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★ バアルさんだから、バアルさんがついていてくれるから

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「え、それって……大丈夫なんですか? バアルさんの、溶けちゃったりしません?」

「……はい?」

「え、だって、腸液も一応なんか消化出来ますよね? 胃液みたいに。そのせいで、バアルさんのが傷ついちゃったりとか……」

 大きく見開いた瞳が、更に困惑の色に染まっていく。

 ……あれ? 俺なんか、間違えた? 間違えてるっぽいな? 絶対。こんなことなら、もうちょっと生物の勉強しとくんだったなぁ。

 的外れな後悔をしていた俺に、バアルさんが微笑んだ。水晶のように透き通った羽をはためかせながら、擽ったそうに。

「……私の身は、丈夫に出来ております。仮に、全裸で溶岩の海を泳いだとしても、汗だくになるだけで済むでしょう」

「あっ……」

 そうだった。そうでした。

 そもそも、人間じゃないじゃん、バアルさん。俺と同じ基準で考えても意味ないんだった。

「……ご自身の心配は、なさらないのですね」

「……へ? あ……まぁ、不安が全くない訳じゃないですけど……でも、バアルさんがついてくれてますし……」

「……私が、ですか?」

「はい。今まで、痛いこと何もなかったじゃないですか。ずっと……俺が気持ちよくなれるまで、付き合ってくれたじゃないですか。だから、今回も大丈夫かなって……」

 それは確信に近かった。実際問題、そうやって積み重ねてきた日々が今、実を結んでいるのだから。

 全然経験の無かった俺が、バアルさんのほとんどを痛みなく受け入れられるくらいに。

 だから、俺にとっては、なんら驚くようなことではなかったんだけれど。

「ひぅ……あっ、バアルさ……」

 脈打つだけだった彼のものが、急に大きさを増す。俺の奥を内側から押し広げ、更に奥へと進まんと弁をミチミチこじ開けようとする。

 ちょっぴり苦しい。でも、俺の身体はこの僅かな時間の内に順応しようとしていた。中に感じる彼の熱を締めつけて、淡い感覚に変えようとしていたんだ。

 繋いでいる手に力が込められる。汗ばむ額が重ねられる。熱のこもった眼差しが、縋るように俺を見つめている。

「申し訳ございません……気持ちよく致します……絶対に、貴方様を傷つけませんので……」

 愛する彼が求めてくれているのだ。答えなんて、決まっていた。

「はい……いいですよ……動いて下さ……あぁっ……」

 お腹の中を全部、持っていかれたかと思った。

 俺の中を占めていた熱が、ギリギリまで一気に引き抜かれていく。その際に、ずりゅりと内壁を擦られる感覚が、熱くて、熱くて。

「うぁっ……あっ、ひっ……」

 今度は奥まで。まだ、受け入れられていないところまで、大きな先端がコツンと止まるまで。

 ……比べものにならない。先っぽで、浅いところを擦ってもらっていた時とは、全然。

 長い、長いストロークに、ただただ翻弄されるばかり。かと思っていたのに。

「……あっ? ……あ、あっ、バアル……あんっ、あっ……」

 腰の動きが変わった途端にだった。

 奥に埋めたまま、小刻みに揺さぶられ始めた途端、頭の中がパチパチ痺れだす。お腹がジンジンと疼き始める。

「ああ、良かった……はっ、気持ちよく……なられてきたのですね……奥でも……っ……感じて頂けているのですね……」

 ……そっか。俺、気持ちいいんだ。気持ちよくなれてるんだ。

 安心したら余計にだった。大きな先端でコツ、コツ、と軽く突かれる度に、意味を成していない音を漏らしてしまう。

 ギシ、ギシとベッドを鳴らす彼の動きに合わせながら、腰をヘコヘコ揺らしてしまう。

「あ、ひぁ……あんっ、あっ、んっ、あっ、あっ……」

 気持ちいい……お尻、気持ちい……お腹、熱い……もう、俺……おれ……

 訴えなくても、伝わったんだろうか。喜びに満ちあふれた唇が、俺の口を塞いだ。

 吐息を奪うように、求めるように絡め取られる。溶け合うような口づけが、限界まで上り詰めていた俺にトドメを刺した。

「んんぅっ……んっ、ん、ふ、んん…………ん、ん……」

 今までで、一番長い絶頂だった気がする。

 あんなにバクバク響いていたのに、一瞬だけ何にも聞こえなくなって。びっくりするくらい身体が震えっぱなしで。

 でも、スゴく気持ちよかった。今回もやっぱりバアルさんとイけなかったのは残念だけれど。

「はっ、ふっ……あ、ばある……」

「っ……はっ、は、大丈夫ですよ、アオイ……一緒に……今度は一緒に参りましょうね……」

 肩で息をしながら、彼がゆっくりと俺の中から出ていく。無意識に俺は締めつけていたらしい。時折悩ましい声を漏らしながら、バアルさんが眉をひそめていた。

 気持ちいいんだ……俺が力、入れると……

 これは、良いことを知った。今度試してみようかな、なんて考えている余裕は瞬く間に消えていくことになる。

「んぁっ……あっ、あっ、ひぁ……」

 いつの間にか握り込まれていたのだ。大きな手のひらに、ドロドロに濡れた俺のものが。おまけに一緒にだった。

 今にも達してしまいそうなほどにビクつく彼の熱。大きくて太い竿が、俺のものを擦り上げる。カリの段差が、絶妙に裏筋を刺激する。

 ちょっと彼のと一緒に扱き上げられただけ。なのに俺のものは、あっという間に硬さを取り戻し、導かれていった。また目の前で、チカチカと白が瞬き始める。

 長く筋肉質な腕が、震える俺を片手で軽々と抱き起こす。そのまま背を抱き支えられた。

 ほとんど同じ高さにある緑の瞳。焦がれるような眼差しが俺を捉える。

「はっ、くっ……アオイ、アオイ……愛しております……」

 見つめられながら、余裕のない声で熱烈に求められてしまえば、すぐだった。背筋が甘く痺れて、腰がカクカク揺れてしまう。

 ただただもう逞しい胸元に縋りつくことしか出来ない。

「あっ、好きっ……俺も、愛して……あんっ、イく……イっちゃ……バアル、バアルッ……」

 ほとんど、同時だったと思う。

「あぁっ……あっ、あ、ぅ……」

「くぅっ……ん、く……ふ……」

 額をくっつけ合いながら、鼻先を擦り寄せながら。俺とバアルさんは、寄せ合った身を震わせていた。

 朝までは、ムリだった。足りなかったのだ。俺の体力が、圧倒的に。

 ……まだまだ道のりが遠そうだなぁ。バアルさんにたっぷり抱いてもらうには、満足してもらう為には。

 幸せな気怠さに支配されながら、温かい腕の中で労られながら。俺は瞼が重たく閉じていってしまうのを、甘んじて受け入れた。
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