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嬉しいけれども、ちょっとだけ恥ずかしい歓迎の証
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「今や我が国では、夫婦円満、恋愛成就の縁起物! バアル様とアオイ様の像さ!」
俺にとっても嬉しくはあったさ。でも、やっぱり恥ずかしかったんだ。ちょっとだけ。
執事服姿のバアルさんが、大事そうにお嫁さん抱っこしているのは、互いにうっとりとした目で見つめ合っているのは俺なんだろう。いや、俺じゃないと困るけど。
オレンジに近い短い髪と瞳。そして、何処から流出したんだろうか? 一度だけ袖を通したことのある試作品。ふりっふりで真っ白な花嫁さんベールと、これまた真っ白な燕尾服。
ひらひらのレースを襟元や袖やら至るところに、ふんだんにあしらった衣装を纏った俺が、彼の首に腕を絡めて微笑んでいる。
国内で、ヨミ様達、王族に次ぐ人気と信頼を得ているバアルさん。そんな彼が、人間である俺と結婚間近に見える像。それが縁起物と言われるほどだ、俺達の仲は歓迎されているんだろう。その事実はスゴく嬉しい。
でも、やっぱり、恥ずかしいのは恥ずかしい。それはそれ、これはこれってヤツだ。常に堂々としているバアルさんは、喜びに満ちあふれていらっしゃるけれど。
「これは……大変素晴らしいお品ですね……是非頂きます」
「だろう? ヨミ様とサタン様の像に負けず劣らず人気の品なんだ」
気に入ってもらえて嬉しいよ、と微笑むお兄さんに、手早く代金を支払ったバアルさん。震える手で商品を受け取ったその瞳は、薄っすらと透明の膜で覆われていた。
……そんなに、喜んでくれるんだ。
初めて出会えた時から「夫婦の契りを」と俺に真っ直ぐな想いを向けてくれていた。あの日からずっと、約束通り俺の側に居てくれて、好きって気持ちを伝え続けてくれている。だから、分かってはいた。いたんだけれど。
じんわりと熱い何かが心に広がり、満たされていく。恥ずかしさなんて、あっという間に喜びへと上書きされていた。
込み上げる衝動に突き動かされるがまま、バアルさんに抱きついていた。堪らなかったんだ。好きって気持ちがあふれてしまっていたんだ。
察しの良い彼は分かってくれたんだろう。何も言わずに、けれども嬉しそうに瞳を細めて俺の肩を抱く手に力を込めてくれたんだ。
星の瞬きを閉じ込めたような、美しい緑の瞳。慈しむような光を宿した眼差しと、どのくらいの間、見つめ合っていたんだろうか。ふと温かい視線に気づく。
正体は言わずもがな。ほっこりとした笑顔のお兄さんだった。
言い訳ではないが、商品を買ってはいる。けれども、度々お店の前だと、お兄さんの前だと忘れてしまっているのだ。迷惑な客のリストに入れられてもおかしくはないだろうに。
すみません、とバアルさんと一緒に頭を下げれば、いえいえ、と笑顔で返してくれたんだ。
そろそろお暇しようとして、思い出したかのようにバアルさんが尋ねる。
「因みにですが、アオイ様の像は……」
「ああ、有るよ! こちらも最近人気の品でね……ご要望が多いもんで、私服バージョンに、バアル様とお揃いのハロウィン吸血鬼バージョンと、数種類揃えて」
「全部頂きます」
「ひぇ……」
力強く言い放ち、財布を構えたバアルさんに、お兄さんの顔がニッコリ輝く。
公式グッズの時と同じく、俺の像を買い占めようとしたバアルさんだったが、またしても、お一人様二つまでの壁に阻まれていた。
俺にとっても嬉しくはあったさ。でも、やっぱり恥ずかしかったんだ。ちょっとだけ。
執事服姿のバアルさんが、大事そうにお嫁さん抱っこしているのは、互いにうっとりとした目で見つめ合っているのは俺なんだろう。いや、俺じゃないと困るけど。
オレンジに近い短い髪と瞳。そして、何処から流出したんだろうか? 一度だけ袖を通したことのある試作品。ふりっふりで真っ白な花嫁さんベールと、これまた真っ白な燕尾服。
ひらひらのレースを襟元や袖やら至るところに、ふんだんにあしらった衣装を纏った俺が、彼の首に腕を絡めて微笑んでいる。
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でも、やっぱり、恥ずかしいのは恥ずかしい。それはそれ、これはこれってヤツだ。常に堂々としているバアルさんは、喜びに満ちあふれていらっしゃるけれど。
「これは……大変素晴らしいお品ですね……是非頂きます」
「だろう? ヨミ様とサタン様の像に負けず劣らず人気の品なんだ」
気に入ってもらえて嬉しいよ、と微笑むお兄さんに、手早く代金を支払ったバアルさん。震える手で商品を受け取ったその瞳は、薄っすらと透明の膜で覆われていた。
……そんなに、喜んでくれるんだ。
初めて出会えた時から「夫婦の契りを」と俺に真っ直ぐな想いを向けてくれていた。あの日からずっと、約束通り俺の側に居てくれて、好きって気持ちを伝え続けてくれている。だから、分かってはいた。いたんだけれど。
じんわりと熱い何かが心に広がり、満たされていく。恥ずかしさなんて、あっという間に喜びへと上書きされていた。
込み上げる衝動に突き動かされるがまま、バアルさんに抱きついていた。堪らなかったんだ。好きって気持ちがあふれてしまっていたんだ。
察しの良い彼は分かってくれたんだろう。何も言わずに、けれども嬉しそうに瞳を細めて俺の肩を抱く手に力を込めてくれたんだ。
星の瞬きを閉じ込めたような、美しい緑の瞳。慈しむような光を宿した眼差しと、どのくらいの間、見つめ合っていたんだろうか。ふと温かい視線に気づく。
正体は言わずもがな。ほっこりとした笑顔のお兄さんだった。
言い訳ではないが、商品を買ってはいる。けれども、度々お店の前だと、お兄さんの前だと忘れてしまっているのだ。迷惑な客のリストに入れられてもおかしくはないだろうに。
すみません、とバアルさんと一緒に頭を下げれば、いえいえ、と笑顔で返してくれたんだ。
そろそろお暇しようとして、思い出したかのようにバアルさんが尋ねる。
「因みにですが、アオイ様の像は……」
「ああ、有るよ! こちらも最近人気の品でね……ご要望が多いもんで、私服バージョンに、バアル様とお揃いのハロウィン吸血鬼バージョンと、数種類揃えて」
「全部頂きます」
「ひぇ……」
力強く言い放ち、財布を構えたバアルさんに、お兄さんの顔がニッコリ輝く。
公式グッズの時と同じく、俺の像を買い占めようとしたバアルさんだったが、またしても、お一人様二つまでの壁に阻まれていた。
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