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とある死神の師匠は、まだまだな弟子に安堵する

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 訂正。まだまだ俺の弟子は、甘えたなようだ。

「クーローウー今度は僕の番ですよ! 抱っこして下さいっ!」

 さっきの頼もしさは何処に置いてきてしまったのか。駄々をこねるように俺の腰にまとわりついて離れない。ぎゅうぎゅうと回した腕に力を込めて、全身でくっつこうとしてくる。

 ……なんだ。やっぱり、グリムはグリムだな。

 ほんのり浮かんだ嬉しさに、口の端が緩みそうになってしまう。強請るように見上げてくるグリムの頭を撫でてから、食器棚の扉を開いた。

「おーおー……分かった。分かったから、少し待ってくれ。今から、ホットレモネード作るからよ」

 揃いのマグカップを手に取る俺を見て、丸い瞳がキラキラ輝き出す。

「やったぁ! 僕、はちみつたっぷりがいいですっ!」

「分かった。ジンジャークッキーは?」

「食べます! 食べたいです! なんか、お腹すいちゃって……」

 そりゃあ、あんだけ泣いたらな。俺も、減っちまったし。

「んじゃあ、多めに温め直すか」

「お願いしますっ!」

 カップをテーブルに並べてから、作り置きしていたクッキーをオーブンへ。

 軽く焼く。このひと手間だけで、焼き立てのサクサク感が蘇る。レモネードを作っている間に出来るから、やっておいて損はない。というか、得しかない。

 大きな皿を取り出して、クッキーを迎え入れる準備はオッケー。お次はレモネードだ。

 鍋に、はちみつ、砂糖、水を入れてから温める。さらに、こいつに絞ったレモンを越しながら入れ、かき混ぜれば完成。喉を痛めているであろう俺達にピッタリな、ホットレモネードの出来上がりだ。

 丁度、クッキーも温まったらしい。香ばしくて甘い香りが、漂ってきている。

 注いだカップを、テーブルで大人しく待っていてくれたグリムの前へ。続けて、クッキーを盛った皿を真ん中に置いてから、俺も席についた。

「……熱いからな、ゆっくり飲めよ」

「はいっ! いただきます!」

 忠告は、したんだが。

「……あっち!」

「……だから、言っただろうが」

 いくらふーふーしたところで、ぐびっと多めに含んでしまえば、そりゃあ火傷もするだろう。

 向かいの席で、目をきゅっと瞑ったグリムが、小さな舌をんべっと出している。ちょっと赤くなっているな。

「ほら」

 いくら患部とはいえ、流石に舌を摘むのはな。代わりに頬に手を伸ばし、自然治癒の術を施した。

「ありがとうございます……少し、楽になりました」

「今度は、気をつけてな」

「はいっ」

 返事は一人前だ。両手に持ち、今度はちびちびと慎重にコップを傾けている。これなら、大丈夫そうだ。

 湯気立つカップを、俺も一口。うん、甘酸っぱい。温かさが喉を通った時、案の定、少しジンとした。こっちにも、後で術を施しておいた方がいいかもしれないな。

 喉に手を当てていると、サクッと小気味のいい音が。続けて、喜びに満ちた溜め息が聞こえた。

「んー……おいひい……」

 とろんと瞳を細めたグリムが、小さな口いっぱいにクッキーを頬張っている。茶色いクッキーの山が、見る見るうちに小さくなっていく。

「やっぱりクロウのクッキーは最高ですねっ! いくらでも入っちゃいそうですっ!」

「……そりゃあ、良かった。沢山あるからな。好きなだけ食べていいぞ」

「はいっ」

 こぼれんばかりの笑顔に、ますます胸の辺りが擽ったくなる。頬に集まる熱を誤魔化すように、俺もクッキーを二、三枚、いっぺんに口へと放り込んでいた。
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