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★ その瞬間、心の準備が整った気がした
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一言申されるかと思えば、そんなことはなく。むしろ触覚を弾ませ、上機嫌なご様子で手続きは完了した。
当たり前のように全額払う気満々の彼を、贈り合うのだからと折半を提案。またしても渋々ながら納得して頂けた。万が一の為にとタンス貯金ならぬ、引き出し貯金していて良かったな。また貯めないと。新婚旅行に向けて。
バアルさんがサイトを閉じ、投影石をしまった頃。購入手続きを終えて、ものの数分も経たない頃だった。
俺にとっての特等席、彼のお膝の上へとお邪魔させてもらっていると、視界の端に淡い輝きが。さっきまでサイトを表示していた空間に、不思議な渦が出現していた。
驚く間も、声を出す間もなく、そこからダンボールが現れた。幅は大きめのノートパソコンくらい、高さは辞書二冊分くらいだろうか。その茶色い箱はひとりでにふわふわ浮いて、テーブルの上へと静かに着地した。
ガムテープでキッチリ梱包された箱の上の面に貼られているのは伝票らしき紙。ダンボールの表面に印字されている文字は、さっきのサイトのロゴと同じ。ということは、まさか。
「届きましたね」
「やっぱり! っていうか、早過ぎません?」
「豊富な品揃えは勿論ですが、迅速な配送がウリでございますので」
「ふへぇ……」
ここまでくると、もう溜め息しか出てこない。まぁ、俺の居た現世と違って便利な術がいっぱいあるんだし、これくらいは当然か。
感心している俺の頭をひと撫でしてから、バアルさんが箱を開く。中には先程選んだばかりの下着が、お洒落なデザインの箱や可愛らしいピンクの箱に収まっていた。
……せっかくだから、試着してみるべきかな、やっぱり。ちょっと心の準備がアレだけど。
そっとバアルさんを見つめようとして、かち合った。期待に揺れて、僅かな熱を孕んだ瞳と。その瞬間、準備が整った気がした。
「えっと……穿いてから……見せ合いっこ、してみます?」
「宜しいのでしょうか?」
どっちがいいかなんて聞く間もなかった。力強く羽をはためかせている彼の腕は、すでに俺を抱き抱える体勢に入っている。彼と愛を育んでいるベッドへと、連れて行こうとしてくれている。
そりゃ、ただ見せ合うだけじゃあね。俺だって、そういう期待も込みで誘ったんだし。
引き締まった彼の首に腕を回して、額を寄せる。なかば押しつけるような形で奪った唇が、少し震えて微笑んだ。
「……よろしいです」
「……畏まりました」
うっとりとした声で承った唇から、すかさず貰えたお返し。口に、額、目元に、頬。俺の何倍も贈ってくれながら軽々と抱き上げ、運んでくれる。
雨のように降り注ぐ優しい触れ合いに、すっかり頭の中がお花まみれになった頃。真っ白なシーツの上に下ろされた。
黒いズボンを纏う逞しい膝が俺を跨ぐ。重みを受けたベッドが軋んだ音を立てた。
大きく広がった羽が、均整の取れた長身が、俺の全身を覆うように影を落とす。指を絡めて繋がれて、ゆっくりと彼が近づいてくる。もう一方の柔らかい手のひらが俺の頬を撫で、熱い吐息が唇に触れた。
「ん、ふ……ぁ……」
たった数回、交わして貰えた触れるだけのキス。それだけで、あっさり頭の芯が蕩けてしまう俺は、どうしようもないのだろう。
とはいえ、このままでは肝心な目的が果たせない。すでに崩壊寸前の理性を掻き集め、彼に訴える。
「っ……バアル……まだ、俺……着替えて……」
「心得ております」
「へ?」
大丈夫ですよ、ともう一度口づけてくれた瞬間感じた、全身を優しい風が吹き抜けていく感覚。多分、術で着替えさせてくれたんだろうけど。
「……先ずは私から、お見せ致しますね」
確認する前に、見せつけられることになるとは。
額にキスをくれてからバアルさんが上体を起こす。繋いだ手を離し、フリーになった両手で革ベルトを外し始めた。
高鳴る鼓動が煩い。わざとらしく鳴らされている金属音よりも響いて、全身が震えているみたいだ。
微かな衣擦れの音と共に、あらわになる。
当たり前のように全額払う気満々の彼を、贈り合うのだからと折半を提案。またしても渋々ながら納得して頂けた。万が一の為にとタンス貯金ならぬ、引き出し貯金していて良かったな。また貯めないと。新婚旅行に向けて。
バアルさんがサイトを閉じ、投影石をしまった頃。購入手続きを終えて、ものの数分も経たない頃だった。
俺にとっての特等席、彼のお膝の上へとお邪魔させてもらっていると、視界の端に淡い輝きが。さっきまでサイトを表示していた空間に、不思議な渦が出現していた。
驚く間も、声を出す間もなく、そこからダンボールが現れた。幅は大きめのノートパソコンくらい、高さは辞書二冊分くらいだろうか。その茶色い箱はひとりでにふわふわ浮いて、テーブルの上へと静かに着地した。
ガムテープでキッチリ梱包された箱の上の面に貼られているのは伝票らしき紙。ダンボールの表面に印字されている文字は、さっきのサイトのロゴと同じ。ということは、まさか。
「届きましたね」
「やっぱり! っていうか、早過ぎません?」
「豊富な品揃えは勿論ですが、迅速な配送がウリでございますので」
「ふへぇ……」
ここまでくると、もう溜め息しか出てこない。まぁ、俺の居た現世と違って便利な術がいっぱいあるんだし、これくらいは当然か。
感心している俺の頭をひと撫でしてから、バアルさんが箱を開く。中には先程選んだばかりの下着が、お洒落なデザインの箱や可愛らしいピンクの箱に収まっていた。
……せっかくだから、試着してみるべきかな、やっぱり。ちょっと心の準備がアレだけど。
そっとバアルさんを見つめようとして、かち合った。期待に揺れて、僅かな熱を孕んだ瞳と。その瞬間、準備が整った気がした。
「えっと……穿いてから……見せ合いっこ、してみます?」
「宜しいのでしょうか?」
どっちがいいかなんて聞く間もなかった。力強く羽をはためかせている彼の腕は、すでに俺を抱き抱える体勢に入っている。彼と愛を育んでいるベッドへと、連れて行こうとしてくれている。
そりゃ、ただ見せ合うだけじゃあね。俺だって、そういう期待も込みで誘ったんだし。
引き締まった彼の首に腕を回して、額を寄せる。なかば押しつけるような形で奪った唇が、少し震えて微笑んだ。
「……よろしいです」
「……畏まりました」
うっとりとした声で承った唇から、すかさず貰えたお返し。口に、額、目元に、頬。俺の何倍も贈ってくれながら軽々と抱き上げ、運んでくれる。
雨のように降り注ぐ優しい触れ合いに、すっかり頭の中がお花まみれになった頃。真っ白なシーツの上に下ろされた。
黒いズボンを纏う逞しい膝が俺を跨ぐ。重みを受けたベッドが軋んだ音を立てた。
大きく広がった羽が、均整の取れた長身が、俺の全身を覆うように影を落とす。指を絡めて繋がれて、ゆっくりと彼が近づいてくる。もう一方の柔らかい手のひらが俺の頬を撫で、熱い吐息が唇に触れた。
「ん、ふ……ぁ……」
たった数回、交わして貰えた触れるだけのキス。それだけで、あっさり頭の芯が蕩けてしまう俺は、どうしようもないのだろう。
とはいえ、このままでは肝心な目的が果たせない。すでに崩壊寸前の理性を掻き集め、彼に訴える。
「っ……バアル……まだ、俺……着替えて……」
「心得ております」
「へ?」
大丈夫ですよ、ともう一度口づけてくれた瞬間感じた、全身を優しい風が吹き抜けていく感覚。多分、術で着替えさせてくれたんだろうけど。
「……先ずは私から、お見せ致しますね」
確認する前に、見せつけられることになるとは。
額にキスをくれてからバアルさんが上体を起こす。繋いだ手を離し、フリーになった両手で革ベルトを外し始めた。
高鳴る鼓動が煩い。わざとらしく鳴らされている金属音よりも響いて、全身が震えているみたいだ。
微かな衣擦れの音と共に、あらわになる。
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