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とある死神の師匠と弟子の夜はまだ更けない
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「クロウも、お腹空いていたんですね」
「……まあな」
夜食というよりは、ティータイムだな。そう、ぼんやり考えていたところで、思い至る。
明日、いやもう今日か。とにかく、いつものティータイムは、どうしようかと。お断りした方が、いいんじゃないかと。
思い立ったが、だ。メッセージだけでも送っておこうと、投影石を取り出した。文章を念じているところで、グリムが不思議そうに尋ねてくる。
「……連絡、ですか? こんな時間に?」
「……ああ。朝の茶会、今日は、お休みさせてもらおうと思ってな」
「えっ、どうしてですか?」
「俺もグリムも悲惨な顔になっちまってるからな。お二人に、ご心配をかける訳にはいかないだろう?」
「ああ……そうですね」
今からでも冷やして、術をかければ多少は誤魔化せるかもしれない。
だが、気持ちはどうだろうか。俺も、グリムも、今は落ち着いている。とはいえ、お二人の顔を見れば、また込み上げてくるかもしれない。
寝不足だったならば、尚更だ。正直、あまり眠れる気がしない。そもそも今からじゃあ眠れる時間も、そんなにないしな。お茶会に行くのならば、アオイ様に渡す花を探しに行かなければならないし。
「それに……」
俺達にとっても特別な夜になったが、お二人にとっては言わずもがなだ。
邪魔になるんじゃないだろうか。出来るだけ、二人っきりで過ごしたいんじゃないだろうか。
……前に、アオイ様の首にキスマークがついてたんだよな。
普段は、手を繋いだり、見つめ合ったり。バアル様に抱き締められただけで、アオイ様が顔を真っ赤にして照れていらっしゃったり。大変仲睦まじく、微笑ましいお二人だが……やることは、やっていらっしゃるようだから……
「それに、なんですか?」
思考が無粋な方向へ行きかけたところで、待ったをかけてもらえた。
頭を振って、妙な考えを散らしていると手を握られ、催促される。
「あー……ほら、お二人は婚約されたばかりだろう……だから……」
「……ああっ、なるほど! 出来るだけ、ぎゅってしてたいですよね! アオイ様、バアル様のこと大好きですもん!」
瞳を細めながら「バアル様にぎゅってされてる時のアオイ様、幸せそうですもんね」と続けたグリムに、胸を撫で下ろす。
こういう時には有り難いんだよな。そっち方面が抜けているのは。
グリムが納得してくれたところで、バアル様にメッセージを送った。その後、他愛のない話を交わしながらクッキーとレモネードを楽しんで、片付けを済ませた頃だった。
「クロウ! 約束ですよ! 抱っこして下さい!」
した気はないが。待ってくれとは言ったか。
「……寝なくていいのか?」
「眠れそうにないから、頼んでいるんですよ!」
俺の手を握るグリムは、何故か堂々としている。小さな胸を、えへんと張って、さも当然だと言わんばかりに。
「んー……じゃあ、布団の中でな。眠れるかもしれないし」
「えー……それじゃあ、いつもと一緒じゃないですかぁ」
「? ハグも抱っこも変わらんだろう?」
単に横になるか、座るかの違いじゃないかと思うんだが。曰く特別感があるとか何とか。包みこまれている感じが落ち着くのだとか。
じゃあ、後ろから抱き締めればと提案したが「それだと、クロウの顔が見れないじゃないですかっ」と一蹴されてしまった。それの何がいかんのか、やっぱり分からん。
「……で。満足頂けましたか?」
「はいっ」
冗談めかして言ってみても何のその。ソファーに座る俺の膝の上で寝転がり、胸元に頬を寄せているグリムはご機嫌そのもの。にっこにこだ。
まぁ、グリムがいいなら、それでいいんだが。
落ちてしまわないよう、背中を支え、手を握る。何かこの感じ、覚えが。
「……ああ」
そう言えば、バアル様がよくしていたな。こんな風にアオイ様を横抱きにして、ご自身の膝の上に抱えていらっしゃったな。だったら、納得だ。
「どうかしましたか? クロウ」
「いや。で、この後は、どうしたらいいんだ? 頭を撫でればいいのか?」
「いいんですかっ!? 今日は、大サービスですね?」
ぱぁっと顔を輝かせたグリムに、吹き出しそうになってしまう。それくらい、いくらでもしてやるってのに。
「ああ、とことん付き合うって言っただろう?」
じゃあ、僕も! と何故かグリムが張り切りだした結果、お互いに頭を撫で合うことに。
お陰で今度は笑いが止まらなくなってしまった。グリムもだ。釣られたのだろうか。撫で回す度に、きゃっきゃと笑い転げている。それでも、俺をわしゃわしゃ撫でる手は止まってはいないが。
やっぱりだ。今日は、まだまだ眠れそうにない。
「……まあな」
夜食というよりは、ティータイムだな。そう、ぼんやり考えていたところで、思い至る。
明日、いやもう今日か。とにかく、いつものティータイムは、どうしようかと。お断りした方が、いいんじゃないかと。
思い立ったが、だ。メッセージだけでも送っておこうと、投影石を取り出した。文章を念じているところで、グリムが不思議そうに尋ねてくる。
「……連絡、ですか? こんな時間に?」
「……ああ。朝の茶会、今日は、お休みさせてもらおうと思ってな」
「えっ、どうしてですか?」
「俺もグリムも悲惨な顔になっちまってるからな。お二人に、ご心配をかける訳にはいかないだろう?」
「ああ……そうですね」
今からでも冷やして、術をかければ多少は誤魔化せるかもしれない。
だが、気持ちはどうだろうか。俺も、グリムも、今は落ち着いている。とはいえ、お二人の顔を見れば、また込み上げてくるかもしれない。
寝不足だったならば、尚更だ。正直、あまり眠れる気がしない。そもそも今からじゃあ眠れる時間も、そんなにないしな。お茶会に行くのならば、アオイ様に渡す花を探しに行かなければならないし。
「それに……」
俺達にとっても特別な夜になったが、お二人にとっては言わずもがなだ。
邪魔になるんじゃないだろうか。出来るだけ、二人っきりで過ごしたいんじゃないだろうか。
……前に、アオイ様の首にキスマークがついてたんだよな。
普段は、手を繋いだり、見つめ合ったり。バアル様に抱き締められただけで、アオイ様が顔を真っ赤にして照れていらっしゃったり。大変仲睦まじく、微笑ましいお二人だが……やることは、やっていらっしゃるようだから……
「それに、なんですか?」
思考が無粋な方向へ行きかけたところで、待ったをかけてもらえた。
頭を振って、妙な考えを散らしていると手を握られ、催促される。
「あー……ほら、お二人は婚約されたばかりだろう……だから……」
「……ああっ、なるほど! 出来るだけ、ぎゅってしてたいですよね! アオイ様、バアル様のこと大好きですもん!」
瞳を細めながら「バアル様にぎゅってされてる時のアオイ様、幸せそうですもんね」と続けたグリムに、胸を撫で下ろす。
こういう時には有り難いんだよな。そっち方面が抜けているのは。
グリムが納得してくれたところで、バアル様にメッセージを送った。その後、他愛のない話を交わしながらクッキーとレモネードを楽しんで、片付けを済ませた頃だった。
「クロウ! 約束ですよ! 抱っこして下さい!」
した気はないが。待ってくれとは言ったか。
「……寝なくていいのか?」
「眠れそうにないから、頼んでいるんですよ!」
俺の手を握るグリムは、何故か堂々としている。小さな胸を、えへんと張って、さも当然だと言わんばかりに。
「んー……じゃあ、布団の中でな。眠れるかもしれないし」
「えー……それじゃあ、いつもと一緒じゃないですかぁ」
「? ハグも抱っこも変わらんだろう?」
単に横になるか、座るかの違いじゃないかと思うんだが。曰く特別感があるとか何とか。包みこまれている感じが落ち着くのだとか。
じゃあ、後ろから抱き締めればと提案したが「それだと、クロウの顔が見れないじゃないですかっ」と一蹴されてしまった。それの何がいかんのか、やっぱり分からん。
「……で。満足頂けましたか?」
「はいっ」
冗談めかして言ってみても何のその。ソファーに座る俺の膝の上で寝転がり、胸元に頬を寄せているグリムはご機嫌そのもの。にっこにこだ。
まぁ、グリムがいいなら、それでいいんだが。
落ちてしまわないよう、背中を支え、手を握る。何かこの感じ、覚えが。
「……ああ」
そう言えば、バアル様がよくしていたな。こんな風にアオイ様を横抱きにして、ご自身の膝の上に抱えていらっしゃったな。だったら、納得だ。
「どうかしましたか? クロウ」
「いや。で、この後は、どうしたらいいんだ? 頭を撫でればいいのか?」
「いいんですかっ!? 今日は、大サービスですね?」
ぱぁっと顔を輝かせたグリムに、吹き出しそうになってしまう。それくらい、いくらでもしてやるってのに。
「ああ、とことん付き合うって言っただろう?」
じゃあ、僕も! と何故かグリムが張り切りだした結果、お互いに頭を撫で合うことに。
お陰で今度は笑いが止まらなくなってしまった。グリムもだ。釣られたのだろうか。撫で回す度に、きゃっきゃと笑い転げている。それでも、俺をわしゃわしゃ撫でる手は止まってはいないが。
やっぱりだ。今日は、まだまだ眠れそうにない。
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