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知りたくなかった寂しさ
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青い石造りで出来た、ファンタジーなお話に出てきそうな立派なお城。国の、円形に広がる広大な城下町の真ん中に堂々と立つお城。その本棟から、長い廊下を渡った先の別棟。そこにある貴賓室の一つに俺は、俺達は住んでいる。
中世ヨーロッパな貴族の方々が似合う、気品あふれる室内。高い天井には青い水晶で出来たシャンデリア、床一面には繊細な模様が描かれた絨毯。奥で構えるキングサイズよりも大きなベッドの側にある扉の先には、広々としたバスルームまで備えつけられている。
そんな、二人でも十分過ぎるほどの快適空間だ……俺一人じゃ、寂しすぎる。
至るところに上品な銀の装飾が施された、この大きなテーブルも。座り心地抜群の広いソファーも、何もかも。
「……バアルさん」
呼んでも返ってこない。いつもなら、すぐに返ってくる穏やかな低音が。俺の名前を嬉しそうに紡いでくれる、彼の声が聞こえない。
それでも、呼ばずにはいられなくて、少しカサついた口をまた開く。
「……バアル」
当たり前だけど、やっぱり返ってこない。俺の側に、貴方が居ない。
あの柔らかい微笑みを見ることが出来ない。あの長くて引き締まった腕で、優しく抱き締めてもらえない。
あの大きくて温かい手のひらで、頭を、背中を撫でてもらえない。鮮やかな緑の瞳に見つめられながら、キスしてもらえない。
それが、こんなにも寂しいだなんて。ただでさえ、不安で仕方がない心が、こんなにも張り裂けそうになるなんて。
「……知りたく、なかったなぁ……」
ぽつんとこぼれた我儘な呟き。小さく、か細いそれは誰に聞かれることもなく、一人っきりの静かな室内に溶けていった。
それは、少し前のこと。いつものように朝の挨拶を彼と交わし、今日も二人一緒に穏やかな一日を過ごすもんだと、信じて疑わなかった時のことだ。
中世ヨーロッパな貴族の方々が似合う、気品あふれる室内。高い天井には青い水晶で出来たシャンデリア、床一面には繊細な模様が描かれた絨毯。奥で構えるキングサイズよりも大きなベッドの側にある扉の先には、広々としたバスルームまで備えつけられている。
そんな、二人でも十分過ぎるほどの快適空間だ……俺一人じゃ、寂しすぎる。
至るところに上品な銀の装飾が施された、この大きなテーブルも。座り心地抜群の広いソファーも、何もかも。
「……バアルさん」
呼んでも返ってこない。いつもなら、すぐに返ってくる穏やかな低音が。俺の名前を嬉しそうに紡いでくれる、彼の声が聞こえない。
それでも、呼ばずにはいられなくて、少しカサついた口をまた開く。
「……バアル」
当たり前だけど、やっぱり返ってこない。俺の側に、貴方が居ない。
あの柔らかい微笑みを見ることが出来ない。あの長くて引き締まった腕で、優しく抱き締めてもらえない。
あの大きくて温かい手のひらで、頭を、背中を撫でてもらえない。鮮やかな緑の瞳に見つめられながら、キスしてもらえない。
それが、こんなにも寂しいだなんて。ただでさえ、不安で仕方がない心が、こんなにも張り裂けそうになるなんて。
「……知りたく、なかったなぁ……」
ぽつんとこぼれた我儘な呟き。小さく、か細いそれは誰に聞かれることもなく、一人っきりの静かな室内に溶けていった。
それは、少し前のこと。いつものように朝の挨拶を彼と交わし、今日も二人一緒に穏やかな一日を過ごすもんだと、信じて疑わなかった時のことだ。
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