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まさか、バアルさんは〇〇体質!?
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偶然だとは思いたい。
けれども、立て続けに起こってしまうと、そんな安易な一言では済ませられなくなってしまう。心当たりもあるんだからさ。
やっぱり、認めざるを得ないんだろう。バアルさんが、招き猫さん体質だと。
いわゆる、晴れ男とか雨男とか。そういうスピリチュアルなヤツの一種だ。科学的な根拠はないけど、毎回起こっちゃう系。
バアルさんが、皆さん方を呼び寄せているんだ。バアルさんのあふれる魅力が、皆さん方を惹きつけてしまうんだ。そうに違いない。
色とりどりの屋台屋根がひしめき合う市場。レンガ作りの道を、ゆったり進むバアルさん。引き締まった長い腕で俺の腰を抱き寄せ、賑やかな人の波から守ってくれながら、歩幅を合わせてくれている。
スラリと伸びた、しなやかな足が踏み出す度に、夏の雲みたいな色をしたコートの裾がふわりと揺れる。裏地の爽やかな青がちらりと覗く。
緩めに撫でつけた白い髪。その生え際辺りから生えている細く長い触覚が、優しい風とふわふわ戯れている。穏やかなお昼の日差しを受け、頼もしい背中を飾る半透明の羽が淡く煌めいていた。
バアルさんはカッコいい。
だから、当然なのだけれど。改めてじっくり見させてもらうと、横顔もカッコいい。鼻や顎が、よりシャープに見える。
睫毛の長さもだ。毛先がくるっとしてて、銀糸みたいにキラキラしている。綿棒くらいなら、簡単に乗っちゃいそう。
何度見ても、ドキドキしてしまう。見慣れているハズのに。
ホントに素敵で、魅力的だ。鮮やかな緑の瞳も、目元や頬骨辺りに刻まれた色っぽいシワも、渋いお髭も、穏やかな笑みばかりが浮かぶ口元も。全部。
ちょっと見上げただけで、見つめただけでコレだもんな。行き交う皆さん方が振り返り、足を止めて見惚れちゃうのも仕方がないってもんだ。
しかも、俺と一緒に施している変装の術は、その人の見たいように見えてるらしい。だから、バアルさん自身の魅力も相まって、その方にとって目茶苦茶好みのタイプに見えているんだろう。きっと。
今度は顔だけ後ろに向けてみる。俺達が後にしたかき氷の屋台には、串焼き屋さんの時と同じく長い行列が出来ていた。
老若男女、漏れなく美形な悪魔の皆さん方が、そわそわ待っていらっしゃる。ふわもふな尻尾と耳を仲良く揺らしている親子。硬そうな鱗に覆われた腕を何度も組み直している男性。トンボみたいな羽をはためかせながら腕を組み、微笑み合っている女性達。
店員である、うさ耳美形兄妹さん達も大忙し。臨時のベンチやテーブルを用意しつつ、術もフルに使って懸命に対応していらっしゃる。
硝子の器に盛られた、フルーツやアイスのトッピングがマシマシな、かき氷。色とりどりの冷たい山達が、作られた先からお客さん方の元へと、宙をふわふわ飛んで運ばれていく。
不意に、店員のお姉さんと、ピンクの瞳と目が合った気がした。
いや、気のせいじゃなかったみたいだ。俺達に向かって満面の笑みで手を振ってくれた、だけじゃない。俺が振り返すと、もっと手の動きがぶんぶん、白いうさ耳もぴこぴこ賑やかになったんだから。
「また、ご一緒に参りましょうね」
けれども、立て続けに起こってしまうと、そんな安易な一言では済ませられなくなってしまう。心当たりもあるんだからさ。
やっぱり、認めざるを得ないんだろう。バアルさんが、招き猫さん体質だと。
いわゆる、晴れ男とか雨男とか。そういうスピリチュアルなヤツの一種だ。科学的な根拠はないけど、毎回起こっちゃう系。
バアルさんが、皆さん方を呼び寄せているんだ。バアルさんのあふれる魅力が、皆さん方を惹きつけてしまうんだ。そうに違いない。
色とりどりの屋台屋根がひしめき合う市場。レンガ作りの道を、ゆったり進むバアルさん。引き締まった長い腕で俺の腰を抱き寄せ、賑やかな人の波から守ってくれながら、歩幅を合わせてくれている。
スラリと伸びた、しなやかな足が踏み出す度に、夏の雲みたいな色をしたコートの裾がふわりと揺れる。裏地の爽やかな青がちらりと覗く。
緩めに撫でつけた白い髪。その生え際辺りから生えている細く長い触覚が、優しい風とふわふわ戯れている。穏やかなお昼の日差しを受け、頼もしい背中を飾る半透明の羽が淡く煌めいていた。
バアルさんはカッコいい。
だから、当然なのだけれど。改めてじっくり見させてもらうと、横顔もカッコいい。鼻や顎が、よりシャープに見える。
睫毛の長さもだ。毛先がくるっとしてて、銀糸みたいにキラキラしている。綿棒くらいなら、簡単に乗っちゃいそう。
何度見ても、ドキドキしてしまう。見慣れているハズのに。
ホントに素敵で、魅力的だ。鮮やかな緑の瞳も、目元や頬骨辺りに刻まれた色っぽいシワも、渋いお髭も、穏やかな笑みばかりが浮かぶ口元も。全部。
ちょっと見上げただけで、見つめただけでコレだもんな。行き交う皆さん方が振り返り、足を止めて見惚れちゃうのも仕方がないってもんだ。
しかも、俺と一緒に施している変装の術は、その人の見たいように見えてるらしい。だから、バアルさん自身の魅力も相まって、その方にとって目茶苦茶好みのタイプに見えているんだろう。きっと。
今度は顔だけ後ろに向けてみる。俺達が後にしたかき氷の屋台には、串焼き屋さんの時と同じく長い行列が出来ていた。
老若男女、漏れなく美形な悪魔の皆さん方が、そわそわ待っていらっしゃる。ふわもふな尻尾と耳を仲良く揺らしている親子。硬そうな鱗に覆われた腕を何度も組み直している男性。トンボみたいな羽をはためかせながら腕を組み、微笑み合っている女性達。
店員である、うさ耳美形兄妹さん達も大忙し。臨時のベンチやテーブルを用意しつつ、術もフルに使って懸命に対応していらっしゃる。
硝子の器に盛られた、フルーツやアイスのトッピングがマシマシな、かき氷。色とりどりの冷たい山達が、作られた先からお客さん方の元へと、宙をふわふわ飛んで運ばれていく。
不意に、店員のお姉さんと、ピンクの瞳と目が合った気がした。
いや、気のせいじゃなかったみたいだ。俺達に向かって満面の笑みで手を振ってくれた、だけじゃない。俺が振り返すと、もっと手の動きがぶんぶん、白いうさ耳もぴこぴこ賑やかになったんだから。
「また、ご一緒に参りましょうね」
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