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もっとスマートに決めるハズだったのに
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グリムさんとクロウさんに手を振って、ヨミ様から「次は、バッチリ決めるからな! 覚悟しておくのだぞ?」と満面の笑みで謎の宣言をされ、気がつけばコルテの姿も消えていた。
術で仕切っていた壁も消え、元通りになった広い室内には俺とバアルさんの二人っきり。いつもと同じハズなのに、何でだろう……さっきから胸が高鳴りまくって仕方がない。このままだと壊れてしまいそうだ。
「あ、あの……取り敢えず、座りましょうか」
「ええ」
どうにかこうにかふり絞った提案に、穏やかな笑みが応えてくれた。俺の腰に回していた筋肉質な腕をするりと下ろし、ごく自然に俺が提げた紙袋を持ってくれる。
少しだけ離れてしまった距離に、遠のいてしまった温もりに、心の隅っこから我儘な寂しさが顔を出してしまった。その心遣いは嬉しいんだけどさ。
「アオイ様」
嬉しさを隠しきれていない声が俺を呼ぶ。やっぱりバアルさんには、何でもお見通しらしい。釣られて顔を上げれば、柔らかく微笑む彼が手を差し出していたんだ。
「は、はいっ」
つい、勢いよく乗せてしまったせいだ。形のいい唇に浮かんでいた笑みがますます深くなっていく。俺を見つめる淡い光を帯びた眼差しが何だかとても擽ったくて、つい逸してしまっていた。
クスクスと静かに笑いながら、ゆっくりと俺の手を引き歩き出す。テーブルの上へと俺が渡したプレゼントを大事そうに置き、隣に紙袋を添えたかと思えば、何故かソファーの真ん中へ静かに腰掛けた。
「さあどうぞ、こちらへ……」
疑問は速攻で解決した。両腕を広げ、柔らかく瞳を細めたバアルさんが俺を誘う。腰の辺りがぞくぞくする甘い声で。
「ひゃい……し、失礼しまふ……」
魅力的過ぎる歓迎に、はしゃぎっぱなしの鼓動だけでなく、口までおかしくなってしまっていた。
ふらふらと吸い寄せられるように、お膝の上にお邪魔させてもらった俺を、温かい彼の腕がすっぽりと包み込む。
……マズい、ヤバい、ホントに壊れそうだ。
ふわりと香る優しいハーブの匂いに、吐息が触れ合いそうなくらいに近い彫りの深い顔に、より一層激しくなった心音が全身に木霊していく。
「ふぁ……」
不意に、細く長い指がするりと俺の指に絡んで、繋がれた。それだけで、変に上擦った声を漏らしてしまったせいだ。どこか艷やかに微笑む唇がクスリと笑みをこぼす。楽しくって仕方がないって風に。
恥ずかしい、何か悔しい。でも……それ以上に滅茶苦茶嬉しい。あー……もう、気持ちがひっちゃかめっちゃかだ。
こんなハズじゃなかったのに。今日は、俺がバアルさんをドキドキさせるつもりだったのに。スマートにサプライズを決めて、もっと俺のこと……好きになってもらうつもりだったのに。
今のところ、情けない姿しか晒せていないんだが? 彼からあふれる大人の色気とカッコよさに返り討ちにされて。いや、いつも通りっちゃいつも通りですけどね。
何とか巻き返せないものかと頭を捻っていた俺に、降って湧いたようなチャンスがもたらされる。彼からのお願いという形で。
「アオイ様、先程のガトーショコラ……どうか、貴方様の手づから食べさせては頂けないでしょうか?」
水晶のように透き通った羽をはためかせながら、宝石のように煌めく緑の瞳が強請るように俺を見つめている。
「も、勿論、やります! やらせていただきます!」
柔らかい低音が囁やくお願いに、当然俺は飛びついた。それどころか、繋いだ手に思いっきり力を込めてしまっていたんだ。
術で仕切っていた壁も消え、元通りになった広い室内には俺とバアルさんの二人っきり。いつもと同じハズなのに、何でだろう……さっきから胸が高鳴りまくって仕方がない。このままだと壊れてしまいそうだ。
「あ、あの……取り敢えず、座りましょうか」
「ええ」
どうにかこうにかふり絞った提案に、穏やかな笑みが応えてくれた。俺の腰に回していた筋肉質な腕をするりと下ろし、ごく自然に俺が提げた紙袋を持ってくれる。
少しだけ離れてしまった距離に、遠のいてしまった温もりに、心の隅っこから我儘な寂しさが顔を出してしまった。その心遣いは嬉しいんだけどさ。
「アオイ様」
嬉しさを隠しきれていない声が俺を呼ぶ。やっぱりバアルさんには、何でもお見通しらしい。釣られて顔を上げれば、柔らかく微笑む彼が手を差し出していたんだ。
「は、はいっ」
つい、勢いよく乗せてしまったせいだ。形のいい唇に浮かんでいた笑みがますます深くなっていく。俺を見つめる淡い光を帯びた眼差しが何だかとても擽ったくて、つい逸してしまっていた。
クスクスと静かに笑いながら、ゆっくりと俺の手を引き歩き出す。テーブルの上へと俺が渡したプレゼントを大事そうに置き、隣に紙袋を添えたかと思えば、何故かソファーの真ん中へ静かに腰掛けた。
「さあどうぞ、こちらへ……」
疑問は速攻で解決した。両腕を広げ、柔らかく瞳を細めたバアルさんが俺を誘う。腰の辺りがぞくぞくする甘い声で。
「ひゃい……し、失礼しまふ……」
魅力的過ぎる歓迎に、はしゃぎっぱなしの鼓動だけでなく、口までおかしくなってしまっていた。
ふらふらと吸い寄せられるように、お膝の上にお邪魔させてもらった俺を、温かい彼の腕がすっぽりと包み込む。
……マズい、ヤバい、ホントに壊れそうだ。
ふわりと香る優しいハーブの匂いに、吐息が触れ合いそうなくらいに近い彫りの深い顔に、より一層激しくなった心音が全身に木霊していく。
「ふぁ……」
不意に、細く長い指がするりと俺の指に絡んで、繋がれた。それだけで、変に上擦った声を漏らしてしまったせいだ。どこか艷やかに微笑む唇がクスリと笑みをこぼす。楽しくって仕方がないって風に。
恥ずかしい、何か悔しい。でも……それ以上に滅茶苦茶嬉しい。あー……もう、気持ちがひっちゃかめっちゃかだ。
こんなハズじゃなかったのに。今日は、俺がバアルさんをドキドキさせるつもりだったのに。スマートにサプライズを決めて、もっと俺のこと……好きになってもらうつもりだったのに。
今のところ、情けない姿しか晒せていないんだが? 彼からあふれる大人の色気とカッコよさに返り討ちにされて。いや、いつも通りっちゃいつも通りですけどね。
何とか巻き返せないものかと頭を捻っていた俺に、降って湧いたようなチャンスがもたらされる。彼からのお願いという形で。
「アオイ様、先程のガトーショコラ……どうか、貴方様の手づから食べさせては頂けないでしょうか?」
水晶のように透き通った羽をはためかせながら、宝石のように煌めく緑の瞳が強請るように俺を見つめている。
「も、勿論、やります! やらせていただきます!」
柔らかい低音が囁やくお願いに、当然俺は飛びついた。それどころか、繋いだ手に思いっきり力を込めてしまっていたんだ。
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