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★ 珍しいな、続けてくれるなんて

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「はっ、は……バアル……」

 呼んでから、すぐに絡んだ視線は妖しい熱を孕んでいた。額に汗を滲ませ、幅広の肩を揺らしながら、俺の手を取る。

「……アオイ……もう一度、宜しいでしょうか……今度は、貴方様と繋がりたいのです……」

「うん……俺も……お願いしようと思ってた……」

 花咲くように綻ぶ唇からキスをもらって、薄っすら肌に張りつく肌着ごと脱がされた。身に着けているのは、これまた張りついた花柄のパンツだけ。こっちはもうぐっしょりで、可愛かったフリルも無惨なことになってしまっているけれど。

 てっきり、脱がしてもらえると思ったのに。そのまま優しく押し倒された。背中を受け止めてくれたシーツが冷たい。

「あっ……穿いたまま……するんですか?」

「はい、出来るだけ長く堪能したいのです。私の為にと健気に頑張ってくれている、可愛らしい貴方様の姿を」

「っ……」

「……駄目でしょうか?」

 ただでさえ殺し文句を、俺を求めてくれる言葉をいただけたのだ。切なそうに瞳を細め、お願いされてしまえば一発だった。

「いい、ですよ……バアルさんに喜んでもらいたくて、穿いたんですから……いっぱい、見てください」

「……アオイ」

 バアルさんが、カッターシャツを粗雑に脱ぎ捨てる。谷間が出来るほど盛り上がった大胸筋を、白い肌に濃い陰影がつくほど隆起している腹筋を、惜しげもなく披露してからのしかかってくる。

 鎖骨の辺りに触れた唇が熱い。今朝のじゃれつくようなものじゃない。軽く食んだり、強めに吸ったり、背筋がぞくぞくする淡い感覚をもたらすように触れてくる。

「ん、ふぁ……バアルさ……」

 俺が彼のものだという証をつけてくれながら、また乳首を甘やかしてくれる。爪の先で軽くつつかれ、すぐに下腹部が熱を持ってしまう。

 あ……また、俺……イっちゃ……

 甘くイきそうになった時だ。俺の耳元に手をついて、彼が離れていってしまう。あと、ちょっとだったのに。もう少し口づけてもらえていれば、触ってもらえていれば。

 心地さを寸前で取り上げられたからだ。もどかしさに、勝手に腰が揺れてしまう。お願いしようと見上げた先で、柔らかく微笑む緑の瞳とかち合った。

「大丈夫ですよ……すぐに気持ちよくして差し上げます」

 バアルさんが手にしていたのは見慣れた小瓶。人肌くらいに温められた中身が、とろりと俺の後ろを濡らしていく。指で軽く布地を引っ張られて晒された、お尻の穴に塗り込んでいく。

 優しく穴の縁を撫でていた指先が、ゆっくりと俺の体内に入ってきた。

「っ……ん、あ……ぁ……」

 本来ならば、受け入れる為の器官ではない。でも、散々彼に慣らしてもらったソコは今更指一本くらいは容易いもので、あっさり根本まで咥え込んでしまっていた。

 その際、優しく内壁を、あのしこりを撫でてもらえて頭の中で白い光が瞬いた。

 くらくらする。まだ先は長いのに、ちょっぴりイっちゃうなんて。

「……大丈夫ですか?」

 伸ばされた手を握って頷く。汗ばむ額にキスを送ってくれてから、二本目があてがわれた。

「……ゆっくり深呼吸をしていて下さいね」

 珍しいな。続けてくれるなんて。早く彼のが欲しいから、境が分からなくなるまでくっつきたいから有り難いけれど。

 繋いだ手に力を込めている内に、二本目、三本目。スムーズに挿入してもらえてから、丹念に解されていく。

 バラバラに動かしたり、開いて閉じてを繰り返したり。準備をしてもらっている間も、俺の口から漏れるのは意味をなしていない上擦った音ばかり。太ももを震わせて、唯一纏っている布地を更に濡らしてばかりだった。

「あ、うぁ……ん……バアル、もう……」

「はい……優しく致します」

 もう、十分してもらえているのにな。

 視界いっぱいに映っている微笑み。ずっと見ていたい、見つめていて欲しい、熱のこもった緑の瞳が遠のいていく。

 彫刻のように盛り上がった腹筋の下。大きく膨らんだ黒い布地を少しズラしただけで、弾むように飛び出てきた彼のもの。太い血管が浮き出た逞しい竿を、大きな手が握り込む。

 根元から、大きく張り出し赤く潤んだ先端までを数回扱き上げている内に、ますます長さも太さも増したような。

 どこまで大きくなるんだろうか。ちゃんと全部、受け止められる日が来るのかな。

 覆い被され、先端を押し当てられてしまえば瞬く間に、ほんのり過った不安よりも期待が遥かに勝っていく。

 強く求められるように口づけられて、甘い触れ合いに心を奪われた時だった。

「っ…………ん……ふ……んっ、ぅ……」

 重くて、熱い。まだ、この圧迫感には慣れていないみたいだ。

 とはいえ、挿入自体は順調そのもの。頼もしい背中にしがみつき、淡い感覚に身を震わせている内に奥をコツンとつつかれた。この前と同じとこまでは入ったみたい。

「よく頑張りましたね……お加減はいかがでしょうか? 痛みや不快感はございませんか?」

「は……ん、大丈夫……も、動いてもいいよ……」

 また、困ったような瞳で見つめられるのかと思った。カッコいい眉を少し下げて「あまり煽らないで下さい」と言われるのかと。

「……宜しいのでしょうか?」

「ふぇ?」

「……欲望のままに愛しい貴方様を求めても、宜しいのでしょうか?」

 疑問の声を返してしまったどころか、息を呑んでしまっていた。

 荒い吐息が唇に触れる。優しい眼差しではなく、男の目をしたバアルさんが、射抜くように見つめている。繋いでいる手に、力が込められた。
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