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【番外編】ハレの日だから6

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 後にしたパーティー会場と比べ、城内は静かだった。扉の前や廊下にちらほらと兵士さんやメイドさんの姿は確認出来るものの、普段の賑やかさはない。

 ……まぁ、当たり前か。皆さん、俺達のお祝いにと会場に集まってくれていたんだし。兵士さん達は、別のエリアの警備とかもあるだろうから。

 今回もヨミ様とサタン様は、投影石による生中継をしてくれた。東西南北どのエリアに居ようとも、俺とバアルさんの結婚式が見られるようにと手配してくれたのだ。

 ついつい浮かれてしまう、幸せいっぱいな空気から離れたからだろうか。今更ながら思い至る。

 ……ということは、可愛くて色気マシマシな酔っぱらいバアルさんの姿まで、全国中継されちゃっていたり? ヨミ様達だけならまだしも、それは、ちょっと……複雑というか……イヤなんだけど……

「大丈夫ですよ。先程の珍しいバアル様のお姿を拝見させて頂けたのは、私達くらいですので」

 心の中で、ひっそりとしていたハズのぼやきに応えたのは柔らかい声。俺を抱き抱えているバアルさんではなく、振り向かずに前を歩み続けているレタリーさんだった。

「……俺、なんか言っちゃってました?」

「……大丈夫ですよ。先程のバアル様の御姿が、可愛くて色気マシマシという点に関しましては、私も全面的に同意致します故」

 あー、あー……全部言ってたんですね、はい。

 顔だけチラリと振り向いてから微笑んで。再び前を向き、黄緑色の尾羽根を揺らして歩く秘書さんの発言は、俺の心が気恥ずかしさでオーバーキルされてしまうほどの決定打。お陰様で一気に顔の中心へと熱が集まり、背中に変な汗をかいてしまう。

 ……全く、何が大丈夫だっていうんだ。普通に、言ってましたよ、でいいじゃないか。同意してくれるのは嬉しいけれどさ。

「……ありがとうございます」

「いえ」

 律儀にまた振り向いてから微笑んで「ヨミ様が乾杯の音頭を取られてからは、投影石での撮影は公的なものから私的なものへと切り替えられておりますので」と教えてくれた。

 ああ、だったら大丈夫か。バアルさんと休んでいた場所も壁際のソファーで、皆さんが囲んでくれていたから他の方々には見えていなかっただろうし。

 納得しかけて、流されかけて、はたと気づく。

「……ん? え? いや、私的って……写真以外にも動画も撮ってたってことですか?」

「おや、バレてしまいましたか」

「いや、隠す気なかったでしょうよ」

 分かりやすいくらいに楽しそうな声に、思わずツッコんでしまっていた。

 常に少し前を歩いていた長い足が、徐々にペースを緩めていく。丁度バアルさんと肩を並べた時、彼の腕に抱かれている俺に向かって口端だけを持ち上げ微笑んだ。

「大丈夫ですよ。ちゃんと後日、アオイ様用にコピーして差し上げるつもりでしたので。ああ勿論、結婚式の映像もセットでお付け致しますよ」

 口止め料か、口止め料だな。

「くっ……ありがとう、ございます……」

「いえ」

 軽く会釈したレタリーさんの笑みが深くなる。

 手のひらの上だと分かってはいるものの、踊らざるを得ない。真っ白なタキシードを颯爽と着こなすバアルさんの姿だけでも、俺にとってはお宝映像。

 それにプラスでお揃いのお色直しの衣装。パステルグリーンのジャケットとズボンに、淡いオレンジのシャツを合わせた華やかな装いのバアルさん。さらにレアな酔っぱらいバアルさんまで付いてきてしまうのだ。むしろ、ぜひ踊らさせてくださいって感じだ。

「……随分と楽しそうですね」
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