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あからさまに逸らされた視線は、答え合わせには十分で
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見上げれば丁度、透明感のある白い頬に一筋の涙が伝っていくのが見えた。そういえば、バアルさん……途中から全然喋っていなかったような。
……大好きな彼の異変に気づけなかったなんて。
自分の不甲斐なさに、胸の辺りが重くなっていく。でも、落ち込んでいる場合じゃない。
「バアルさん……ごめんなさい……俺、気づけなくて……大丈夫じゃ……ないですよね」
声を発するのも辛いのだろうか。弱々しく頭を横に振りながら、静かに涙をこぼすばかり。目元をそっと指先で拭っても止まることはない。どうしたら。
「あっ」
ふと蘇った、若返ったバアルさんとのやり取り。あの時の彼も、こんな風に泣いてしまっていたっけ。だったら。
「どうぞ、バアルさん! ぎゅってしましょう!」
さめざめと泣き続ける彼に向かって、両腕を広げる。あの時も、ぎゅってしたら落ち着いてくれたんだから、今回だって。
濡れた瞳が大きく見開く。あれ? 今、涙止まっていたような?
疑問が浮かびかけた時、俺の身体がふわりと浮いた。勢いよく伸びてきた、彼の長い腕に抱き上げられて。
バアルさんが、俺の胸元に顔を寄せてくる。甘えてくれているみたいに擦り寄ってくれる。
「っ……」
こんな時に、かわいいって思っちゃいけないんだけどなぁ……
ときめく胸が騒がしくなってしまう。込み上げてくる衝動のまま、思いっきり撫で回したくなってしまう。そんな独りよがりな欲をなんとかねじ伏せて、艷やかな髪に触れた。
緩めに後ろへ撫でつけられたセットを崩してしまわぬよう、指先で慎重に撫でていく。サラツヤな表面は、見た目通りスゴく触り心地がいい。ついつい撫でる手が止まらなくなってしまう。
気がつけば、しょんぼり下がっていたハズの触覚が弾むように揺れていて、しょぼしょぼ縮んでいた羽も大きく広がっていた。
ゆっくりと俺の身体が抱き直される。向き合えた彼の表情は、すっかり晴れ渡っていた。優しい目元が少し赤くなってしまっていたけれど。
「良かった……涙、止まりましたね」
「ええ、お陰様で……ありがとうございます」
柔らかく微笑みながら額をくっつけ、高い鼻先を擦り寄せてくるバアルさん。擽ったいけれども嬉しくて、俺も彼の引き締まった首に腕を回した。
「申し訳ございません。感極まっておりました……ヨミ様からの御言葉と、グリムさんからのお祝いの言葉が誠に素敵で……胸を打たれたものですから……」
「そうだったんですか。確かにお二人とも素敵な……言葉で……」
お二人の言葉を思い返した時、頭に電流が走った気がした。ようやく、募りに募った疑問が晴れたんだ。
「バアルさん……」
「はい、いかがなさいましたか? アオイ」
「も、もしかしなくても……もう皆さんにはバレてるんじゃないですか? 俺達が、今日なんのご報告をするのか」
俺だけを見つめてくれていた眼差しが、あからさまに逸らされる。答え合わせには十分だった。
さらに、タイミングを見計らっていたかのような種明かし。
「……そりゃあ、魔力の花を贈り合うのは、恋人同士じゃプロポーズの定番ですからねぇ」
クロウさんが、鷹のように鋭い金の瞳を細めながら、教えてくれたんだ。
……大好きな彼の異変に気づけなかったなんて。
自分の不甲斐なさに、胸の辺りが重くなっていく。でも、落ち込んでいる場合じゃない。
「バアルさん……ごめんなさい……俺、気づけなくて……大丈夫じゃ……ないですよね」
声を発するのも辛いのだろうか。弱々しく頭を横に振りながら、静かに涙をこぼすばかり。目元をそっと指先で拭っても止まることはない。どうしたら。
「あっ」
ふと蘇った、若返ったバアルさんとのやり取り。あの時の彼も、こんな風に泣いてしまっていたっけ。だったら。
「どうぞ、バアルさん! ぎゅってしましょう!」
さめざめと泣き続ける彼に向かって、両腕を広げる。あの時も、ぎゅってしたら落ち着いてくれたんだから、今回だって。
濡れた瞳が大きく見開く。あれ? 今、涙止まっていたような?
疑問が浮かびかけた時、俺の身体がふわりと浮いた。勢いよく伸びてきた、彼の長い腕に抱き上げられて。
バアルさんが、俺の胸元に顔を寄せてくる。甘えてくれているみたいに擦り寄ってくれる。
「っ……」
こんな時に、かわいいって思っちゃいけないんだけどなぁ……
ときめく胸が騒がしくなってしまう。込み上げてくる衝動のまま、思いっきり撫で回したくなってしまう。そんな独りよがりな欲をなんとかねじ伏せて、艷やかな髪に触れた。
緩めに後ろへ撫でつけられたセットを崩してしまわぬよう、指先で慎重に撫でていく。サラツヤな表面は、見た目通りスゴく触り心地がいい。ついつい撫でる手が止まらなくなってしまう。
気がつけば、しょんぼり下がっていたハズの触覚が弾むように揺れていて、しょぼしょぼ縮んでいた羽も大きく広がっていた。
ゆっくりと俺の身体が抱き直される。向き合えた彼の表情は、すっかり晴れ渡っていた。優しい目元が少し赤くなってしまっていたけれど。
「良かった……涙、止まりましたね」
「ええ、お陰様で……ありがとうございます」
柔らかく微笑みながら額をくっつけ、高い鼻先を擦り寄せてくるバアルさん。擽ったいけれども嬉しくて、俺も彼の引き締まった首に腕を回した。
「申し訳ございません。感極まっておりました……ヨミ様からの御言葉と、グリムさんからのお祝いの言葉が誠に素敵で……胸を打たれたものですから……」
「そうだったんですか。確かにお二人とも素敵な……言葉で……」
お二人の言葉を思い返した時、頭に電流が走った気がした。ようやく、募りに募った疑問が晴れたんだ。
「バアルさん……」
「はい、いかがなさいましたか? アオイ」
「も、もしかしなくても……もう皆さんにはバレてるんじゃないですか? 俺達が、今日なんのご報告をするのか」
俺だけを見つめてくれていた眼差しが、あからさまに逸らされる。答え合わせには十分だった。
さらに、タイミングを見計らっていたかのような種明かし。
「……そりゃあ、魔力の花を贈り合うのは、恋人同士じゃプロポーズの定番ですからねぇ」
クロウさんが、鷹のように鋭い金の瞳を細めながら、教えてくれたんだ。
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