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【新婚旅行編】一日目:オレンジの中で漂う
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ぼんやりとしている意識の最中、眩しさを感じた。
穏やかな眠りを妨げてくる明かりに煩わしさを感じたものの、抗うことなんて出来やしない。気がつけば、渋々重たい瞼を開けていた。
「んぅ……あれ……?」
一体、どのくらいの間、眠りこけてしまっていたんだろうか。周りの景色は、すっかりオレンジ色に染まってしまっている。
穏やかな波の音は変わらない。煌めく海面の美しさも。けれども、真っ青な海に夕焼け色が滲む様は、何だか少しだけ寂しく見えた。
日が落ちかけているから、温度も下がってきたんだろう。頬を撫でていく海風に、背筋がぶるりと震えてしまう。夕焼けのビーチも趣があるけれども、そろそろホテルに戻った方がいいかもしれない。
そう言えば、バアルさんは。海の方へと向けていた視線を戻す。
「……っ」
思わず変な声を上げてしまうところだった。飛び上がった心臓が駆け足になって、全身にその足音を響かせている。寝ぼけ眼もパッチリだ。
ホントに心臓に悪いな……カッコよ過ぎて。
目の前にあったのは、無防備な寝顔。広い背中に腕を回して、彼の胸元に顔を押しつけていたハズが、いつの間に肩口にまで擦り寄ってしまっていたのだろうか。あともう少し顔を上げれば、鼻筋の通った彼の高い鼻と鼻先がくっついてしまいそう。
まだバアルさんは、夢の中にいるようだ。薄く開いた桜色の唇から、規則正しい寝息が漏れている。伏せられた長い睫毛が、頬にかかっている艷やかな髪が、オレンジ色の光の中で銀糸のように煌めいていて美しい。
彫りの深い顔と同様に、表情豊かな触角と羽も今はお休みモード。額から生えている金属のような光沢を帯びた細く長い二本は、果物を実らせた枝のように垂れ下がり、時折風にさらわれ揺れている。
背中にある半透明の羽は、俺達の毛布代わりになってくれていたのか大きく広がったまま、胸元から足先に至るまでを覆い隠してくれていた。
無遠慮にじっくりと眺めてしまっているにも関わらず、バアルさんは起きる気配がない。
「……バアルさん」
試しに、一声かけてみても全然、全く。触角すら動きやしない。穏やかな寝顔を浮かべたままだ。
「……ばーあーるぅー」
今度は、さっきよりも少し大きめの声で。更には指先で滑らかな頬を優しく、ちょん、ちょん、とつついてみた。
けれども、やっぱり、ピクリとも。珍しいな。いつもだったら、もっと小さな声でも、すぐに「いかがなさいましたか?」って微笑んでくれるんだけれども。
ここまで無防備だと、つい悪戯心が芽生えてしまう。
穏やかな眠りを妨げてくる明かりに煩わしさを感じたものの、抗うことなんて出来やしない。気がつけば、渋々重たい瞼を開けていた。
「んぅ……あれ……?」
一体、どのくらいの間、眠りこけてしまっていたんだろうか。周りの景色は、すっかりオレンジ色に染まってしまっている。
穏やかな波の音は変わらない。煌めく海面の美しさも。けれども、真っ青な海に夕焼け色が滲む様は、何だか少しだけ寂しく見えた。
日が落ちかけているから、温度も下がってきたんだろう。頬を撫でていく海風に、背筋がぶるりと震えてしまう。夕焼けのビーチも趣があるけれども、そろそろホテルに戻った方がいいかもしれない。
そう言えば、バアルさんは。海の方へと向けていた視線を戻す。
「……っ」
思わず変な声を上げてしまうところだった。飛び上がった心臓が駆け足になって、全身にその足音を響かせている。寝ぼけ眼もパッチリだ。
ホントに心臓に悪いな……カッコよ過ぎて。
目の前にあったのは、無防備な寝顔。広い背中に腕を回して、彼の胸元に顔を押しつけていたハズが、いつの間に肩口にまで擦り寄ってしまっていたのだろうか。あともう少し顔を上げれば、鼻筋の通った彼の高い鼻と鼻先がくっついてしまいそう。
まだバアルさんは、夢の中にいるようだ。薄く開いた桜色の唇から、規則正しい寝息が漏れている。伏せられた長い睫毛が、頬にかかっている艷やかな髪が、オレンジ色の光の中で銀糸のように煌めいていて美しい。
彫りの深い顔と同様に、表情豊かな触角と羽も今はお休みモード。額から生えている金属のような光沢を帯びた細く長い二本は、果物を実らせた枝のように垂れ下がり、時折風にさらわれ揺れている。
背中にある半透明の羽は、俺達の毛布代わりになってくれていたのか大きく広がったまま、胸元から足先に至るまでを覆い隠してくれていた。
無遠慮にじっくりと眺めてしまっているにも関わらず、バアルさんは起きる気配がない。
「……バアルさん」
試しに、一声かけてみても全然、全く。触角すら動きやしない。穏やかな寝顔を浮かべたままだ。
「……ばーあーるぅー」
今度は、さっきよりも少し大きめの声で。更には指先で滑らかな頬を優しく、ちょん、ちょん、とつついてみた。
けれども、やっぱり、ピクリとも。珍しいな。いつもだったら、もっと小さな声でも、すぐに「いかがなさいましたか?」って微笑んでくれるんだけれども。
ここまで無防備だと、つい悪戯心が芽生えてしまう。
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