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【新婚旅行編】一日目:エスコート気分のままに

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 ひと通り探検し終えて、俺達はメインの部屋へと戻ってきていた。結構歩き回ったからか、気分はお城の中庭へとお散歩デートに出掛けた後のよう。

 でもまだ終わりじゃない。ちゃんとソファーまでバアルさんをエスコートしなければ。

 ひと回り大きな手を引きながら、座り心地の良さそうなソファーへとバアルさんを連れて行く。高い位置にある、くびれた腰に回していた手を離して、彼が座るのを見届けてから俺も隣に失礼した。

 上手く出来たんだろうか。長く筋肉質な腕が、すかさず肩を抱き寄せてくれて「ありがとうございます、お疲れ様でした」と空いている方の手で頭を撫でてくれる。

「バアルもお疲れ様、思っていた以上に広かったね」

「ええ、探検し甲斐がございました」

 ホントに。先ず俺達が向かったのは、アーチをくぐった先のお隣。メインのお部屋と繋がっているそこには、王族の食事風景に出てきそうな長い食卓、その奥にはキッチンがあった。バアルさんが術で出してくれる様なピッカピカで立派なヤツだ。

 オーブン、冷蔵庫、電子レンジと設備もフル装備。俺達が来ると分かっているからだろう。冷蔵庫の中身や調味料等もバッチリ用意されていた。それも、俺が使いそうなものばかり。好きな時にバアルさんと一緒に台所に立てそうだ。

 階段の影に隠れていて気がつかなかったが、メインの右側にも部屋が一つ。こっちはアーチの柱で繋がってはおらず、普通に扉で隔たれている。

 開いて入ってみれば、大きな鏡がある石造りの広い洗面所だった。その先の浴室も、普通に一人暮らし出来るくらい広い。浴槽も余裕で泳げるくらいに。とはいえ、縦にも横にも大柄なサタン様がゆっくり手足を伸ばすには、これくらいの大きさは必要なんだろうけど。

 一階だけでも満足のいく探検が出来るほどの大ボリューム。けれども二階もなかなかだった。

 一番広かったのは寝室だった。俺達が暮らしている部屋を、そのまま持って来たんじゃないかってくらい。下のメインまでとはいかないが、家具が充実していた。最初にこの部屋を見せられても、流石高級ホテルって思っていただろう。

 ベッドも普段の物でも十分過ぎるのに、もう二回りくらい大きかった。高さは俺の腰くらいあって、ちょっとした小人気分を味わえた。

 他は客室のようで、三つの部屋にベッドが二つずつ。それから、こちらも寝室と同様にテーブルにソファーなどが当たり前のように備え付けられていた。

 正直な感想としては、ホテルというより別荘とか、豪華なお屋敷みたい。こちら以外の、他のスイートルームがどうなっているのかは知らないけどさ。それにしても。

「なんだか喉が乾いちゃった。冷蔵庫に確かジュースがあったよね? バアルもそれでいい?」

 食器棚には丁度いいグラスもあったハズ。先程のエスコート気分のまま、二人分を取ってこようと腰を浮かせようとして、長い腕に抱き締められた。
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