240 / 466
いつも以上に甘い朝
しおりを挟む
何度目だろうと心臓に悪い。好きな人と共に迎える朝は。
しっかり閉じた瞼の裏からでも感じる光。その眩しさに観念して渋々目を開ければ、視界一面に広がるキレイに浮き出た鎖骨のライン。さらには緩んだ白いシャツの襟元から覗く、男らしく盛り上がった分厚い胸板っていうカッコいいの暴力。
俺を包み込む腕の中から身を捩り、見上げたら見上げたで、少し伸びて渋さを増した白い髭が素敵な彫りの深い顔。そのトロリと緩んだ微笑みに迎えられ、愛おしそうに細められた緑の瞳とかち合うだけじゃない。
「おはようございます、アオイ様」
柔らかい低音で名前を呼んでもらえ、大きな手で頬を撫でられながら、緩やかな弧を描いた唇からおはようの挨拶をいただいてしまうんだ。こんなの、ときめかない訳がない。
「ん…………お、おはようございます……バアルさん」
軽く触れ合うだけっていっても、キスはキスだ。やっぱり寝起きの頭には刺激が強過ぎる。ちゃんと気をしっかりもたないと、うっかり健全な男としての反応を示してしまいそうだ。朝っぱらから。
そんな、一気に顔へと熱が集中してしまった俺とは違い、そもそもの原因たる彼は余裕綽々だ。上機嫌そうに額の触覚を揺らし、優しい目元にかかった艷やかな白い髪をサラリと耳へ流している。色っぽい。お陰でますます心臓がドンドコ踊り始めてしまった。
軽く深呼吸して息を、気持ちを整えてから、俺を待っててくれている彼にお返しをすべく滑らかな白い頬に手を添える。
……いかんいかん、ただでさえ緩みきっている頬が、ますますだらしなく緩みそうになってしまった。スラリと伸びた長身を正し、期待に満ちた眼差しで見つめる彼がかわいくて。
これ以上見つめ合っているとマズいな……お返しすら、まともに出来なくなってしまいそうだ。吸い込まれてしまいそうな瞳の煌めきに後ろ髪を引かれるけれど目を閉じて、柔らかい唇に自分のものを重ねる。
以前はただ押し付けるだけの、拙いものしか出来なかった俺もそこそこ上達したとは思う。ただ、唯一のお相手である彼の評価が極甘なので、多分としか言いようがないんだけどさ。
触れ合う部分からじんわりと伝わってくる大好きな温もりを、軽く食んでから口を離す。目を開けた瞬間、息を呑んだ。うっとり細められた、若葉よりも鮮やかな緑の瞳に魅入られて。
「……お上手でしたよ」
「ひゃい……ありがとうごじゃいまふ……」
今日も今日とてS判定をいただけた俺の言語機能は、すっかり溶けてしまっていた。ギリギリ人語を保ってはいるものの。
なんなら、全身の筋肉も溶けたのかもしれない。ぐったりと彼の首筋に顔を埋める形で、引き締まったお身体に縋りついてしまったんだからな。
……俺だって出来ることならバアルさんみたく、スマートに交わしたい。交わしたいんだが、やっぱりムリだ。
淡い光を帯びた優しい眼差しとかち合うだけで、吐息が触れ合う距離にバアルさんが、好きな人がいるんだっていう事実だけで、おかしくなってしまうんだ。幸せ過ぎて、ただでさえポンコツな脳みそがますますダメになってしまうんだ。
残念なことに、恒例になりつつある一人反省会。特にこれといった実りのない会を絶賛開催中な俺の背中を、大きな手がゆったりと行き交っている。
……まぁ、また明日頑張ればいいか。千里の道も一歩からって言うしさ。ちょっとずつでも、カッコいいって思ってもらえるようになれれば、それで……
甘やかすような優しい手つきに、単純な俺の思考回路はどうでもいい会なんざあっさりぶん投げ、心地よさに溺れていく。いつものパターンだ。いつも通り、彼の腕の中でまったりとした朝のひと時を過ごす……ハズだったんだが……
「愛しておりますよ……私のアオイ」
「ひぇ……」
……どうしたんだろう。今朝の彼は、いつも以上に心臓に悪過ぎる。
しっかり閉じた瞼の裏からでも感じる光。その眩しさに観念して渋々目を開ければ、視界一面に広がるキレイに浮き出た鎖骨のライン。さらには緩んだ白いシャツの襟元から覗く、男らしく盛り上がった分厚い胸板っていうカッコいいの暴力。
俺を包み込む腕の中から身を捩り、見上げたら見上げたで、少し伸びて渋さを増した白い髭が素敵な彫りの深い顔。そのトロリと緩んだ微笑みに迎えられ、愛おしそうに細められた緑の瞳とかち合うだけじゃない。
「おはようございます、アオイ様」
柔らかい低音で名前を呼んでもらえ、大きな手で頬を撫でられながら、緩やかな弧を描いた唇からおはようの挨拶をいただいてしまうんだ。こんなの、ときめかない訳がない。
「ん…………お、おはようございます……バアルさん」
軽く触れ合うだけっていっても、キスはキスだ。やっぱり寝起きの頭には刺激が強過ぎる。ちゃんと気をしっかりもたないと、うっかり健全な男としての反応を示してしまいそうだ。朝っぱらから。
そんな、一気に顔へと熱が集中してしまった俺とは違い、そもそもの原因たる彼は余裕綽々だ。上機嫌そうに額の触覚を揺らし、優しい目元にかかった艷やかな白い髪をサラリと耳へ流している。色っぽい。お陰でますます心臓がドンドコ踊り始めてしまった。
軽く深呼吸して息を、気持ちを整えてから、俺を待っててくれている彼にお返しをすべく滑らかな白い頬に手を添える。
……いかんいかん、ただでさえ緩みきっている頬が、ますますだらしなく緩みそうになってしまった。スラリと伸びた長身を正し、期待に満ちた眼差しで見つめる彼がかわいくて。
これ以上見つめ合っているとマズいな……お返しすら、まともに出来なくなってしまいそうだ。吸い込まれてしまいそうな瞳の煌めきに後ろ髪を引かれるけれど目を閉じて、柔らかい唇に自分のものを重ねる。
以前はただ押し付けるだけの、拙いものしか出来なかった俺もそこそこ上達したとは思う。ただ、唯一のお相手である彼の評価が極甘なので、多分としか言いようがないんだけどさ。
触れ合う部分からじんわりと伝わってくる大好きな温もりを、軽く食んでから口を離す。目を開けた瞬間、息を呑んだ。うっとり細められた、若葉よりも鮮やかな緑の瞳に魅入られて。
「……お上手でしたよ」
「ひゃい……ありがとうごじゃいまふ……」
今日も今日とてS判定をいただけた俺の言語機能は、すっかり溶けてしまっていた。ギリギリ人語を保ってはいるものの。
なんなら、全身の筋肉も溶けたのかもしれない。ぐったりと彼の首筋に顔を埋める形で、引き締まったお身体に縋りついてしまったんだからな。
……俺だって出来ることならバアルさんみたく、スマートに交わしたい。交わしたいんだが、やっぱりムリだ。
淡い光を帯びた優しい眼差しとかち合うだけで、吐息が触れ合う距離にバアルさんが、好きな人がいるんだっていう事実だけで、おかしくなってしまうんだ。幸せ過ぎて、ただでさえポンコツな脳みそがますますダメになってしまうんだ。
残念なことに、恒例になりつつある一人反省会。特にこれといった実りのない会を絶賛開催中な俺の背中を、大きな手がゆったりと行き交っている。
……まぁ、また明日頑張ればいいか。千里の道も一歩からって言うしさ。ちょっとずつでも、カッコいいって思ってもらえるようになれれば、それで……
甘やかすような優しい手つきに、単純な俺の思考回路はどうでもいい会なんざあっさりぶん投げ、心地よさに溺れていく。いつものパターンだ。いつも通り、彼の腕の中でまったりとした朝のひと時を過ごす……ハズだったんだが……
「愛しておりますよ……私のアオイ」
「ひぇ……」
……どうしたんだろう。今朝の彼は、いつも以上に心臓に悪過ぎる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
306
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる