515 / 906
とある秘書も祝福していた
しおりを挟む
喜びに震えていた空気が止まる。
決して悪い意味ではない。一様に息を呑んだからだ。
見惚れたからだ。拍手を送る手を、つい止めてしまうほど。お二方の名前を呼ぼうと大きく開いていた口を、思わず閉ざすほどに。
白い光の中から現れたお二方の晴れ姿に、心を奪われたからだ。
アオイ様の小さな手を取り、祭壇に向かってエスコートしていくバアル様。晴れ渡る空のように青いマントを揺らし長い足を進める様は美しく、威厳に満ちている。白い髭を蓄えた口元に、緩やかな笑みを浮かべている。
少しだけ、アオイ様の表情が固い。
バアル様とお揃いの儀礼服。上下共に真っ白な衣装を華奢な身に纏い、青いベールを揺らしながら、懸命に笑顔を作ろうとしていらっしゃる。
不意に、バアル様が足を止めた。
驚き、見上げるアオイ様のお身体を優しく抱き寄せ、流れるような動作で手の甲に口づけた。予定にはない行動だったが、皆様は演出の一つと捉えたご様子。にわかに黄色い声援が上がった。
アオイ様の頬が染まって、綻んでいく。幸せそうな笑みをバアル様に向けている。目尻のシワを深め、微笑み返したバアル様が長く引き締まった腕をアオイ様の腰に回される。
見つめ合い、頷いてから再び祭壇へと向かって歩み始めた。お二方を優しく照らしている、光輝く道を真っ直ぐに。
寄り添い、歩みを進めるお二方の姿は、理想の夫婦像を絵に描いたよう。仲睦まじい御姿に皆様は拍手をしつつも、声にならない溜め息を漏らしていた。
祭壇の前に辿り着いたお二方を、ヨミ様とサタン様が満面の笑みで迎えた。和やかな雰囲気の中、儀式は滞りなく進んでいく。
ヨミ様が、サタン様が、順番にお二方に祝いの言葉をかけられる。その間に私はお二方の選んだ魔宝石をヨミ様方の元へと運んでいった。
ハツラツとしたヨミ様の言葉を受け、バアル様とアオイ様が魔宝石へと手を伸ばす。
緑色と琥珀色。お二方の瞳の色がグラデーションになった、バイカラーの魔宝石。こぶし大の結晶がお二方の魔力を受けて、淡い輝きを帯びていく。異なる二つの魔力が結ばれていく。
魔宝石が一際大きく瞬いた。緑色と琥珀色、二色の輝きが光の帯となって会場に広がっていく。魔宝石に向かってかざすように、手を重ねたお二方を中心に。
力強くも優しい輝きが、徐々に収まっていく。ほんの一瞬だったが、私は感じた。お二方の魔力が、決して途切れることのない絆で繋がったように感じたのだ。
「……我らが神の元、今、魂の契約は交わされた。バアル、アオイ殿……貴殿らが共に歩む永遠に、あふれんばかりの幸福があらんことを」
ヨミ様からの御言葉の後、お二方が見つめ合い、微笑み合う。
この会場に居る誰もが、投影石を通して見守っている国民の誰もが、お二方の輝かしいこれからを思い浮かべ、祝福していた時だった。
祭壇に祀られていた白い炎が、暴力的な輝きを放ったのは。
決して悪い意味ではない。一様に息を呑んだからだ。
見惚れたからだ。拍手を送る手を、つい止めてしまうほど。お二方の名前を呼ぼうと大きく開いていた口を、思わず閉ざすほどに。
白い光の中から現れたお二方の晴れ姿に、心を奪われたからだ。
アオイ様の小さな手を取り、祭壇に向かってエスコートしていくバアル様。晴れ渡る空のように青いマントを揺らし長い足を進める様は美しく、威厳に満ちている。白い髭を蓄えた口元に、緩やかな笑みを浮かべている。
少しだけ、アオイ様の表情が固い。
バアル様とお揃いの儀礼服。上下共に真っ白な衣装を華奢な身に纏い、青いベールを揺らしながら、懸命に笑顔を作ろうとしていらっしゃる。
不意に、バアル様が足を止めた。
驚き、見上げるアオイ様のお身体を優しく抱き寄せ、流れるような動作で手の甲に口づけた。予定にはない行動だったが、皆様は演出の一つと捉えたご様子。にわかに黄色い声援が上がった。
アオイ様の頬が染まって、綻んでいく。幸せそうな笑みをバアル様に向けている。目尻のシワを深め、微笑み返したバアル様が長く引き締まった腕をアオイ様の腰に回される。
見つめ合い、頷いてから再び祭壇へと向かって歩み始めた。お二方を優しく照らしている、光輝く道を真っ直ぐに。
寄り添い、歩みを進めるお二方の姿は、理想の夫婦像を絵に描いたよう。仲睦まじい御姿に皆様は拍手をしつつも、声にならない溜め息を漏らしていた。
祭壇の前に辿り着いたお二方を、ヨミ様とサタン様が満面の笑みで迎えた。和やかな雰囲気の中、儀式は滞りなく進んでいく。
ヨミ様が、サタン様が、順番にお二方に祝いの言葉をかけられる。その間に私はお二方の選んだ魔宝石をヨミ様方の元へと運んでいった。
ハツラツとしたヨミ様の言葉を受け、バアル様とアオイ様が魔宝石へと手を伸ばす。
緑色と琥珀色。お二方の瞳の色がグラデーションになった、バイカラーの魔宝石。こぶし大の結晶がお二方の魔力を受けて、淡い輝きを帯びていく。異なる二つの魔力が結ばれていく。
魔宝石が一際大きく瞬いた。緑色と琥珀色、二色の輝きが光の帯となって会場に広がっていく。魔宝石に向かってかざすように、手を重ねたお二方を中心に。
力強くも優しい輝きが、徐々に収まっていく。ほんの一瞬だったが、私は感じた。お二方の魔力が、決して途切れることのない絆で繋がったように感じたのだ。
「……我らが神の元、今、魂の契約は交わされた。バアル、アオイ殿……貴殿らが共に歩む永遠に、あふれんばかりの幸福があらんことを」
ヨミ様からの御言葉の後、お二方が見つめ合い、微笑み合う。
この会場に居る誰もが、投影石を通して見守っている国民の誰もが、お二方の輝かしいこれからを思い浮かべ、祝福していた時だった。
祭壇に祀られていた白い炎が、暴力的な輝きを放ったのは。
42
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる