440 / 466
とある死神の師匠は、まだまだな弟子に安堵する
しおりを挟む
訂正。まだまだ俺の弟子は、甘えたなようだ。
「クーローウー今度は僕の番ですよ! 抱っこして下さいっ!」
さっきの頼もしさは何処に置いてきてしまったのか。駄々をこねるように俺の腰にまとわりついて離れない。ぎゅうぎゅうと回した腕に力を込めて、全身でくっつこうとしてくる。
……なんだ。やっぱり、グリムはグリムだな。
ほんのり浮かんだ嬉しさに、口の端が緩みそうになってしまう。強請るように見上げてくるグリムの頭を撫でてから、食器棚の扉を開いた。
「おーおー……分かった。分かったから、少し待ってくれ。今から、ホットレモネード作るからよ」
揃いのマグカップを手に取る俺を見て、丸い瞳がキラキラ輝き出す。
「やったぁ! 僕、はちみつたっぷりがいいですっ!」
「分かった。ジンジャークッキーは?」
「食べます! 食べたいです! なんか、お腹すいちゃって……」
そりゃあ、あんだけ泣いたらな。俺も、減っちまったし。
「んじゃあ、多めに温め直すか」
「お願いしますっ!」
カップをテーブルに並べてから、作り置きしていたクッキーをオーブンへ。
軽く焼く。このひと手間だけで、焼き立てのサクサク感が蘇る。レモネードを作っている間に出来るから、やっておいて損はない。というか、得しかない。
大きな皿を取り出して、クッキーを迎え入れる準備はオッケー。お次はレモネードだ。
鍋に、はちみつ、砂糖、水を入れてから温める。さらに、こいつに絞ったレモンを越しながら入れ、かき混ぜれば完成。喉を痛めているであろう俺達にピッタリな、ホットレモネードの出来上がりだ。
丁度、クッキーも温まったらしい。香ばしくて甘い香りが、漂ってきている。
注いだカップを、テーブルで大人しく待っていてくれたグリムの前へ。続けて、クッキーを盛った皿を真ん中に置いてから、俺も席についた。
「……熱いからな、ゆっくり飲めよ」
「はいっ! いただきます!」
忠告は、したんだが。
「……あっち!」
「……だから、言っただろうが」
いくらふーふーしたところで、ぐびっと多めに含んでしまえば、そりゃあ火傷もするだろう。
向かいの席で、目をきゅっと瞑ったグリムが、小さな舌をんべっと出している。ちょっと赤くなっているな。
「ほら」
いくら患部とはいえ、流石に舌を摘むのはな。代わりに頬に手を伸ばし、自然治癒の術を施した。
「ありがとうございます……少し、楽になりました」
「今度は、気をつけてな」
「はいっ」
返事は一人前だ。両手に持ち、今度はちびちびと慎重にコップを傾けている。これなら、大丈夫そうだ。
湯気立つカップを、俺も一口。うん、甘酸っぱい。温かさが喉を通った時、案の定、少しジンとした。こっちにも、後で術を施しておいた方がいいかもしれないな。
喉に手を当てていると、サクッと小気味のいい音が。続けて、喜びに満ちた溜め息が聞こえた。
「んー……おいひい……」
とろんと瞳を細めたグリムが、小さな口いっぱいにクッキーを頬張っている。茶色いクッキーの山が、見る見るうちに小さくなっていく。
「やっぱりクロウのクッキーは最高ですねっ! いくらでも入っちゃいそうですっ!」
「……そりゃあ、良かった。沢山あるからな。好きなだけ食べていいぞ」
「はいっ」
こぼれんばかりの笑顔に、ますます胸の辺りが擽ったくなる。頬に集まる熱を誤魔化すように、俺もクッキーを二、三枚、いっぺんに口へと放り込んでいた。
「クーローウー今度は僕の番ですよ! 抱っこして下さいっ!」
さっきの頼もしさは何処に置いてきてしまったのか。駄々をこねるように俺の腰にまとわりついて離れない。ぎゅうぎゅうと回した腕に力を込めて、全身でくっつこうとしてくる。
……なんだ。やっぱり、グリムはグリムだな。
ほんのり浮かんだ嬉しさに、口の端が緩みそうになってしまう。強請るように見上げてくるグリムの頭を撫でてから、食器棚の扉を開いた。
「おーおー……分かった。分かったから、少し待ってくれ。今から、ホットレモネード作るからよ」
揃いのマグカップを手に取る俺を見て、丸い瞳がキラキラ輝き出す。
「やったぁ! 僕、はちみつたっぷりがいいですっ!」
「分かった。ジンジャークッキーは?」
「食べます! 食べたいです! なんか、お腹すいちゃって……」
そりゃあ、あんだけ泣いたらな。俺も、減っちまったし。
「んじゃあ、多めに温め直すか」
「お願いしますっ!」
カップをテーブルに並べてから、作り置きしていたクッキーをオーブンへ。
軽く焼く。このひと手間だけで、焼き立てのサクサク感が蘇る。レモネードを作っている間に出来るから、やっておいて損はない。というか、得しかない。
大きな皿を取り出して、クッキーを迎え入れる準備はオッケー。お次はレモネードだ。
鍋に、はちみつ、砂糖、水を入れてから温める。さらに、こいつに絞ったレモンを越しながら入れ、かき混ぜれば完成。喉を痛めているであろう俺達にピッタリな、ホットレモネードの出来上がりだ。
丁度、クッキーも温まったらしい。香ばしくて甘い香りが、漂ってきている。
注いだカップを、テーブルで大人しく待っていてくれたグリムの前へ。続けて、クッキーを盛った皿を真ん中に置いてから、俺も席についた。
「……熱いからな、ゆっくり飲めよ」
「はいっ! いただきます!」
忠告は、したんだが。
「……あっち!」
「……だから、言っただろうが」
いくらふーふーしたところで、ぐびっと多めに含んでしまえば、そりゃあ火傷もするだろう。
向かいの席で、目をきゅっと瞑ったグリムが、小さな舌をんべっと出している。ちょっと赤くなっているな。
「ほら」
いくら患部とはいえ、流石に舌を摘むのはな。代わりに頬に手を伸ばし、自然治癒の術を施した。
「ありがとうございます……少し、楽になりました」
「今度は、気をつけてな」
「はいっ」
返事は一人前だ。両手に持ち、今度はちびちびと慎重にコップを傾けている。これなら、大丈夫そうだ。
湯気立つカップを、俺も一口。うん、甘酸っぱい。温かさが喉を通った時、案の定、少しジンとした。こっちにも、後で術を施しておいた方がいいかもしれないな。
喉に手を当てていると、サクッと小気味のいい音が。続けて、喜びに満ちた溜め息が聞こえた。
「んー……おいひい……」
とろんと瞳を細めたグリムが、小さな口いっぱいにクッキーを頬張っている。茶色いクッキーの山が、見る見るうちに小さくなっていく。
「やっぱりクロウのクッキーは最高ですねっ! いくらでも入っちゃいそうですっ!」
「……そりゃあ、良かった。沢山あるからな。好きなだけ食べていいぞ」
「はいっ」
こぼれんばかりの笑顔に、ますます胸の辺りが擽ったくなる。頬に集まる熱を誤魔化すように、俺もクッキーを二、三枚、いっぺんに口へと放り込んでいた。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
306
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる