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いつもの挨拶を貴方と
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「えっと……じゃあ、バアルさんの身体も魔力も特に問題は無くて、記憶も身体も魔力が回復すれば自然に戻る……ってことでいいんですよね」
「はい。左様でございます」
改めて、現状を整理してからの最終確認。彼のお膝の上にお邪魔させてもらい尋ねた俺に頷きながら、髪を梳くように撫でてくれる。
……自然にってことは、当分このままなんだろうな。でも、特に支障は無いだろう。
だって、変わらず俺のことを……す、好きでいてくれているんだし。俺にとって、最大の懸念事項が解消されているんだ。他に何の問題が有るっていうんだろう。いや、ないな。全然。
俺達を包み込むように照らし、真っ白なシーツへ重なった影を浮かばせている日差し。さっきよりも少し明るくなった室内で、ぽつりと小さな疑問が落ちる。
「……ところでアオイ様、将来の私と貴方様が日頃どのようにお過ごしか、お聞きしても宜しいでしょうか?」
そう尋ねる彼の瞳はキラキラ輝き、美しく透き通った羽はそわそわはためいていた。いかにも興味津々って感じで。
確かに、気にはなるよな。同じ立場だったら、俺だって聞いてみたいし。
「はい、勿論」
即座に返せば、ますますぱぁっと瞳が、笑顔が眩しくなる。やっぱりかわいい。ついつい頬がだらしなく緩んでしまう。
大切にしまっている宝物を並べていくように、頭の中でバアルさんとの幸せな日々を思い返す。
……お散歩してますとか、コルテの演奏に合わせて踊ってますとか。色々あるけれど……やっぱり一から順に、の方がいいだろうな。
そう思い、とある日のことを例に伝えようとして。
「えっと……起きたら先ず朝の挨拶に……き」
出だしっから躓いた。地面にめり込むレベルで、思いっきり。
「……挨拶に、なんでしょう?」
ゆるりと俺の頬を撫でたかと思えば、わざとらしく小首を傾げ、微笑む。明らかに楽しんでいらっしゃる。触覚は弾むように揺れているし。羽なんか、もうぱったぱただ。
……これは、絶対分かっているやつだ。分かってて言わせようとしているやつだ。違いない。
……ちょっぴり意地悪なところも、察しの良さも。若い時からすでにご健在だったんだな。
とはいえ、朝することなんて限られているしな。おまけにニ文字の内の半分を言ってしまっているからな。仕方がない。
「そ、その……き、キスを……してもらってます……」
「……アオイ様からは、して頂けてはいなかったのでしょうか?」
……まさか、すかさず追い打ちをかけられるなんて。こっちは、あっさり白旗を上げたっていうのに。
寂しそうな声色だけでも十分だった。
なのに額を合わせ、切なく細められた瞳でじっと見つめながら、高い鼻を擦り寄せてくるんだ。ただでさえ、きゅうきゅう締め付けられている胸が、今度はドキドキはしゃぎ始めちゃったじゃないか。
「アオイ様……」
止めと言わんばかりにもう一声。さらには縋るような眼差しを向けられてしまえば、あっという間だった。固く閉じていたハズの口が、いとも容易く緩んでしまう。
「っ……し、してますよ! 毎朝!! そりゃあ、最初の内は、歯をぶつけちゃったりしてましたけど、それなりに俺だって上手く出来るように……あっ」
込み上げた衝動のまま捲し立てたせいだ。完全に余計なことまで言ってしまっていた。墓穴だ。前方後円墳を余裕で建てられるくらいに立派な墓穴を掘ったかもしれない。
口を押さえたところでもう遅い。すでに出ていった言葉達は、帰ってきやしないんだから。
「……左様でございましたか」
静かにクスクスと微笑む彼は、大変ご満悦そうだ。触覚も羽もゆらゆら、ぱたぱた動いている。
「因みにですが、そのご挨拶……私めから、貴方様に……させて頂いても?」
口調はおずおずとしてはいるものの、姿勢は完全に前のめりだ。さり気なく俺の腰に腕を回し、しなやかな指で顎を持ち上げ、俺の許可が下りるのを今か今かと待っていらっしゃる。
「はい。左様でございます」
改めて、現状を整理してからの最終確認。彼のお膝の上にお邪魔させてもらい尋ねた俺に頷きながら、髪を梳くように撫でてくれる。
……自然にってことは、当分このままなんだろうな。でも、特に支障は無いだろう。
だって、変わらず俺のことを……す、好きでいてくれているんだし。俺にとって、最大の懸念事項が解消されているんだ。他に何の問題が有るっていうんだろう。いや、ないな。全然。
俺達を包み込むように照らし、真っ白なシーツへ重なった影を浮かばせている日差し。さっきよりも少し明るくなった室内で、ぽつりと小さな疑問が落ちる。
「……ところでアオイ様、将来の私と貴方様が日頃どのようにお過ごしか、お聞きしても宜しいでしょうか?」
そう尋ねる彼の瞳はキラキラ輝き、美しく透き通った羽はそわそわはためいていた。いかにも興味津々って感じで。
確かに、気にはなるよな。同じ立場だったら、俺だって聞いてみたいし。
「はい、勿論」
即座に返せば、ますますぱぁっと瞳が、笑顔が眩しくなる。やっぱりかわいい。ついつい頬がだらしなく緩んでしまう。
大切にしまっている宝物を並べていくように、頭の中でバアルさんとの幸せな日々を思い返す。
……お散歩してますとか、コルテの演奏に合わせて踊ってますとか。色々あるけれど……やっぱり一から順に、の方がいいだろうな。
そう思い、とある日のことを例に伝えようとして。
「えっと……起きたら先ず朝の挨拶に……き」
出だしっから躓いた。地面にめり込むレベルで、思いっきり。
「……挨拶に、なんでしょう?」
ゆるりと俺の頬を撫でたかと思えば、わざとらしく小首を傾げ、微笑む。明らかに楽しんでいらっしゃる。触覚は弾むように揺れているし。羽なんか、もうぱったぱただ。
……これは、絶対分かっているやつだ。分かってて言わせようとしているやつだ。違いない。
……ちょっぴり意地悪なところも、察しの良さも。若い時からすでにご健在だったんだな。
とはいえ、朝することなんて限られているしな。おまけにニ文字の内の半分を言ってしまっているからな。仕方がない。
「そ、その……き、キスを……してもらってます……」
「……アオイ様からは、して頂けてはいなかったのでしょうか?」
……まさか、すかさず追い打ちをかけられるなんて。こっちは、あっさり白旗を上げたっていうのに。
寂しそうな声色だけでも十分だった。
なのに額を合わせ、切なく細められた瞳でじっと見つめながら、高い鼻を擦り寄せてくるんだ。ただでさえ、きゅうきゅう締め付けられている胸が、今度はドキドキはしゃぎ始めちゃったじゃないか。
「アオイ様……」
止めと言わんばかりにもう一声。さらには縋るような眼差しを向けられてしまえば、あっという間だった。固く閉じていたハズの口が、いとも容易く緩んでしまう。
「っ……し、してますよ! 毎朝!! そりゃあ、最初の内は、歯をぶつけちゃったりしてましたけど、それなりに俺だって上手く出来るように……あっ」
込み上げた衝動のまま捲し立てたせいだ。完全に余計なことまで言ってしまっていた。墓穴だ。前方後円墳を余裕で建てられるくらいに立派な墓穴を掘ったかもしれない。
口を押さえたところでもう遅い。すでに出ていった言葉達は、帰ってきやしないんだから。
「……左様でございましたか」
静かにクスクスと微笑む彼は、大変ご満悦そうだ。触覚も羽もゆらゆら、ぱたぱた動いている。
「因みにですが、そのご挨拶……私めから、貴方様に……させて頂いても?」
口調はおずおずとしてはいるものの、姿勢は完全に前のめりだ。さり気なく俺の腰に腕を回し、しなやかな指で顎を持ち上げ、俺の許可が下りるのを今か今かと待っていらっしゃる。
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