を手で覆っていた。前のめりになっていた姿勢を正したところで、二つの視線からバッチリ見られてしまっていたことに気づく。
俺を呼び出した張本人であり、執務机の上で手を組んでいる我らが主。我が国を治めているヨミ様。そして、彼の直ぐ側で背筋を伸ばして控えている秘書、レタリーさん。
お二人の眼差しは、何やら微笑ましいものでも見ているかのように温かい。よっぽど顔に出してしまっていたんだろうか。
「いやいや、駄目でしょう、二人して……俺が言うのも何ですけれど、怒って下さいよ、そこは……不謹慎極まりないでしょう?」
その人に会ってみたいなって、話してみたいなって、思ってしまっているんだからさ。向こうは理不尽な目に巻き込まれている真っ只中だってのに。
相変わらず息が合っているお二人は、合わせてもいないのに同時に目を瞬かせてから、視線を交わした。
「ふむ、自覚があるのだから良いであろう? なあ?」
「ええ。それに、やはりアオイ様が適任であると再認識致しました」
「……適任? どういう意味ですか?」
首を傾げた俺を見つめる、ヨミ様の夕日よりも赤い瞳。長い睫毛に縁取られた瞳が細められ、花びらのように美しい唇が緩やかな笑みを描く。
老若男女、誰もが胸を高鳴らせてしまうであろうキレイな微笑み。もし、国民の前で披露しようもんなら、大歓声が沸き起こるどころか、喜びのあまり卒倒する人まで現れそう。
けれども、俺にとっては不安でしかない。だって、あれは、何かを企んでいる時のヤツだ。今までも、この微笑みに絆されて、何度彼の城内脱走の片棒をかついだことか。
いや、まぁ、いつも楽しいところに誘ってくれるんだけれども。この前の、新しく出来たケーキ屋さんのフォンダンショコラも美味しかったけどさ。
思わず身構えていた俺を見て、ヨミ様はますます笑みを深めた。しなやかな指先が、いくつもの書類のタワーに囲まれている机を軽く叩く。途端に、一枚の紙がタワーからするりと抜けて、俺の前へと飛んできた。
以下、見なくても大丈夫な設定。その後、本編。
・アオイ(受け)
人外。地獄の民。見た目は10代後半から20代前半の青年。額に金属のように細い二本の触覚、背中に半透明の羽を有しているが、それを除けば外見だけは人間と変わらない。
魔力量は平凡なのに、何故か生まれつき時を操るという唯一無二の術が使える。とある使命の為に魔力量とは釣り合っていないその力を何度も行使した結果、見た目の成長が他の民よりも遅くなってしまった。なので、一般的な地獄の民よりも実年齢との差が大きい。
幼い頃に先代王サタンに引き取られ、実の息子のように育てられた。現王ヨミとは兄弟のように仲が良い。
・バアル(攻め)
人間。43歳。社長秘書。
先代の社長には若い頃に拾ってもらった恩があるが、息子である現社長の傍若無人ぶりに辟易していた。
両親を早くに亡くしており、会社というよりは先代社長に人生を捧げていた為、現世に未練がない。
容姿端麗で仕事もできて運動神経抜群。人当たりもいいので、それなりに友人はいたし、恋人もいた。が、向こうの熱意に負けて付き合っていただけなので、誰とも長くは続かない。毎回、仕事のほうが大事なんだと結論づけられ、相手の方から離れていった。
人間が落ちてくるらしい。
とはいっても、そのこと自体は、ここでは珍しいことではない。俺達の世界は、罪に穢れた人間達にとって最後の受け皿なのだから。
けれども、今回は特例中の特例だ。だって、落ちてきたのは。
「穢れていない人が落ちてくるんですかっ!? それも、まだ寿命を全うしていない人が!?」
つい上げてしまっていた大きな声が、整然とした執務室に響き渡る。どうしようもないのだけれど、反射的に俺は開きっぱなしの口を手で覆っていた。前のめりになっていた姿勢を正したところで、二つの視線からバッチリ見られてしまっていたことに気づく。
俺を呼び出した張本人であり、執務机の上で手を組んでいる我らが主。我が国を治めているヨミ様。そして、彼の直ぐ側で背筋を伸ばして控えている秘書、レタリーさん。
お二人の眼差しは、何やら微笑ましいものでも見ているかのように温かい。よっぽど顔に出してしまっていたんだろうか。
「いやいや、駄目でしょう、二人して……俺が言うのも何ですけれど、怒って下さいよ、そこは……不謹慎極まりないでしょう?」
その人に会ってみたいなって、話してみたいなって、思ってしまっているんだからさ。向こうは理不尽な目に巻き込まれている真っ只中だってのに。
相変わらず息が合っているお二人は、合わせてもいないのに同時に目を瞬かせてから、視線を交わした。
「ふむ、自覚があるのだから良いであろう? なあ?」
「ええ。それに、やはりアオイ様が適任であると再認識致しました」
「……適任? どういう意味ですか?」
首を傾げた俺を見つめる、ヨミ様の夕日よりも赤い瞳。長い睫毛に縁取られた瞳が細められ、花びらのように美しい唇が緩やかな笑みを描く。
老若男女、誰もが胸を高鳴らせてしまうであろうキレイな微笑み。もし、国民の前で披露しようもんなら、大歓声が沸き起こるどころか、喜びのあまり卒倒する人まで現れそう。
けれども、俺にとっては不安でしかない。だって、あれは、何かを企んでいる時のヤツだ。今までも、この微笑みに絆されて、何度彼の城内脱走の片棒をかついだことか。
いや、まぁ、いつも楽しいところに誘ってくれるんだけれども。この前の、新しく出来たケーキ屋さんのフォンダンショコラも美味しかったけどさ。
思わず身構えていた俺を見て、ヨミ様はますます笑みを深めた。しなやかな指先が、いくつもの書類のタワーに囲まれている机を軽く叩く。途端に、一枚の紙がタワーからするりと抜けて、俺の前へと飛んできた。
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