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【番外編】ハレの日だから1

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 うっとりとした低音が、俺の鼓膜を優しく揺らす。

「アオイ……愛しております……お慕い申し上げております……」

 絶えず繰り返されているのは情熱的な告白。出会えた時から今日までの間も、なんなら今朝、おはようの挨拶を交わしてから今現在までも、度々贈ってもらっている、胸がときめく嬉しいお言葉。

「ああ、誠に私の妻はお可愛いらしいですね……先程の白一色の装いも貴方様の美しさをより一層引き立てておりましたが……お色直しされた此方のお召し物も素敵ですね……カッコいいですよ……」

 更には心が踊り、舞い上がってしまうお褒めの言葉まで。甘さを含んだ声で贈ってくれるんだから、もう大変だ。しかも、彼の逞しいお膝の上に乗せてもらい、後ろから抱き締めてもらいながら、手を繋いでもらいながらという大サービス。

 お陰様で、鼓動は全身に響いているくらいに高鳴りっぱなし、熱を持ちっぱなしの顔からは湯気が出てしまいそう。俺的には必死で表情を保っているつもりだが、多分だらしなくニヤけてしまっていることだろう。

 皆さんの前だというのに。

 パシャパシャと点滅し続けている、いくつもの投影石からの瞬きを受けている俺とバアルさん。金の装飾が施された大きなソファーのど真ん中に座っている俺達を、皆さん方が微笑ましい眼差しで見つめている。

 その内の一人、俺の知らないバアルさんのことを知っているであろう王様に、ずっと気になっていることを尋ねようとした。

「あの、ヨミ様……」

「ん? いかがしたアオイ殿。もしや、飲み物のお代わりか? それとも食べ物か?」

「どうぞお好きな物を仰って下さい、私が取って参ります故」

 質問の途中でヨミ様に、続けてレタリーさんにも気を遣わせてしまった。更にはサタン様からも「遠慮しないで沢山食べるのじゃぞ」と微笑まれた。

 有り難いことに、飲み物も食べ物も十分にいただいている。そもそも、まだ手を付けられていないご馳走の乗ったお皿が数枚、待っているんだからな。バアルさんの術によって俺達の側でふわふわ浮きながら、その出番を。

「ありがとうございます、飲み物もご飯も大丈夫なんですけど……」

「あっ、分かりました! デザートですね? だったら僕が取ってきますよっ、アオイ様の大好きなチョコケ、うわっ……クロウ? なんでいきなり持ち上げるんですか!」

 はいはいと手を上げ、満開の笑みで参戦してきたグリムさんが、困ったように眉を下げたクロウさんによって軽々と抱き上げられる。

 瞬く間に顔を赤くしたグリムさんの抗議の声も何のその。口端を持ち上げ、続きをどうぞと言わんばかりに俺に目配せしてくれた。

「ありがとうございます、クロウさん、グリムさん」

 ぴたりと大人しくなり、ふにゃりと頬を綻ばせたグリムさんにホッとしつつ、俺の前に勢揃いしている皆さんに目を向ける。

「その……ヨミ様にというか、皆さんにもお聞きしたいんですけど……」
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