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皆の太陽と星
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そして、神は最後に指導者をお作りになられました。
御自身が側に居られなくても、我が子達が道を迷わぬように。幸せになれるようにと願いを込めて。
御自身の心臓を二つに分かち、作り上げた二人の内一人。大きな身体に見合う、大らかな心を持った者にはこう告げました。
『そなたは、皆の太陽になりなさい。皆を明るく照らし、見守り続けるのです』
そして、もう一人。美しい姿形に劣らない、眩しい笑顔を浮かべる者にも告げました。
『そなたは、皆の星になりなさい。皆を幸せへと導く希望の光となるのです』
その、お二方の末裔が……
「王族! サタン様とヨミ様ですね!」
「はい。百点満点でございます」
成る程。それで皆さん……城下町でも、サタン様のことを太陽、ヨミ様のことは星って言っていたのか。このお話になぞらえて。
「あっ、それじゃあ、儀式の会場のステンドグラスに太陽と星が描かれていたのも」
「はい。太陽と星は、王族のシンボルでございますので」
キラキラと瞳を輝かせ、弾むように触覚を揺らしているバアルさんの表情は、まるで自分のことのように誇らしげだ。滲み出ていらっしゃる。サタン様とヨミ様のことが好きだって気持ちが。
ほっこりした気持ちで見つめてしまっていたのがバレたらしい。バアルさんが再びシャープな顎に手を当てて、わざとらしい咳払いをした。
その仕草がスイッチだったかのように、平然とした顔に戻った彼は、何事もなかったかのように結びの言葉を紡ぎ始めた。
「こうして、魂となった我らが神は、今も浄化の炎に宿り、私達の国を見守っておられます。ご清聴ありがとうございました」
「スゴく面白かったです! バアルさんの話し方も気持ちがこもってて、迫力もあって、スゴく楽しめました!」
会釈をした彼に向かって、俺は拍手をしていた。俺が手を止めたのと丁度のタイミングで顔を上げた彼が微笑む。
「それは何よりでございます。後ほど、ヨミ様にもお礼を申し上げなければ」
「え?」
「昔、ご指導して頂いておりました故。読み聞かせをさせて頂いている間『もっと感情を込めぬか』など『そこは我らが神の心情を読み取ってだな』などと。大変参考になりました」
ヨミ様からの演技指導か……言われてみれば。そういうの、得意そうだもんな。
幼いヨミ様のご要望に、若いバアルさんが懸命に応えている姿が目に浮かぶ。あまりの微笑ましさに、また口元が緩んでしまう。
「……でも、やっぱりバアルさんの努力の賜物だと思いますよ」
この一言を切っ掛けに、ますます緩んでいくことになるとは。
「ありがとうございます……では、ご褒美を頂いても?」
「へ?」
「先程、愛でて差し上げるなどと言った手前だというのは、重々承知しております……ですが、駄目……でしょうか?」
耳まで赤くしながら、バアルさんが俺の口に触れてくる。柔らかな指先が唇の形をなぞるように撫でていく。
つまりは、そういうことだ。ご褒美に、俺からキスして欲しいっていう。
「だ、ダメじゃないです! 全然! あげます……いっぱい……」
「ありがとうございます……身に余る光栄に存じます」
蕩けるような笑みを浮かべた彼に額を寄せる。何だか俺にとっても、すでにご褒美な気がするんだけど。
「アオイ……」
浮かんだ考えは、すぐに吹っ飛んだ。俺を求めてくれる耳心地のいい低音によって。
御自身が側に居られなくても、我が子達が道を迷わぬように。幸せになれるようにと願いを込めて。
御自身の心臓を二つに分かち、作り上げた二人の内一人。大きな身体に見合う、大らかな心を持った者にはこう告げました。
『そなたは、皆の太陽になりなさい。皆を明るく照らし、見守り続けるのです』
そして、もう一人。美しい姿形に劣らない、眩しい笑顔を浮かべる者にも告げました。
『そなたは、皆の星になりなさい。皆を幸せへと導く希望の光となるのです』
その、お二方の末裔が……
「王族! サタン様とヨミ様ですね!」
「はい。百点満点でございます」
成る程。それで皆さん……城下町でも、サタン様のことを太陽、ヨミ様のことは星って言っていたのか。このお話になぞらえて。
「あっ、それじゃあ、儀式の会場のステンドグラスに太陽と星が描かれていたのも」
「はい。太陽と星は、王族のシンボルでございますので」
キラキラと瞳を輝かせ、弾むように触覚を揺らしているバアルさんの表情は、まるで自分のことのように誇らしげだ。滲み出ていらっしゃる。サタン様とヨミ様のことが好きだって気持ちが。
ほっこりした気持ちで見つめてしまっていたのがバレたらしい。バアルさんが再びシャープな顎に手を当てて、わざとらしい咳払いをした。
その仕草がスイッチだったかのように、平然とした顔に戻った彼は、何事もなかったかのように結びの言葉を紡ぎ始めた。
「こうして、魂となった我らが神は、今も浄化の炎に宿り、私達の国を見守っておられます。ご清聴ありがとうございました」
「スゴく面白かったです! バアルさんの話し方も気持ちがこもってて、迫力もあって、スゴく楽しめました!」
会釈をした彼に向かって、俺は拍手をしていた。俺が手を止めたのと丁度のタイミングで顔を上げた彼が微笑む。
「それは何よりでございます。後ほど、ヨミ様にもお礼を申し上げなければ」
「え?」
「昔、ご指導して頂いておりました故。読み聞かせをさせて頂いている間『もっと感情を込めぬか』など『そこは我らが神の心情を読み取ってだな』などと。大変参考になりました」
ヨミ様からの演技指導か……言われてみれば。そういうの、得意そうだもんな。
幼いヨミ様のご要望に、若いバアルさんが懸命に応えている姿が目に浮かぶ。あまりの微笑ましさに、また口元が緩んでしまう。
「……でも、やっぱりバアルさんの努力の賜物だと思いますよ」
この一言を切っ掛けに、ますます緩んでいくことになるとは。
「ありがとうございます……では、ご褒美を頂いても?」
「へ?」
「先程、愛でて差し上げるなどと言った手前だというのは、重々承知しております……ですが、駄目……でしょうか?」
耳まで赤くしながら、バアルさんが俺の口に触れてくる。柔らかな指先が唇の形をなぞるように撫でていく。
つまりは、そういうことだ。ご褒美に、俺からキスして欲しいっていう。
「だ、ダメじゃないです! 全然! あげます……いっぱい……」
「ありがとうございます……身に余る光栄に存じます」
蕩けるような笑みを浮かべた彼に額を寄せる。何だか俺にとっても、すでにご褒美な気がするんだけど。
「アオイ……」
浮かんだ考えは、すぐに吹っ飛んだ。俺を求めてくれる耳心地のいい低音によって。
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