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見た目が少し若返ったくらい、なんてことはない
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大きな窓から差し込む日差し。柔らかい朝の光が、透き通った羽を淡く照らす。ぱたぱたとはためく度に反射した煌めきが、白いシーツの上にゆらゆら落ちている。
俺を見下ろす鮮やかな緑の瞳が細められ、彼の白い頬が桜色に染まっていく。大きな手が、ごく自然な動作で恭しく俺の手を取った。
「ああ、なんてお可愛らしい……」
柔らかい微笑みを描いていた、形のいい唇が甘く囁く。聞き慣れた低音よりも少し高く、けれども大好きな彼と同じ声色で。彼の額から生えている触覚が、弾むように揺れている。
「ふぇ?」
「透き通った琥珀色の瞳が素敵な美しい貴方、どうかお名前をお聞かせ願えませんか?」
「ひょわっ!?」
うっとりと瞳を細めた彼の唇が、そっと俺の手の甲に触れる。見せつけるみたいにリップ音を鳴らしてから、再びこちらを見つめ微笑んだ。
……バアルさんが、俺の好きな人が若返っている。目元を飾る色っぽいシワも、渋くて男らしい髭も一切ない。ぴっちぴちなお兄さんになっていらっしゃる。いつも通りご一緒に、たったひと晩眠っていた内に。
「ああ、申し訳ございません……可憐な貴方様にひと目で心を奪われ、衝動の赴くままに可愛らしい御手を握ってしまい……私としたことが、礼節を欠いてしまいました」
「ひぇ……」
形のいい眉を申し訳無さそうに下げ、つらつらと述べたものの、悪びれた様子はないみたいだ。
なんせ、離す気配がない。それどころか、もうすでにしなやかな指を絡めていらっしゃる。思いっきり恋人繋ぎで、しっかりぎゅっと握っていらっしゃる。
とはいえ、若返る前の彼に、バアルさんにゾッコンな俺だ。
たかが見た目が、渋くてカッコいい大人な4、50代から、20代くらいのカッコよくて色っぽいお兄さんに変ったくらい、なんてことはない。好きな人から手を握ってもらえているんだ、嬉しいに決まっている。
「あ、いえ……その、嬉しい、です……スゴく」
「誠でございますか? では、このまま手を繋がさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「は、はい……勿論……」
若いから、だろうな。ぱぁっと瞳を輝かせた彼の笑顔が、何だか幼く見える。かわいい。新鮮だ。
いや、まぁ、うっきうきだったり、はしゃいだりしている普段の大人なバアルさんも、スゴくかわいいんだけどさ。
「……あっ」
「いかがなさいましたか?」
嬉しくて仕方がない熱烈なアプローチに、すっかり頭の中がお花まみれになってしまっていた。一番肝心なことを確認し忘れているじゃないか。
「その……貴方は、バアルさん……なんですよね?」
見た目や行動から考えても、バアルさんだってのは確定的に明らかではある。あるんだけれども、一応ご本人に確認は取っておいた方がいいだろう。
「ええっ、貴方様のバアルですっ」
すぐさま答えは返ってきた。花が咲くような満面の笑みと弾んだ声と共に。
でしょうね、と納得してからすぐに浮かぶ。ちょっぴり聞くのが怖いし、返答次第では寂しくなってしまう疑問が。けれども、現状を明らかにする為には、尋ねるより他はなかった。
「……でも、俺のことは覚えていない……それで、有ってますか?」
途端に眩しい笑顔に影が落ちる。見る見るうちにハの字になってしまった眉と一緒に触覚がへにょんと下がり、半透明の羽がしょぼしょぼと縮んだ。
「……ええ、左様でございます」
俺を見下ろす鮮やかな緑の瞳が細められ、彼の白い頬が桜色に染まっていく。大きな手が、ごく自然な動作で恭しく俺の手を取った。
「ああ、なんてお可愛らしい……」
柔らかい微笑みを描いていた、形のいい唇が甘く囁く。聞き慣れた低音よりも少し高く、けれども大好きな彼と同じ声色で。彼の額から生えている触覚が、弾むように揺れている。
「ふぇ?」
「透き通った琥珀色の瞳が素敵な美しい貴方、どうかお名前をお聞かせ願えませんか?」
「ひょわっ!?」
うっとりと瞳を細めた彼の唇が、そっと俺の手の甲に触れる。見せつけるみたいにリップ音を鳴らしてから、再びこちらを見つめ微笑んだ。
……バアルさんが、俺の好きな人が若返っている。目元を飾る色っぽいシワも、渋くて男らしい髭も一切ない。ぴっちぴちなお兄さんになっていらっしゃる。いつも通りご一緒に、たったひと晩眠っていた内に。
「ああ、申し訳ございません……可憐な貴方様にひと目で心を奪われ、衝動の赴くままに可愛らしい御手を握ってしまい……私としたことが、礼節を欠いてしまいました」
「ひぇ……」
形のいい眉を申し訳無さそうに下げ、つらつらと述べたものの、悪びれた様子はないみたいだ。
なんせ、離す気配がない。それどころか、もうすでにしなやかな指を絡めていらっしゃる。思いっきり恋人繋ぎで、しっかりぎゅっと握っていらっしゃる。
とはいえ、若返る前の彼に、バアルさんにゾッコンな俺だ。
たかが見た目が、渋くてカッコいい大人な4、50代から、20代くらいのカッコよくて色っぽいお兄さんに変ったくらい、なんてことはない。好きな人から手を握ってもらえているんだ、嬉しいに決まっている。
「あ、いえ……その、嬉しい、です……スゴく」
「誠でございますか? では、このまま手を繋がさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「は、はい……勿論……」
若いから、だろうな。ぱぁっと瞳を輝かせた彼の笑顔が、何だか幼く見える。かわいい。新鮮だ。
いや、まぁ、うっきうきだったり、はしゃいだりしている普段の大人なバアルさんも、スゴくかわいいんだけどさ。
「……あっ」
「いかがなさいましたか?」
嬉しくて仕方がない熱烈なアプローチに、すっかり頭の中がお花まみれになってしまっていた。一番肝心なことを確認し忘れているじゃないか。
「その……貴方は、バアルさん……なんですよね?」
見た目や行動から考えても、バアルさんだってのは確定的に明らかではある。あるんだけれども、一応ご本人に確認は取っておいた方がいいだろう。
「ええっ、貴方様のバアルですっ」
すぐさま答えは返ってきた。花が咲くような満面の笑みと弾んだ声と共に。
でしょうね、と納得してからすぐに浮かぶ。ちょっぴり聞くのが怖いし、返答次第では寂しくなってしまう疑問が。けれども、現状を明らかにする為には、尋ねるより他はなかった。
「……でも、俺のことは覚えていない……それで、有ってますか?」
途端に眩しい笑顔に影が落ちる。見る見るうちにハの字になってしまった眉と一緒に触覚がへにょんと下がり、半透明の羽がしょぼしょぼと縮んだ。
「……ええ、左様でございます」
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