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【新婚旅行編】旅行前日:本日のメイン
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「はっはっは、気にするな。私が貴殿らに贈りたかっただけであるからな」
座ってくれ、と促されてバアルさんと一緒に腰を落ち着けた。見届けてからヨミ様は、まだ湯気の立ち上るティーカップを静かに手に取った。
「お心遣い感謝致します……アオイ様が大変気に入って頂けたことは勿論でございますが、誠に着心地が良く……」
「うむっ、貴殿の為にあつらえた服であるからな。通気性も抜群であるぞ! 速乾性にも優れてはおるが……貴殿の場合、乾かすのも着替えるのも術でどうとでもなるからなぁ……」
そっか、バアルさんの手にかかれば汚れも何もかも、撫でるだけであっという間にキレイサッパリだもんな。海から上がった後の心配もしなくていいんだ。それなら。
「……じゃあ、あんまりドレスコードとか気にしなくてもよさそうですね。いざとなったら、バアルさんに着替えさせてもらえばいいですし」
「うむ。確かにバアルが居れば何の問題もないが、そもそもドレスコードがある店の方が少ないぞ」
「え……でも、高級ホテルがある近くって、そういうのに厳しかったりするんじゃないんですか?」
リゾートだの五つ星だの、そういった住む世界が違う場所にはとんと御縁が無かったもんだから、あくまで勝手なイメージなのだけれども。
「どのホテルにも、ビーチへと直行出来る魔法陣がある故、大抵の施設は水着のままでも利用出来るようになっておるのだよ」
「へぇ……随分と自由というか、開放的なんですね」
「まぁ、そもそも、一部以外は普通の観光地であるからな」
「勿論、そういった分野の術が苦手な方もございますので、お着替えやシャワーを浴びられる場所を用意されていたり、衣服を清める術を使えるスタッフが常に施設の入口に控えておられるとのことです」
「それなら安心ですね」
ヨミ様からのお話に加えて、バアルさんからの補足。それらのお陰で、初めての南エリアへの心構えが気楽になった時、ヨミ様が真っ赤な瞳を楽しそうに細めた。
「さてさて、アオイ殿用のリゾートコーデは一旦置いておいて……本日のメインを、二人同時に試着してみてはくれないだろうか?」
そう言えば、俺の分はまだお披露目されてなかったんだった。バアルさんの御姿に夢中になり過ぎて忘れちゃっていたけれど。
「はい、ありがとうございます。着させていただきますね」
「宜しくお願い致します」
「うむっ! では、レタリー頼んだぞ」
「畏まりました」
微笑むバアルさんが差し出してくれた手を取って、俺達は先程ファッションショーが行われていたスペースへ。
ヨミ様の近くで、しゃんと背筋を伸ばして控えていたレタリーさんが続く。摘んでいたパウンドケーキを一口で頬張ってから俺達の元へ、そしてバアルさんに見えない何かを手渡した。
ペーペな俺よりも、お二人は優れた術士同士。おそらくは今の動作だけで、ヨミ様が用意したメインを渡せたんだろう。俺にとっては、パントマイムなやり取りにしか見えなかったが。
レタリーさんが会釈をしてから照明担当へと戻っていく。ていうか、まだやるつもりだったんだな、この流れ。服を用意してくれたヨミ様が楽しそうだからいいけれども。
「では、アオイ様……失礼致します」
「はい、よろしくお願いします」
大きな手のひらが俺の頬に触れる。優しい手つきでひと撫でされただけで、全身を柔らかい風が吹き抜けていくような、素肌を撫でていくような心地がした。
瞬きの間に変わった装い。最初に目に飛び込んできたのは落ち着いたオレンジ色の波模様。そして色鮮やかな緑色の帯だった。
座ってくれ、と促されてバアルさんと一緒に腰を落ち着けた。見届けてからヨミ様は、まだ湯気の立ち上るティーカップを静かに手に取った。
「お心遣い感謝致します……アオイ様が大変気に入って頂けたことは勿論でございますが、誠に着心地が良く……」
「うむっ、貴殿の為にあつらえた服であるからな。通気性も抜群であるぞ! 速乾性にも優れてはおるが……貴殿の場合、乾かすのも着替えるのも術でどうとでもなるからなぁ……」
そっか、バアルさんの手にかかれば汚れも何もかも、撫でるだけであっという間にキレイサッパリだもんな。海から上がった後の心配もしなくていいんだ。それなら。
「……じゃあ、あんまりドレスコードとか気にしなくてもよさそうですね。いざとなったら、バアルさんに着替えさせてもらえばいいですし」
「うむ。確かにバアルが居れば何の問題もないが、そもそもドレスコードがある店の方が少ないぞ」
「え……でも、高級ホテルがある近くって、そういうのに厳しかったりするんじゃないんですか?」
リゾートだの五つ星だの、そういった住む世界が違う場所にはとんと御縁が無かったもんだから、あくまで勝手なイメージなのだけれども。
「どのホテルにも、ビーチへと直行出来る魔法陣がある故、大抵の施設は水着のままでも利用出来るようになっておるのだよ」
「へぇ……随分と自由というか、開放的なんですね」
「まぁ、そもそも、一部以外は普通の観光地であるからな」
「勿論、そういった分野の術が苦手な方もございますので、お着替えやシャワーを浴びられる場所を用意されていたり、衣服を清める術を使えるスタッフが常に施設の入口に控えておられるとのことです」
「それなら安心ですね」
ヨミ様からのお話に加えて、バアルさんからの補足。それらのお陰で、初めての南エリアへの心構えが気楽になった時、ヨミ様が真っ赤な瞳を楽しそうに細めた。
「さてさて、アオイ殿用のリゾートコーデは一旦置いておいて……本日のメインを、二人同時に試着してみてはくれないだろうか?」
そう言えば、俺の分はまだお披露目されてなかったんだった。バアルさんの御姿に夢中になり過ぎて忘れちゃっていたけれど。
「はい、ありがとうございます。着させていただきますね」
「宜しくお願い致します」
「うむっ! では、レタリー頼んだぞ」
「畏まりました」
微笑むバアルさんが差し出してくれた手を取って、俺達は先程ファッションショーが行われていたスペースへ。
ヨミ様の近くで、しゃんと背筋を伸ばして控えていたレタリーさんが続く。摘んでいたパウンドケーキを一口で頬張ってから俺達の元へ、そしてバアルさんに見えない何かを手渡した。
ペーペな俺よりも、お二人は優れた術士同士。おそらくは今の動作だけで、ヨミ様が用意したメインを渡せたんだろう。俺にとっては、パントマイムなやり取りにしか見えなかったが。
レタリーさんが会釈をしてから照明担当へと戻っていく。ていうか、まだやるつもりだったんだな、この流れ。服を用意してくれたヨミ様が楽しそうだからいいけれども。
「では、アオイ様……失礼致します」
「はい、よろしくお願いします」
大きな手のひらが俺の頬に触れる。優しい手つきでひと撫でされただけで、全身を柔らかい風が吹き抜けていくような、素肌を撫でていくような心地がした。
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