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貴方様のお好きなように、私を愛でて下さい

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 白手袋を外し、あらわになった細く長い指が俺の髪を梳くように撫でてくれる。ならば俺も、と後ろにキッチリ撫でつけられた白く艷やかな髪に手を伸ばした。

 ゆっくり慎重に指の先で撫でていると、急にピタリと止まってしまった優しい手つき。釣られて俺も手を止めれば、鮮やかな緑の瞳とかち合う。

 どうかしましたか? と尋ねようとしたけれど、叶わなかった。ときめかされてしまったんだ。不意打ちで。

 擦り寄ってもらえてしまったんだ。彼に向かって伸ばしたまま、行き場をなくしていた俺の手を取り、白く滑らかな頬を俺の手のひらに、甘えてくれているみたいに。

「ば、バアルさ……」

「もっと撫でて頂けませんか? 遠慮せずに、さあ……」

 向かい合い、俺と目線を合わせるように、鍛え上げられた長身をベッドに委ねているバアルさん。

 ジャケットを脱ぎ、襟元を緩めている彼の無防備な胸元から、浮き出たキレイな鎖骨のラインが、盛り上がった立派な胸板が、ちらりと覗いている。

「ひゃ、ひゃい……失礼しまふ……」

 強請ってもらえたんだ。なんとしてでも、ご要望にお応えしなければ。

 反対の頬にもう片方の手も添えて、鼻筋の通った彼の顔を包み込むように優しく撫でる。

 やっぱりカッコいい。心臓に悪いな……魅力的過ぎて。何かお話しでもして、ちょっとくらい意識をそらさないと……撫でるどころじゃなくなっちゃいそうだ。

「あ」

「どうか致しましたか?」

「カツレツパーティ、いつにするか決めてなかったなって」

 うっとり細められていた瞳が「左様でございましたね」と瞬く。

 俺達の間で漂っていた擽ったい雰囲気が、ほんのり和んでいく。ちょっとだけ、ホッとしたのもつかの間だった。

「練習で、いっぱい作ることになりそうだから……グリムさんやクロウさん、ヨミ様もお呼びしませんか?」

「いいですね。大変楽しみです」

 じゃあ、ヨミ様のご都合が合えば明日にでも、とあっさり話題が終了してしまったんだ。肝心な俺の心臓は、心情は、いまだドキドキしっぱなし、そわそわしっぱなしなのに。

 柔らかい目元に刻まれた、色っぽいシワをなぞるようにそっと触れる。擽ったかったんだろうか。男らしい喉仏がくつくつと揺れた。

「す、すみません」

「いえ、大丈夫ですよ」

 嬉しそうに微笑む緑の瞳に俺が映っている。ただでさえ、全身に響きそうなくらいに心音が高鳴ってしまっているのに。

「どうか、このまま続けて下さい……貴方様のお好きなように、私を愛でて下さい」

 いつもよりトーンの低い声で、とんでもない殺し文句を贈ってくれるもんだから困ってしまう。

 ……キスしたくなっちゃったじゃないか。
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