間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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★ 小さな本音

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 白い頬が一気に真っ赤に染まったのを皮切りに、視界が賑やかになった。下がりかけていた触角がぴょこんと弾んで揺れ始め。蕾が花開くように広がっていった、透き通った羽がはためき始める。

 繋いだ手のひらから伝わってくる温度が、じんわり熱くなっていく。

「っ……畏まり、ました……ですが、挿れるのはお約束通り先だけです。ただでさえ、貴方様は初めてなのですから……ゆっくり時間をかけて、慣らしていきましょう。宜しいですね?」

「はいっ」

「では、そのように致しましょう……最後に、挿入時の体位についてですが……」

「たっ……」

「基本的には後ろからの方が、貴方様へのご負担が少なく済みます。例を上げますと、素股の際の様に互いに横になり、後ろから抱かせて頂く体勢か……貴方様に四つん這いになって頂き、私が覆い被さらせて頂く体勢になります」

「よ、四つんば……」

 それって後ろから突かれるってこと、だよな。バアルさんにお尻を向けて……

 頭に浮かび、ゴクリと鳴った喉から出そうになった言葉を必死に飲み下す。

 ……なんか、交尾……みたいだ。

 いや、間違ってはないんだけどさ。行為の内容自体は……一緒だし。俺は男だから、バアルさんの子供を孕むことは出来ないけどさ。

 肝心なのは気持ちの問題だ。俺としては、やっぱり顔を見ながらがいいんだけど……して欲しい時に、キスして貰いやすいし。でも。

 ……バアルさんは、どっちがいいんだろう?

 答えはすぐに分かった。教えてくれたんだ。

「ですが……私と致しましては、貴方様を正常位で……練習の際と同じように、アオイ様のお顔を拝見しながら愛させて頂きたく存じております」

 さっきまでの平然とした語り口とは打って変わって情熱的だ。

 繋いだ手に込められた力が、少し震える声が、俺に伝えてくれる。バアルさんもドキドキしてくれているんだって。

「……いかが、でしょうか?」

「お、俺も、そっちがいいです! 出来れば、その……お膝の上でしたいんですけど……」

 嬉しそうに微笑んでいた瞳がはたと見開き、忙しなく泳ぎ始める。頭上と背中も大騒ぎだ。ぶんぶん、ぱたぱた音を立て、触角と羽が揺れ動いていた。

「っ……そ、そちらは……大変魅力的ではございますが……私のものを、最後まで受け入れられるようになってからに致しましょう。申し訳ないのですが……今の私めでは、貴方様を最後まで支えきれる自信がございません」

 ……貴方様に、夢中になってしまう……そう小さく呟かれた彼の本音。たった一言で、そわそわしちゃうくらい身体が火照ってしまったのに。

「そうしましたら、入ってはいけない場所にまで入りかねませんので……」

「あ……」

 そっか。支えを失ったら、俺の重みで下がっちゃうんだ。奥まで、入っちゃうんだ。バアルさんの……大きくて長いのが。

 今度は想像しただけで、あそこがきゅんっと疼いてしまっていた。

 バアルさんからじっくり致してもらい、気持ちよくなれるようにしてもらった場所。前立腺から、触れてもらえていないのに淡い感覚が上ってきたんだ。

 びくびくと揺らしてしまいそうになった下半身を、強く太ももを閉じることで必死に堪える。

「んっ…………そ、そうですね……じゃあ……こ、今後の楽しみに、取って……おきます……」

「……そうして頂けると助かります」

 なんか俺、今、どさくさに変なこと言わなかったか?

 急に静かになってしまった空気が重い。居た堪れなくて俯いてしまっていた視線を、頬に添えられた手によって戻される。

 目が合った瞬間、溺れていた。

 俺だけを見つめてくれる焦がれるような瞳に、どちらともなく交わした口づけに。

「ん……ん、んっ……バアルさ……ぁ……」

 自覚は無かった。けれども俺は催促するみたいに彼の首に腕を絡め、強請るみたいに呼んでいた。

 男らしい喉仏の奥からくぐもった笑い声がする。

 誘うように開いていた股の間を、すでにズボン越しからでも分かるくらいに反応を示してしまっている場所を、大きな手が優しく包み込んだ。

「あっ……?」
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