間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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微かに抱いてしまった、あらぬ不安

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 バアルさんグッズが潤ったとはいえ、せっかく市場に来たのだ。当然、あのお店にも新商品が入っていないかチェックしに行った。

 以前、バアルさんに連れて行ってもらった大通りの奥。ヨミ様やサタン様にバアルさん……それと何故か、俺の公式ファングッズが売られているお店へと。

 トンボみたいな羽が特徴的な店長さんは、俺達のことを覚えてくれていた。訪れた途端に「ああ、あの時の!」と微笑んで「丁度、お兄さん達が気に入ってくれる商品が入ったんだよ!」と新作を並べてくれたんだ。

 いつものデフォルメされたぬいぐるみと、いつ撮られたか身に覚えがあり過ぎる写真。

 今回はカツレツパーティーの時のものだった。その為か、俺のぬいぐるみもバアルさんのもお料理バージョン。俺は、緑のヘアピン、三角巾、エプロン。バアルさんは、白いシャツの袖を捲り、足首までかかる黒いエプロンを腰に巻いていた。

 勿論、即決で購入した。バアルさんもこの前と同様に、ヨミ様にも渡すつもりなんだろう。限界の四セットまで買って、羽をはためかせていた。

 いまだ人の波が絶えない通りを、何処へ向かうでもなくのんびり歩く。

「ところで、バアルさんが俺と一緒に行きたい場所って何処なんですか?」

 ふわふわ弾んでいた触覚が、ゆらゆらはためていた羽が、ピタリと止まる。基本的には前を、時々俺を見つめていた瞳が、はたと瞬いた。

「その……良かったら、今からそちらに連れて行ってくれませんか? 俺の行きたかった場所は、ほとんど回ってもらいましたし」

 約束であり、念願でもあった食べ歩きデートを満喫して、さらにはバアルさんグッズも手に入れた。記念のお品も買ったんだし、後はヨミ様達へのお土産だけ。

 だから、今からは、バアルさんの時間だ。そう思っての提案だったのだけれど。

 歩みを緩め、銀糸のように美しい睫毛を伏せたバアルさん。鼻筋の通った横顔は、何故か戸惑っているような、少し困っているようにも見えた。

「……まだ、お土産のチョコレートを買っておりませんよね?」

「へ? あ、はい」

「では、先にそちらへ参りませんか? 私のは、その後で構いませんので」

 柔らかい声色自体は変わらない。俺を気遣ってくれる優しい言葉も。

「は、はい。バアルさんが、いいならそれで……」

「ありがとうございます」

 でも、そう微笑んだ彼は、何だか安心しているようで。何か隠しているのかな、なんて……あらぬ不安を抱いてしまったんだ。
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