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【番外編】ハレの日だから5
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最初は、言葉通り一杯だけのつもりだったんだと思う。
でも、乾杯する前にグリムさんとクロウさんも合流して、それから皆さんと話に花を咲かせている内に後少し、後少しだけといった感じで勧められるがままに二杯、三杯。
気がついた時にはもうボトルが空になっていて。頬を染め、瞳を蕩けさせた色気マシマシバアルさんが出来上がっちゃってた訳で。初めて見れた酔っぱらいな彼に抱き締められて、離してもらえなくなっちゃった訳で。
「たかが、一本空けたくらいで斯様に可愛らしいことにはならなかったがなぁ……」
「そもそも、顔が赤くなったのを見たのも久しぶりじゃし」
「いつもならば、二、三本空けてからがようやく始まりといった感じでしたが……」
ヨミ様、サタン様、レタリーさん。順々に答えてくれた内容は俺の予想通りだった。
そうだよな。バアルさんだったら、いくら飲んでも平然としてそうだよな。
じゃあ、どうして? 俺も皆さんも同じ疑問に行き着いた時、ふとグリムさんが口を開いた。
「アオイ様が居るからじゃないですか?」
「俺……ですか?」
どうして、俺が居るとお酒に弱くなるんだろうか。
疑問が深まった俺を置き去りに「ああ」と口端を持ち上げたクロウさんを始め、皆さん納得されたご様子。いやいや、なんで。
「成る程、確かに……アオイ殿に甘えておるのかもしれぬな」
「ふぇ……」
嬉しそうなヨミ様の一言が、腑に落ちてしまった。
「アオイ……」
急に俺を抱く腕に力が込められたかと思えば、件の彼が囁いてくる。
「アオイ……私の愛しい御方……どうか此方を……そのお美しい琥珀色の瞳に、私を映して頂けないでしょうか?」
寂しそうな声で強請ってくれる。俺を求めてくれる。
「は、はぃ……」
俺は笑顔で応えられただろうか。
顔を向ければ、宝石よりも美しい瞳が煌めいて、微笑んで。スッと通った高い鼻先が甘えるように頬に擦り寄ってくる。
「ふふ、アオイ……」
「レタリー」
「はい、畏まりました」
名前を呼んだだけでヨミ様の意図を汲んだらしいレタリーさん。優秀な秘書さんが俺達の側まで歩み寄り、キレイな角度のついたお辞儀を披露した。
「バアル様、アオイ様と共にお部屋に帰りましょう。ご案内致します」
「はい……」
バアルさんは名残惜しそうに眉間にシワを寄せながらも、俺を横抱きに抱き直してから立ち上がった。先をゆっくり進み始めたレタリーさんを追って、会場を後にしようとする。
「え、ちょっ……ヨミ様」
「心配せずともよいぞ、アオイ殿。貴殿らは十分に、我らが民に晴れ姿を見せてくれた。後は私達に任せてゆっくり寛ぐといい」
「バアルを宜しくのう」
「すっごく素敵な結婚式でした!」
「お二人ともカッコよく決まってましたよ」
微笑みながら見送ってくれる皆さんにお礼を言って、手を振って、俺は身を預けることにした。
分厚い胸板に寄りかかった時、頬に触れたいつもの執事服とは違う生地。いつもよりも熱い体温、早い鼓動。
バアルさんの腕の中は安心出来るのに、今は少しだけ落ち着かなくて。胸の内の擽ったさに気づかないフリをして、彼の首に腕を回した。
でも、乾杯する前にグリムさんとクロウさんも合流して、それから皆さんと話に花を咲かせている内に後少し、後少しだけといった感じで勧められるがままに二杯、三杯。
気がついた時にはもうボトルが空になっていて。頬を染め、瞳を蕩けさせた色気マシマシバアルさんが出来上がっちゃってた訳で。初めて見れた酔っぱらいな彼に抱き締められて、離してもらえなくなっちゃった訳で。
「たかが、一本空けたくらいで斯様に可愛らしいことにはならなかったがなぁ……」
「そもそも、顔が赤くなったのを見たのも久しぶりじゃし」
「いつもならば、二、三本空けてからがようやく始まりといった感じでしたが……」
ヨミ様、サタン様、レタリーさん。順々に答えてくれた内容は俺の予想通りだった。
そうだよな。バアルさんだったら、いくら飲んでも平然としてそうだよな。
じゃあ、どうして? 俺も皆さんも同じ疑問に行き着いた時、ふとグリムさんが口を開いた。
「アオイ様が居るからじゃないですか?」
「俺……ですか?」
どうして、俺が居るとお酒に弱くなるんだろうか。
疑問が深まった俺を置き去りに「ああ」と口端を持ち上げたクロウさんを始め、皆さん納得されたご様子。いやいや、なんで。
「成る程、確かに……アオイ殿に甘えておるのかもしれぬな」
「ふぇ……」
嬉しそうなヨミ様の一言が、腑に落ちてしまった。
「アオイ……」
急に俺を抱く腕に力が込められたかと思えば、件の彼が囁いてくる。
「アオイ……私の愛しい御方……どうか此方を……そのお美しい琥珀色の瞳に、私を映して頂けないでしょうか?」
寂しそうな声で強請ってくれる。俺を求めてくれる。
「は、はぃ……」
俺は笑顔で応えられただろうか。
顔を向ければ、宝石よりも美しい瞳が煌めいて、微笑んで。スッと通った高い鼻先が甘えるように頬に擦り寄ってくる。
「ふふ、アオイ……」
「レタリー」
「はい、畏まりました」
名前を呼んだだけでヨミ様の意図を汲んだらしいレタリーさん。優秀な秘書さんが俺達の側まで歩み寄り、キレイな角度のついたお辞儀を披露した。
「バアル様、アオイ様と共にお部屋に帰りましょう。ご案内致します」
「はい……」
バアルさんは名残惜しそうに眉間にシワを寄せながらも、俺を横抱きに抱き直してから立ち上がった。先をゆっくり進み始めたレタリーさんを追って、会場を後にしようとする。
「え、ちょっ……ヨミ様」
「心配せずともよいぞ、アオイ殿。貴殿らは十分に、我らが民に晴れ姿を見せてくれた。後は私達に任せてゆっくり寛ぐといい」
「バアルを宜しくのう」
「すっごく素敵な結婚式でした!」
「お二人ともカッコよく決まってましたよ」
微笑みながら見送ってくれる皆さんにお礼を言って、手を振って、俺は身を預けることにした。
分厚い胸板に寄りかかった時、頬に触れたいつもの執事服とは違う生地。いつもよりも熱い体温、早い鼓動。
バアルさんの腕の中は安心出来るのに、今は少しだけ落ち着かなくて。胸の内の擽ったさに気づかないフリをして、彼の首に腕を回した。
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