間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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★ 残ったのは、単純明快な欲求だけ

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「……ぅ……でもぉ……」

 ぐうの音の代わりに、駄々っ子のような声を返してしまっていた。畳み掛けるように彼が囁く。

「もっと他に、私にして欲しいことがあるのではございませんか?」

 今度は目尻に、頬に優しく触れてくれた唇。薄く開いて紡がれた、切なく滲んだその声が俺の背中を優しく押した。

「……アオイ、どうか素直なお気持ちを聞かせて下さい」

「……っ……きたい……」

 もう、限界だった。ぽろりとこぼしてしまったホントの望みに、形のいい唇が艷やかに微笑む。

「もう一度、仰って頂けないでしょうか」

「イきたい……イきたいです……お願い、バアル……イかせて……いっぱい俺のこと、気持ちよくして……」

 一回こぼしてしまえば、後は崩れ落ちるみたいにボロボロと口にしてしまっていた。

「畏まりました……貴方様のお望みのままに」

 恭しく取られ、手の甲に落とされた誓いのキス。その紳士的な態度とは裏腹で、容赦がなかった。俺を追い詰める手の動きは。

「あぁっ……」

 待ち望んでいた確かな刺激。痺れるような快感が身体を頭の奥底まで焦がし、喜びに濡れた声が口から漏れてしまう。

「イくッ……イく、イく、イく…………ひぅっ……あ、んぅ……」

 あっという間だった。腹だけじゃなく、胸元にまで勢いよく飛び散らさせてしまっていた。指の腹で裏筋ばかりをぐりぐり擦られながら、二本の指でつつくように前立腺をピンポイントで責められて。

 バカになったみたいに、同じ言葉を繰り返していた口は今、短い呼吸だけを繰り返す。開いたまま、はっ……はっ……はっ……と舌をたらりと伸ばして。まるで、というか……犬だ。もはや。

「……いっぱいお出しになられましたね」

 良く出来ましたね、と褒めてくれる唇が、額に、目尻に、頬にと順番に触れてくれる。

「ですが……まだまだ足りないでしょう? 斯様にも元気よく、勃起なさっておりますものね……」

 そんな、まさか……と視線を落とす。

 彼の言う通りだった。溜まりに溜まっていた熱を、これでもかと吐き出したつもりだったのに。彼の手の中に収まっている俺のものは、びくびくと震えながらもしっかりと硬さを保ってしまっている。

「あ……ウソ……」

「大変嬉しく存じます……斯様なまでに昂ぶり続けてしまうほど、感じて下さっていらっしゃったのですね……」

 蕩けるような笑みを浮かべ、再び彼が指を動かす。

「ひぅ……あ、あ、バアルさ……」

 ぐちゅ、ぐちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ……といやらしい音と共にもらたされる激しい快感。つま先から頭の芯まで一気に駆け巡った感覚に、何で? どうして? と浮かんでいた疑問はあっという間に吹き飛ばされた。

 残ったのは、単純明快な欲求だけだ。もっと気持ちよくなりたいと、また早くイきたいの二つだけ。

「大丈夫ですよ……もう、我慢して頂かなくていいのです……貴方様はただただ気持ちよさだけを感じて下されば、それで……」

 見透かされているのかもしれない。いや、見透かされているんだろう。煌めく緑の瞳をうっとりと細めた彼が優しく言葉で、与えてくれる心地よさで俺を導いていく。

 さっきよりも早いストロークで、カリ首に向かって上下にシコられながら、お尻の穴を解される。目が眩むような快感に、再び奥底から燃えるような感覚が込み上げてきた。

「ぁ……また、くる……あっ、うぁ……だ、めぇ……また、きちゃう……」

 自分で言ったくせに、意外だな……と熱に浮かされた頭でぼんやり思う。まだ建前を口にするくらいの余力は残っていたらしい。

「駄目……ではなく、気持ちいいのでしょう? 違いますか?」

 バレバレな俺の訴えは、またしても彼にあっさりと見破られた。二本の指が的確に俺の前立腺をとちゅっと突き、指の腹がトロトロ漏らしっぱなしの先端をくりくり撫でる。俺の本音を引き出さんとするかのごとく。

「は、あぁっ……だめじゃ、ない……です……っ気持ちい、です……バアルさんに、触られるとこ……んっ、全部……スゴく、気持ちいい……」

「いい子ですね……素直で愛らしい私のアオイ……もっと、もっと、ご褒美をあげましょうね……」
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