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★ 一番重要だけれども、一番説明しにくい事柄
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予測出来たハズだ。当然こうなるだろう、と。冷静な思考回路でならば。
「まず、私はどちらの役でアオイ様を愛させて頂いていたのでしょうか?」
曇りなき目で見つめながら、真剣な表情で彼が問う。真っ白なキングサイズよりも立派なベッドの上でお互いに姿勢を正し、向き合った状態で。
デジャブだ。まさか二度も経験することになるとは思わなかった。彼との初めてを迎える前と同じように、そういう方面での擦り合わせをすることになるなんてさ。
「先程の貴方様が仰っていた可愛がって……というお言葉から察するに……御身を、だっ、抱かせて頂いていたと……そう、判断しても宜しいのでしょうか?」
「は、はぃ……だ、抱いてもらってました……」
そう彼は何も知らない。覚えていないんだから、致してもらう前にお話し合いが始まるのは分かっていたハズだ。
だって彼は紳士で、俺のことを俺以上に気遣ってくれる人なのだから。すっかり浮かれて、好きにして! ってなっていたお花畑な俺とは違って。
「左様でございましたか……では、私達は、どの程度まで……致していたのでしょうか?」
……きてしまった。一番重要で、けれども一番説明しにくい質問が。
「それは……」
特別なキスをしてもらったり、触り合ったり、撫で合ったり。それくらいなら言えたんだと思う。けれども直後に浮かんだ、溶け合うくらいに心地のいい思い出が邪魔をした。
……熱く、固くなったお互いのものを擦りつけ合ったり、扱き合ったり。時には合わせた太ももの間に後ろから、前から挿れてもらっていた擬似的なセックスの光景。ぶわりと蘇り過ったそれらによって、頭の中が真っ白になってしまった。
「その……ば、バニラセックスを……」
結果、このヘタれっぷりである。
ホントは分かっていた。彼との触れ合いの全部を詳細に言うべきだってのは。けれども、俺は濁してしまった。以前、彼に教えてもらった総称を言うことで。
頭では浮かんでいるのに、これから致してもらう彼の為に言わないといけないのに。言葉に、音に出すのを戸惑ってしまったんだ。
「……ということは、挿入までには至ってはいなかったのですね?」
銀糸のように美しい睫毛が僅かに伏せられる。また少し感じた寂しそうな気配に、気がつけば声を大にしていた。
「で、でもっ、準備はしてました! バアルさんに抱いてもらう為に……」
目を丸くした彼の頬がぽぽぽっと桜色に染まっていく。水晶のように透き通った羽が大きく広がり、どこか落ち着きなさそうにはためき始める。
「さ、左様でございましたか……準備、というと……御身の、その……う、後ろを、でしょうか?」
「はい……まだ、二本しか指、挿れてもらったことないですけど……で、でも、俺っ、バアルさんのお陰でちゃんとお尻だけでも、気持ちよくイけるようになりましたからっ」
静まり返った空気。一気に耳の先っちょまでトマトになってしまったバアルさん。
「あ……」
もしかしなくても、俺……今、とんでもないことを言っちゃったんじゃないか?
間の抜けた声を出したところで、気づいてしまった。おまけに、吹き飛んでいた恥ずかしさまで帰ってきてしまった。熱くなった背中にじわりと汗が滲み出す。
こういう時は、いっそ黙ってしまった方がいいんだろう。下手に言葉を重ねるよりは。
「え、えっとですね……さ、三本っ! 三本挿れた状態で俺が気持ちよくイけたら、抱いてくれるって約束してくれたんです……だ、だから……その……」
何故なら、この様に更に言わなくてもいいことまでまるっと白状しかねないからである。うん。これは酷い。自分のことながら。
ますます重くなった空気と赤い顔。控えめに言って大惨事だ。どうしてこうなった。
「だから……バアルさんの好きにして、いいので……俺は、バアルさんがくれるものなら……何でも、いつでも大歓げ」
せめて、これだけは伝えないと。伝えようとして、遮られてしまった。いつの間にか抱き締められ、吐息ごと飲み込まれてしまっていた。余裕のない、求められているんだって伝わってくる口づけに。
何度か触れ合ってから、ゆっくり離れていってしまった唇がポツリと呟く。
「申し訳ございません……貴方様の愛らしさに衝動を抑えることが叶いませんでした……」
「い、いえ……嬉しい、です……」
……キスしてくれたってことは、オッケーってことでいいんだろうか? いいんだよな?
「あの……」
「ど、どうぞ……」
「いえ、貴方様から……」
まさか、二回も重なってしまうとは。
俺としては、何を言おうとしていか気になって仕方がないんだけど。けれども、俺から言わないと言ってはくれないんだろう。ただただ俺を見つめ、そわそわ羽をはためかせ待っててくれている彼を見るに。
「……もう一回、してくれませんか?」
強請るとすぐに、ふわりと咲いた。形の良い唇に、喜びに満ちあふれた微笑みが。
「……私も、もう一度……御慈悲を頂こうと願うつもりでおりました」
どうやら、内容も重なってたらしい。
「まず、私はどちらの役でアオイ様を愛させて頂いていたのでしょうか?」
曇りなき目で見つめながら、真剣な表情で彼が問う。真っ白なキングサイズよりも立派なベッドの上でお互いに姿勢を正し、向き合った状態で。
デジャブだ。まさか二度も経験することになるとは思わなかった。彼との初めてを迎える前と同じように、そういう方面での擦り合わせをすることになるなんてさ。
「先程の貴方様が仰っていた可愛がって……というお言葉から察するに……御身を、だっ、抱かせて頂いていたと……そう、判断しても宜しいのでしょうか?」
「は、はぃ……だ、抱いてもらってました……」
そう彼は何も知らない。覚えていないんだから、致してもらう前にお話し合いが始まるのは分かっていたハズだ。
だって彼は紳士で、俺のことを俺以上に気遣ってくれる人なのだから。すっかり浮かれて、好きにして! ってなっていたお花畑な俺とは違って。
「左様でございましたか……では、私達は、どの程度まで……致していたのでしょうか?」
……きてしまった。一番重要で、けれども一番説明しにくい質問が。
「それは……」
特別なキスをしてもらったり、触り合ったり、撫で合ったり。それくらいなら言えたんだと思う。けれども直後に浮かんだ、溶け合うくらいに心地のいい思い出が邪魔をした。
……熱く、固くなったお互いのものを擦りつけ合ったり、扱き合ったり。時には合わせた太ももの間に後ろから、前から挿れてもらっていた擬似的なセックスの光景。ぶわりと蘇り過ったそれらによって、頭の中が真っ白になってしまった。
「その……ば、バニラセックスを……」
結果、このヘタれっぷりである。
ホントは分かっていた。彼との触れ合いの全部を詳細に言うべきだってのは。けれども、俺は濁してしまった。以前、彼に教えてもらった総称を言うことで。
頭では浮かんでいるのに、これから致してもらう彼の為に言わないといけないのに。言葉に、音に出すのを戸惑ってしまったんだ。
「……ということは、挿入までには至ってはいなかったのですね?」
銀糸のように美しい睫毛が僅かに伏せられる。また少し感じた寂しそうな気配に、気がつけば声を大にしていた。
「で、でもっ、準備はしてました! バアルさんに抱いてもらう為に……」
目を丸くした彼の頬がぽぽぽっと桜色に染まっていく。水晶のように透き通った羽が大きく広がり、どこか落ち着きなさそうにはためき始める。
「さ、左様でございましたか……準備、というと……御身の、その……う、後ろを、でしょうか?」
「はい……まだ、二本しか指、挿れてもらったことないですけど……で、でも、俺っ、バアルさんのお陰でちゃんとお尻だけでも、気持ちよくイけるようになりましたからっ」
静まり返った空気。一気に耳の先っちょまでトマトになってしまったバアルさん。
「あ……」
もしかしなくても、俺……今、とんでもないことを言っちゃったんじゃないか?
間の抜けた声を出したところで、気づいてしまった。おまけに、吹き飛んでいた恥ずかしさまで帰ってきてしまった。熱くなった背中にじわりと汗が滲み出す。
こういう時は、いっそ黙ってしまった方がいいんだろう。下手に言葉を重ねるよりは。
「え、えっとですね……さ、三本っ! 三本挿れた状態で俺が気持ちよくイけたら、抱いてくれるって約束してくれたんです……だ、だから……その……」
何故なら、この様に更に言わなくてもいいことまでまるっと白状しかねないからである。うん。これは酷い。自分のことながら。
ますます重くなった空気と赤い顔。控えめに言って大惨事だ。どうしてこうなった。
「だから……バアルさんの好きにして、いいので……俺は、バアルさんがくれるものなら……何でも、いつでも大歓げ」
せめて、これだけは伝えないと。伝えようとして、遮られてしまった。いつの間にか抱き締められ、吐息ごと飲み込まれてしまっていた。余裕のない、求められているんだって伝わってくる口づけに。
何度か触れ合ってから、ゆっくり離れていってしまった唇がポツリと呟く。
「申し訳ございません……貴方様の愛らしさに衝動を抑えることが叶いませんでした……」
「い、いえ……嬉しい、です……」
……キスしてくれたってことは、オッケーってことでいいんだろうか? いいんだよな?
「あの……」
「ど、どうぞ……」
「いえ、貴方様から……」
まさか、二回も重なってしまうとは。
俺としては、何を言おうとしていか気になって仕方がないんだけど。けれども、俺から言わないと言ってはくれないんだろう。ただただ俺を見つめ、そわそわ羽をはためかせ待っててくれている彼を見るに。
「……もう一回、してくれませんか?」
強請るとすぐに、ふわりと咲いた。形の良い唇に、喜びに満ちあふれた微笑みが。
「……私も、もう一度……御慈悲を頂こうと願うつもりでおりました」
どうやら、内容も重なってたらしい。
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