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バアルさんに求められるのは、嬉しいのだけれど
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「どわっ!?」
俺もだ。俺もパンツ一丁じゃないか!
え、何で? だって、いつもはバアルさんに愛してもらったら、ちゃんと服に着替えさせてもらっていて……
寝起きプラスびっくりで混乱を極めている思考。それでも無理矢理回して昨晩の記憶を掘り起こす。
「あ」
そうだった。取り敢えず最低限の着替えを済ませた後、バアルさんが抱き締めてくれただけじゃなくて、滅茶苦茶甘えてきてくれて。嬉しいな、かわいいな、って思ってる内に寝ちゃったんだった。
ふと感じた熱い視線。反射的に仰ぎ見た先で、うっとり微笑む緑の瞳とかち合う。
大きく広がり彼の背を彩っている半透明の羽が、朝の日差しの中で水晶のように煌めいていた。
「ふふ、誠に貴方様はお可愛らしいですね。蕩けた笑顔で甘えて下さったかと思えば、頬を真っ赤に染めてはにかんで……」
大きな手から梳くみたいに髪を撫でられ、続けて頬を撫でられる。
柔らかい笑みが徐々に近づいてきて、また彼と触れ合えて。落ち着く温もりが、優しいハーブの匂いが、俺の全身を包み込んだ。
「本当に……堪らない」
熱のこもった瞳で見つめられながら、吐息が触れ合う距離で囁かれ、背筋に甘い感覚が走る。触れるだけのキスを送ってくれた形のいい唇が、俺の首に擦り寄ってくる。
軽く触れたり、甘く食んだり……昨晩の幸せ過ぎるひと時を思い出させようとしているみたいだ。
あっという間に、ふわふわした感覚に胸が満たされていく。何も考えられなくなってしまう。
……あ、マズい……このままじゃ……
「……ちょ、バアルさ……んぅっ……待って……ぁ……待って下さい……」
思わず掴んでしまっていた幅広の肩が、そっと俺から退いていく。
申し訳ないとは思う。名残惜しそうに唇を尖らせている彼には。
取り敢えず、と身体を起こそうとすれば、すかさず優しく手を取り、背を支えてくれた。抱き合うような形でベッドの上に座った俺に、バアルさんが額を擦り寄せてくる。
「……駄目、ですか?」
穏やかに微笑んでばかりの瞳が、叱られた子犬のようにしょげている。かわいい。
……バアルさんから求められるのは嬉しくて堪らない。堪らないんだけど、今はダメだ。そっち方面のスキンシップは。
「だ、だって朝ですし……」
取ってつけたような言い訳だ。ホントは俺だって……という気持ちが片隅に残っているせいだろう。
そんな状態なんだから、彼にバレない訳がない。見つめる瞳がきょとんと丸くなったのは、ほんの少しの間だけだった。
「ああ、明るさが気になるのですね? では、これでいかがでしょうか?」
得意気に顔を輝かせたバアルさんが、整えられた指先を弾く。鳴らされた小気味いい音を合図にシャンデリアの明かりが消え、立派な窓からの日差しが遮られる。
床一面が上等な絨毯に覆われた広々とした室内を、瞬く間に穏やかな薄闇が支配した。
「外部に音が漏れぬよう、防音の魔術障壁も施しました。他にご希望がございましたら、何でも叶えて差し上げますよ?」
「……ありがとうございます……で、でも……もうすぐグリムさん達が……」
「でしたら、少々時間の流れをゆっくりに致しましょうか? それともコルテに、今朝のお茶会は午後に、と連絡をしてもらうのも」
言った途端に鮮やかに逃げ道を塞がれてしまう。何か……前にもやったことあるぞ、このやり取り。
俺もだ。俺もパンツ一丁じゃないか!
え、何で? だって、いつもはバアルさんに愛してもらったら、ちゃんと服に着替えさせてもらっていて……
寝起きプラスびっくりで混乱を極めている思考。それでも無理矢理回して昨晩の記憶を掘り起こす。
「あ」
そうだった。取り敢えず最低限の着替えを済ませた後、バアルさんが抱き締めてくれただけじゃなくて、滅茶苦茶甘えてきてくれて。嬉しいな、かわいいな、って思ってる内に寝ちゃったんだった。
ふと感じた熱い視線。反射的に仰ぎ見た先で、うっとり微笑む緑の瞳とかち合う。
大きく広がり彼の背を彩っている半透明の羽が、朝の日差しの中で水晶のように煌めいていた。
「ふふ、誠に貴方様はお可愛らしいですね。蕩けた笑顔で甘えて下さったかと思えば、頬を真っ赤に染めてはにかんで……」
大きな手から梳くみたいに髪を撫でられ、続けて頬を撫でられる。
柔らかい笑みが徐々に近づいてきて、また彼と触れ合えて。落ち着く温もりが、優しいハーブの匂いが、俺の全身を包み込んだ。
「本当に……堪らない」
熱のこもった瞳で見つめられながら、吐息が触れ合う距離で囁かれ、背筋に甘い感覚が走る。触れるだけのキスを送ってくれた形のいい唇が、俺の首に擦り寄ってくる。
軽く触れたり、甘く食んだり……昨晩の幸せ過ぎるひと時を思い出させようとしているみたいだ。
あっという間に、ふわふわした感覚に胸が満たされていく。何も考えられなくなってしまう。
……あ、マズい……このままじゃ……
「……ちょ、バアルさ……んぅっ……待って……ぁ……待って下さい……」
思わず掴んでしまっていた幅広の肩が、そっと俺から退いていく。
申し訳ないとは思う。名残惜しそうに唇を尖らせている彼には。
取り敢えず、と身体を起こそうとすれば、すかさず優しく手を取り、背を支えてくれた。抱き合うような形でベッドの上に座った俺に、バアルさんが額を擦り寄せてくる。
「……駄目、ですか?」
穏やかに微笑んでばかりの瞳が、叱られた子犬のようにしょげている。かわいい。
……バアルさんから求められるのは嬉しくて堪らない。堪らないんだけど、今はダメだ。そっち方面のスキンシップは。
「だ、だって朝ですし……」
取ってつけたような言い訳だ。ホントは俺だって……という気持ちが片隅に残っているせいだろう。
そんな状態なんだから、彼にバレない訳がない。見つめる瞳がきょとんと丸くなったのは、ほんの少しの間だけだった。
「ああ、明るさが気になるのですね? では、これでいかがでしょうか?」
得意気に顔を輝かせたバアルさんが、整えられた指先を弾く。鳴らされた小気味いい音を合図にシャンデリアの明かりが消え、立派な窓からの日差しが遮られる。
床一面が上等な絨毯に覆われた広々とした室内を、瞬く間に穏やかな薄闇が支配した。
「外部に音が漏れぬよう、防音の魔術障壁も施しました。他にご希望がございましたら、何でも叶えて差し上げますよ?」
「……ありがとうございます……で、でも……もうすぐグリムさん達が……」
「でしたら、少々時間の流れをゆっくりに致しましょうか? それともコルテに、今朝のお茶会は午後に、と連絡をしてもらうのも」
言った途端に鮮やかに逃げ道を塞がれてしまう。何か……前にもやったことあるぞ、このやり取り。
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