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神にも心はございます
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昔々の話でございます。
我らが神は一人、無の世界に居りました。天の神から一任されたのでございます。
『兄弟の中で最も優れた魔力を持ち、心が強いそなたならば、負の感情を鎮めることが出来るであろう。そなたを、この世界の神とする。どうか、深い罪に汚れた魂達が行く着く先での受け皿となって欲しい。頼んだぞ』
そうして我らが神は、地獄の神となりました。
天の神の力ですら、拭い切れない罪に寄り添う為に。最後の赦しを与える為に。
御身に宿した二つの炎の内一つ、業火の炎で何処へも行き場のない魂達の罪を燃やし尽くしました。そして、罪や悪意を燃やすことで生じてしまう穢れは、浄化の炎にて。二つの炎で燃やすことにより、ようやくまっさらになれた魂達を無へと帰しておりました。
無へと帰ることが出来れば、長い年月を経て再び現世へと生まれ変わることもございましょう。
天の神は全ての魂を救いたいが故に、容易くないとは知りながらも我らが神を信じ、任せました。そして、我らが神も、その願いに応えたいと尽力致しました。
ですが、神にも心はございます。
たとえ神であられても、喜び、悲しみ、時には怒るのです。そして、寂しさを感じてしまう時も。
「ただ一人、何もない世界で、落ちてくる罪と生み出される穢れを燃やし続ける、終わりのない日々。いつしか一人で居ることに疲れた神は、御自身へのせめてもの慰みにと、私達を作ることに致しました」
「バアルさん達を……」
「はい」
バアルさんが長い睫毛を僅かに瞬かせてから、瞳を細める。先程の返しが、最初の相槌だったからだろう。それほどまでに俺は聞き入っていた。
内容そのものにスゴく興味をそそられているってのもある。だが、それ以上に、彼の語り口に惹き込まれていたのだ。
物語の部分は聞き取りやすい声とテンポで話しつつ、けれども台詞の部分では天の神様のように威厳たっぷりの声で。そして、時には地獄の神様の心情を表すかのように切ない声で話すのだ。
ホントに器用だ。この手の職業で食べていけそう。
それにしても、俺が知ってるような昔話と似通っている部分が多いな。最初、世界には何もなかったとか。神様が地獄の方々を作ったとか。
俺はあんまり詳しい方ではないけれど、アダムとイブは、神様が泥か何かで作ったって話だったっけ。
ってことは、バアルさん達の祖先さんも、何らかの物質から生み出されたのかな?
物質、物質か……水晶とか、だろうか? 皆さんキレイでカッコいい方々ばかりだし。水晶で出来た花も、こちらには沢山咲いているし。
「続けますね」
「あ、はい。お願いします」
「……我らが神は、私達を作ることに致しました。御自身の肉体を利用して」
「へぇ……肉体を……え? 肉体?」
「はい。まず手始めに、御自身の両足を切り落としました。それらを細かく切り刻み、形を整え、魔力を込めたのでございます」
スプラッター昔話じゃん!!
我らが神は一人、無の世界に居りました。天の神から一任されたのでございます。
『兄弟の中で最も優れた魔力を持ち、心が強いそなたならば、負の感情を鎮めることが出来るであろう。そなたを、この世界の神とする。どうか、深い罪に汚れた魂達が行く着く先での受け皿となって欲しい。頼んだぞ』
そうして我らが神は、地獄の神となりました。
天の神の力ですら、拭い切れない罪に寄り添う為に。最後の赦しを与える為に。
御身に宿した二つの炎の内一つ、業火の炎で何処へも行き場のない魂達の罪を燃やし尽くしました。そして、罪や悪意を燃やすことで生じてしまう穢れは、浄化の炎にて。二つの炎で燃やすことにより、ようやくまっさらになれた魂達を無へと帰しておりました。
無へと帰ることが出来れば、長い年月を経て再び現世へと生まれ変わることもございましょう。
天の神は全ての魂を救いたいが故に、容易くないとは知りながらも我らが神を信じ、任せました。そして、我らが神も、その願いに応えたいと尽力致しました。
ですが、神にも心はございます。
たとえ神であられても、喜び、悲しみ、時には怒るのです。そして、寂しさを感じてしまう時も。
「ただ一人、何もない世界で、落ちてくる罪と生み出される穢れを燃やし続ける、終わりのない日々。いつしか一人で居ることに疲れた神は、御自身へのせめてもの慰みにと、私達を作ることに致しました」
「バアルさん達を……」
「はい」
バアルさんが長い睫毛を僅かに瞬かせてから、瞳を細める。先程の返しが、最初の相槌だったからだろう。それほどまでに俺は聞き入っていた。
内容そのものにスゴく興味をそそられているってのもある。だが、それ以上に、彼の語り口に惹き込まれていたのだ。
物語の部分は聞き取りやすい声とテンポで話しつつ、けれども台詞の部分では天の神様のように威厳たっぷりの声で。そして、時には地獄の神様の心情を表すかのように切ない声で話すのだ。
ホントに器用だ。この手の職業で食べていけそう。
それにしても、俺が知ってるような昔話と似通っている部分が多いな。最初、世界には何もなかったとか。神様が地獄の方々を作ったとか。
俺はあんまり詳しい方ではないけれど、アダムとイブは、神様が泥か何かで作ったって話だったっけ。
ってことは、バアルさん達の祖先さんも、何らかの物質から生み出されたのかな?
物質、物質か……水晶とか、だろうか? 皆さんキレイでカッコいい方々ばかりだし。水晶で出来た花も、こちらには沢山咲いているし。
「続けますね」
「あ、はい。お願いします」
「……我らが神は、私達を作ることに致しました。御自身の肉体を利用して」
「へぇ……肉体を……え? 肉体?」
「はい。まず手始めに、御自身の両足を切り落としました。それらを細かく切り刻み、形を整え、魔力を込めたのでございます」
スプラッター昔話じゃん!!
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