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【新婚旅行編】一日目:はらはらと舞い落ちるのは
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俺にとっての海の底のイメージといえば、暗い、怖い、寒そう。けれども、辿り着いた海の底は、俺が思い浮かべていたものとは違っていた。
砂の上を這い回るように泳ぐ平ぺったい魚や、エビのような外見をした甲殻類。うなぎのようにヒョロヒョロ長い魚。彼らが身に宿す色は、先程の浅い場所に居た魚達とあまり変わらない。
確かにイメージ通りの、暗い茶色や灰色をした魚達もいる。けれども、目にも鮮やかな赤や、オレンジ、真っ青、透明、銀色と、カラフルな魚達も普通に泳いでいたのだ。
『深海では、赤も黒も変わりませんからね』
岩陰から顔を覗かせている赤い魚を一瞥してから、俺の手を引きエスコートしてくれる。彼が見せたいという景色は、別の場所にあるようだ。
浅い場所を散歩していた時の様に、ゆっくりと歩くような速さで泳ぎながら、俺の疑問に答えてくれる。
『色というものは、光が当たって初めて見ることが出来ます。ですから、太陽光の届かないところまで潜ってしまいますと……』
そっか。見えないんだ。
今、俺達はバアルさんの術のお陰で、光がなくても関係なく見ることが出来ているけれども、彼らは。
『ええ、左様でございます。全てが真っ黒になりますから、赤だろうと青だろうと関係ありません。等しく見えにくいのですから、例え鮮やかな色を持っていようが生存率を高める妨げにはならないのです』
言われてみれば。暗い夜道だと、大抵の色は黒に見えちゃうもんな。光のない深海ならば、尚更か。
納得していると不意に彼が泳ぎを止める。振り向くと同時に頭の中で聞こえた声は明るかった。
『ああ、良かった……見つけましたよ、アオイ……』
バアルさんが俺に見せたかった、一緒に見たかった景色。
『あちらを、ご覧になって下さい……』
指し示された手のひらの先に見えたのは白。海の底へと向かって、はらはらと舞い落ちているいくつもの白くて細かな粒子。
雪が降っていた。
砂の上を這い回るように泳ぐ平ぺったい魚や、エビのような外見をした甲殻類。うなぎのようにヒョロヒョロ長い魚。彼らが身に宿す色は、先程の浅い場所に居た魚達とあまり変わらない。
確かにイメージ通りの、暗い茶色や灰色をした魚達もいる。けれども、目にも鮮やかな赤や、オレンジ、真っ青、透明、銀色と、カラフルな魚達も普通に泳いでいたのだ。
『深海では、赤も黒も変わりませんからね』
岩陰から顔を覗かせている赤い魚を一瞥してから、俺の手を引きエスコートしてくれる。彼が見せたいという景色は、別の場所にあるようだ。
浅い場所を散歩していた時の様に、ゆっくりと歩くような速さで泳ぎながら、俺の疑問に答えてくれる。
『色というものは、光が当たって初めて見ることが出来ます。ですから、太陽光の届かないところまで潜ってしまいますと……』
そっか。見えないんだ。
今、俺達はバアルさんの術のお陰で、光がなくても関係なく見ることが出来ているけれども、彼らは。
『ええ、左様でございます。全てが真っ黒になりますから、赤だろうと青だろうと関係ありません。等しく見えにくいのですから、例え鮮やかな色を持っていようが生存率を高める妨げにはならないのです』
言われてみれば。暗い夜道だと、大抵の色は黒に見えちゃうもんな。光のない深海ならば、尚更か。
納得していると不意に彼が泳ぎを止める。振り向くと同時に頭の中で聞こえた声は明るかった。
『ああ、良かった……見つけましたよ、アオイ……』
バアルさんが俺に見せたかった、一緒に見たかった景色。
『あちらを、ご覧になって下さい……』
指し示された手のひらの先に見えたのは白。海の底へと向かって、はらはらと舞い落ちているいくつもの白くて細かな粒子。
雪が降っていた。
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