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愛しい彼との新たな始まりの日を、皆さんと
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視界の端で、真っ白なベールがふわりと舞う。
振り向いた先には、大好きな緑に、赤、薄紫、金に黄緑。色鮮やかな眼差し達が、皆一様に涙に滲んでいた。
自分で言うのも何だが、姿見で確認した自分の姿は様になっていた。
そもそもレタリーさんに仕上げてもらったのだ。今日という晴れの舞台に見合う、バアルさんの隣に堂々と立てる姿になっているに決まっている。決まっているんだが。
……何で、皆さん何も言ってくれないんだろう? バアルさんまで、ずっと見てるだけだし……
「……えっと……どう、ですかね……?」
沈黙に耐えかねて尋ねた瞬間、謎の衝撃が俺を襲った。何か温かいものが全身に、胸元に、腰に、両腕に、背中に当たって締めつけられて?
いや、抱き締められていた。
胸元に飛び込んできていたのはバアルさん。腰にはグリムさん。右腕にクロウさん。そして左腕にヨミ様とレタリーさん。背中はサタン様。その様は、俺を中心にして皆さんで円陣を組むかのごとく。
「……ありがとう、ございます?」
取り敢えずバアルさんの頭を撫でながら、彼らの抱擁に応えてみる。すると、ますます抱き締める力が強くなっていく。なんなら、ぐすぐすとくぐもった声も聞こえ始めた。
こんなに喜んでくれるのは嬉しいんだけどな。とはいえ、時間は大丈夫なんだろうか。
そんな俺の心配を読んでいたかのようだった。俺の鼻先に緑の粒が、小さな小さなハエのコルテが、ぽんっと何もなかった宙から現れる。
針よりも細い手足が掲げる、彼専用の小さなスケッチブックには「まだ、結婚式まで余裕があるよ」と書かれていた。
「そっか……ありがとう、コルテ」
続けて「時間が迫ってきたら、知らせるね!」と新たなメッセージを掲げてから、ピカピカ瞬くボディによる光の軌跡でハートマークを描いてから、煙のように消えていった。
……じゃあ、まだ少しはこのままでいいか。
愛しいバアルさんの背中を抱き締めて、大好きな皆さんに抱き締められながら身を委ねる。今日という日を、バアルさんとの新たな始まりの日を、皆さんと迎えることが出来る幸せに。
了
振り向いた先には、大好きな緑に、赤、薄紫、金に黄緑。色鮮やかな眼差し達が、皆一様に涙に滲んでいた。
自分で言うのも何だが、姿見で確認した自分の姿は様になっていた。
そもそもレタリーさんに仕上げてもらったのだ。今日という晴れの舞台に見合う、バアルさんの隣に堂々と立てる姿になっているに決まっている。決まっているんだが。
……何で、皆さん何も言ってくれないんだろう? バアルさんまで、ずっと見てるだけだし……
「……えっと……どう、ですかね……?」
沈黙に耐えかねて尋ねた瞬間、謎の衝撃が俺を襲った。何か温かいものが全身に、胸元に、腰に、両腕に、背中に当たって締めつけられて?
いや、抱き締められていた。
胸元に飛び込んできていたのはバアルさん。腰にはグリムさん。右腕にクロウさん。そして左腕にヨミ様とレタリーさん。背中はサタン様。その様は、俺を中心にして皆さんで円陣を組むかのごとく。
「……ありがとう、ございます?」
取り敢えずバアルさんの頭を撫でながら、彼らの抱擁に応えてみる。すると、ますます抱き締める力が強くなっていく。なんなら、ぐすぐすとくぐもった声も聞こえ始めた。
こんなに喜んでくれるのは嬉しいんだけどな。とはいえ、時間は大丈夫なんだろうか。
そんな俺の心配を読んでいたかのようだった。俺の鼻先に緑の粒が、小さな小さなハエのコルテが、ぽんっと何もなかった宙から現れる。
針よりも細い手足が掲げる、彼専用の小さなスケッチブックには「まだ、結婚式まで余裕があるよ」と書かれていた。
「そっか……ありがとう、コルテ」
続けて「時間が迫ってきたら、知らせるね!」と新たなメッセージを掲げてから、ピカピカ瞬くボディによる光の軌跡でハートマークを描いてから、煙のように消えていった。
……じゃあ、まだ少しはこのままでいいか。
愛しいバアルさんの背中を抱き締めて、大好きな皆さんに抱き締められながら身を委ねる。今日という日を、バアルさんとの新たな始まりの日を、皆さんと迎えることが出来る幸せに。
了
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