間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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このような奇跡、神の加護と言わずして何と言うのだろうか

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 我らが神の仰っていた通り、アオイの身体に一切異常は見られなかった。治癒術に長けた者が調べてくれた後、私自身も調べてみたが御身は健康体そのもの。それどころか、未知の術で……いや、神の加護によって守られていた。

 なんせ、自発呼吸だけで問題なく生命活動が維持出来ているのだ。それ故にアオイは、やつれてしまうことなくただただ眠り続けている。十日間もの間……何も、水の一滴すら口にしてはいないというのに。

 自分の魔力を消費することで、栄養や水分を取らずとも身体の健康を維持する術はある。しかし、アオイ自身の魔力や残された生命力が失われている形跡は見られない。

 そもそもアオイは筋は良いが、まだ術に不慣れ。そんな彼が高度な術を、まだ私が教えていない術を使える訳がない。このような奇跡、神の加護と言わずして何と言うのだろうか。

 術で調べてみた際に、分かったことはもう一つ。アオイが酷く疲れているということだ。

 私達が一度に多くの魔力を失った際、魔力を回復することだけに力を注ぐべく、休眠状態に陥ってしまうことがある。そう、今のアオイのように。

 その際の一般的な対処方法は、健常な他者が患者と魔力の流れを繋げて、少しずつ魔力を送り込んできくというもの。要は輸血のように足りない魔力を分け与え続けるのだ。

 そうして、一定の値まで魔力が回復すれば、目覚めることが出来る。目覚めるまでにかかる日数は、大体数日くらいだろうか。無論、患者の元々の魔力量や自然回復力にもよるが。

 ただ、私達と違ってアオイは人間だ。そして彼が失ったのは魔力ではない。魔力よりも遥かに強大な力、生命力なのだ。

 ……であれば、通常よりも時間がかかってしまうのは必然だろう。仕方がないのだ。

 とはいえ症状が同じなのだから、生命力だって力の強大さ以外はほとんど魔力と変わらないのだから。魔力を分け与え続ければ、いずれ、いや必ずやアオイは目覚める筈だ。

 目を覚ましてくれると、私は……私達は信じている。
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