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【番外編】ただ、貴方にありがとうと3

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 昨日、僕はわくわくしていたけれども、クロウに手を繋いでもらえたらぐっすり眠れて。

 今朝、お城に、アオイ様達の控室につく前からずっとドキドキしちゃったけれども、笑顔でブーケを手渡せて。

「うわぁ……スゴくキレイですね……ありがとうございます、グリムさんっ、クロウさんっ」

「素敵ですね……同じ花を探すのは、さぞや大変だったでしょうに……誠にありがとうございます」

 アオイ様からも、バアル様からも、お返しにとびきりの笑顔をいただけて。

 部屋の中が笑顔であふれていた。アオイ様とバアル様のお着替えを待っている間もずっと。なのに。

 ヒマワリと同じ色のオレンジの髪、サラサラとしたキレイな色を覆っている白いベールがふわりと揺れて。

「……えっと……どう、ですかね……?」

 振り向いた、照れたように微笑む笑顔。アオイ様が尋ねているのに、僕は言葉が出なかった。

 バアル様とお揃いの真っ白なタキシードに靴。細い腰まで届いている長いベール。オレンジの髪と瞳以外、全部真っ白なアオイ様。窓から差し込む日差しに照らされて、淡い光を帯びているアオイ様。

 キレイだなって、カッコいいなって、思ったのに。喉も胸の辺りもきゅってなってて、苦しくて。

 嬉しいのに、嬉しいって気持ちしかないのに、泣いてしまう一歩前みたいに切なくなって。

「おわっ」

 気がついたら僕はアオイ様に抱きついてしまっていた。足が勝手に駆けていて。腕が勝手に伸びていて、しがみついていたんだ。

 でも、不思議な衝動に突き動かされたのは僕だけじゃなかったみたい。僕とアオイ様以外の温かさが、続けてぎゅうぎゅうと抱きついていた。バアル様もヨミ様も、サタン様もレタリーさんもクロウだって、皆アオイ様に抱きついていた。

 なんでかは、分からないんだけど分かる。多分、僕と一緒の気持ちだろうから。僕も皆も、静かに泣いていたから。

「……ありがとう、ございます?」

 不思議そうにお礼を言って、アオイ様は擽ったそうに、嬉しそうに小さく笑った。

 多分、アオイ様だけが分かっていないんだろう。でも、僕達の好きにさせてくれていた。

 アオイ様と、皆とくっついていると切ない気持ちだけが溶けていった。残ったのは嬉しさだけなのに、それでも僕は涙が止まらなかった。
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