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元気になれるおまじない
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「レタリーに頼んで、通話状態にしてもらっているのだ。姿を映してしまうとサプライズにならぬであろう? だが、声くらいはと思ってな」
私に石を手渡してくれながら「ちゃんとアオイ殿の許可も得ておるぞ」とメッセージ欄を見せて下さる。
そこには、レタリー殿から「無事、アオイ様の許可を頂けました。今からお掛けします」と数分前にメッセージが届いていた。流石は我が主、抜かりがない。
『大丈夫ですよ、自信を持たれて下さい。アオイ様は元々魅力あふれる御方なのですから。ああ、勿論私の手によって、もっと輝かせてみせますとも!』
『そうですよ! レタリーさんの言う通りです! アオイ様は、ずっとカッコよくて、可愛くて、キレイなんですから!』
『そうですね。それに、今日はとびきりですよ。バアル様も、ますます惚れ直すんじゃないですかね』
『あ、ありがとうございます……レタリーさん、グリムさん、クロウさん……そうだと、嬉しいんですけど……いつも俺ばっかり、バアルさんにドキドキしちゃうから……』
皆様の励ましの後に聞こえたアオイの声。すぐ隣の部屋に居る彼の声に、私は聞き入ってしまっていた。一言一句聞き漏らさぬよう、集中してしまっていた。
『アオイ様はバアル様のこと大好きですもんね!』
『……はい……皆さんが居てくれるから大丈夫ですけど……正直、寂しいっていうか……もう会いたくなっちゃってて……おかしいですよね。すぐ隣の部屋に居るのに……』
……アオイも寂しいと思ってくれていたなんて。
私だけだと思っていた。最初の頃のように、寂しそうな素振りを見せなかったから、多くの友人に恵まれたから。もう、私が常に側に居なくとも、必ず誰かが居るから平気なのかと。
『えっと……そう言えばレタリーさんの投影石、向こうと繋がってるんですよね?』
『はい、今、バアル様がお聞きになっていらっしゃるかどうかは、分かりませんが』
『それでもいいです。俺が今、言いたいだけなので……ちょっと、お借りしてもいいですか?』
アオイは時折、私の想像の斜め上を容易く飛び越えていってしまう。思いがけない喜びを、沢山もたらしてくれる。
『……バアルさん……大好き、ですよ……』
それは、小さな小さな告白だった。
私にしか聞こえないように、投影石を両手で包みこんでいるのか、少しこもった微かな愛の囁やき。
「私も愛しておりますよ、アオイ」
『ひょわっ……』
見えていなくても、目に浮かぶ。コロコロと変わる愛らしい表情が、慌てて石を取り落としそうになっているアオイの姿が。
『え、わ、うぁ……あ、ありがとうございまひゅ……』
「いえ、此方こそ、ありがとうございます」
恐らくグリムさんだろう。きゃあきゃあと弾んだ声が近くから聞こえた。
アオイの声は、すっかり小さくなってしまっていた。恐らく、照れていらっしゃるのだろう。可愛らしい顔を真っ赤にして。
「どうだ、バアル。満タンになったか? 充電」
「はい、完全復活致しました」
現金なものだ。そう思いつつも、あふれる笑みを抑えきれない。
「さあ、さあ、バアル! 私と父上がバッチリ仕上げてみせるからな! 貴殿のカッコよさで、アオイ殿をますますメロメロにしてやろうぞ!」
「ええ、宜しくお願い致します」
素早く衣装に着替え、鏡台の前に腰掛ける。
投影石から漏れる賑やかな声達に耳を傾けながら、私は目を閉じた。愛しくて仕方がない彼が、アオイが、私の晴れ姿を褒めて下さる光景に、思いを馳せて。
私に石を手渡してくれながら「ちゃんとアオイ殿の許可も得ておるぞ」とメッセージ欄を見せて下さる。
そこには、レタリー殿から「無事、アオイ様の許可を頂けました。今からお掛けします」と数分前にメッセージが届いていた。流石は我が主、抜かりがない。
『大丈夫ですよ、自信を持たれて下さい。アオイ様は元々魅力あふれる御方なのですから。ああ、勿論私の手によって、もっと輝かせてみせますとも!』
『そうですよ! レタリーさんの言う通りです! アオイ様は、ずっとカッコよくて、可愛くて、キレイなんですから!』
『そうですね。それに、今日はとびきりですよ。バアル様も、ますます惚れ直すんじゃないですかね』
『あ、ありがとうございます……レタリーさん、グリムさん、クロウさん……そうだと、嬉しいんですけど……いつも俺ばっかり、バアルさんにドキドキしちゃうから……』
皆様の励ましの後に聞こえたアオイの声。すぐ隣の部屋に居る彼の声に、私は聞き入ってしまっていた。一言一句聞き漏らさぬよう、集中してしまっていた。
『アオイ様はバアル様のこと大好きですもんね!』
『……はい……皆さんが居てくれるから大丈夫ですけど……正直、寂しいっていうか……もう会いたくなっちゃってて……おかしいですよね。すぐ隣の部屋に居るのに……』
……アオイも寂しいと思ってくれていたなんて。
私だけだと思っていた。最初の頃のように、寂しそうな素振りを見せなかったから、多くの友人に恵まれたから。もう、私が常に側に居なくとも、必ず誰かが居るから平気なのかと。
『えっと……そう言えばレタリーさんの投影石、向こうと繋がってるんですよね?』
『はい、今、バアル様がお聞きになっていらっしゃるかどうかは、分かりませんが』
『それでもいいです。俺が今、言いたいだけなので……ちょっと、お借りしてもいいですか?』
アオイは時折、私の想像の斜め上を容易く飛び越えていってしまう。思いがけない喜びを、沢山もたらしてくれる。
『……バアルさん……大好き、ですよ……』
それは、小さな小さな告白だった。
私にしか聞こえないように、投影石を両手で包みこんでいるのか、少しこもった微かな愛の囁やき。
「私も愛しておりますよ、アオイ」
『ひょわっ……』
見えていなくても、目に浮かぶ。コロコロと変わる愛らしい表情が、慌てて石を取り落としそうになっているアオイの姿が。
『え、わ、うぁ……あ、ありがとうございまひゅ……』
「いえ、此方こそ、ありがとうございます」
恐らくグリムさんだろう。きゃあきゃあと弾んだ声が近くから聞こえた。
アオイの声は、すっかり小さくなってしまっていた。恐らく、照れていらっしゃるのだろう。可愛らしい顔を真っ赤にして。
「どうだ、バアル。満タンになったか? 充電」
「はい、完全復活致しました」
現金なものだ。そう思いつつも、あふれる笑みを抑えきれない。
「さあ、さあ、バアル! 私と父上がバッチリ仕上げてみせるからな! 貴殿のカッコよさで、アオイ殿をますますメロメロにしてやろうぞ!」
「ええ、宜しくお願い致します」
素早く衣装に着替え、鏡台の前に腰掛ける。
投影石から漏れる賑やかな声達に耳を傾けながら、私は目を閉じた。愛しくて仕方がない彼が、アオイが、私の晴れ姿を褒めて下さる光景に、思いを馳せて。
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