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★ バアルさんを受け入れられるようになりたい

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 一回出来たから、という自信のお陰だろうか。昨日はあんなに苦戦したっていうのに。ちょっと解してもらっただけで、彼の長い指をするりと受け入れることが出来たんだ。

 また一歩、進むことが出来た嬉しさが、俺の胸を満たしていく。たっぷりと塗り拡げられた、潤滑油のぬめぬめした感触にはまだ慣れない。仕方がないとはいえ、自分から彼に向かって男として大事な部分を、さらけ出しまくっている恥ずかしさも薄れないんだけどさ。

「……お加減はいかがでしょうか?」

 痛みは勿論だけど、特に違和感も感じない。察しのいいバアルさんのことだから、俺の反応から十分伝わっているはずなんだけど。優しい彼は心配そうに凛々しい眉を下げながら、俺の手をゆるゆる撫でてくれている。

 ……嬉しいな。なんだか、とても大事にしてもらえてるみたいだ。

「……はい、大丈夫ですよ」

 そう頷いた途端に綻んだ、上品な髭が素敵な口元に。ただでさえ、ときめいていた胸の奥がきゅっと締めつけられる。

 大胆に股をおっ広げている体勢だからってのもあるんだろう。柔らかい眼差しを受け続けるのが堪えられなくて、自然と顔をふいっと背けてしまっていた。

 まぁ、すぐに自分から戻すことになったんだけどな。だって、スゴく寂しそうな声で俺のこと呼ぶんだぞ? それも弱々しい力で手を握りながらさ。そんなこと好きな人からされちゃったら……顔ぐらい、いくらでも見せますよってなるだろう?

「あー……えっと、前立腺? 探すんでしたっけ?」

「はい、左様でございます」

 上機嫌に触覚を揺らしている彼が小さく頷く。穏やかに緩んでいた表情が少し引き締まった様子に俺も、無意識のうちに身体に力を込めてしまっていた。

「では……指を動かさせて頂いても宜しいでしょうか?」

「……はい、お願いします」

 俺を安心させようとしてくれているんだろう。そう俺が返しても、すぐには動かさなかった。繋いでいた手を離し、代わりにすっかり縮こまってしまっている俺のものを優しく包み込んでくれる。

 単純な俺は、温かい手のひらがゆるゆると上下に扱いて与えてくれる心地よさに、あっさり意識を向かされてしまって。半開きの口から上ずった声を漏らしてしまっていたんだ。

「あっ……あ、バアルさん……ふぁ……」

「気持ちよくなって頂けて何よりです……このまま少し動かしていきますね……何かありましたら、すぐに仰って下さい」

 心地よさに飲まれかけている俺には、返事をする余裕なんかありやしない。それでも懸命に何度も頷く俺を見て、微笑みかけてくれた彼の指が、俺の中をまさぐるように動き始める。

 完全に元気を取り戻しただけじゃない。彼の綺麗な手を濡らしてしまうほど、すでに俺は感じてしまっていた。だからかもしれない。これといった違和感を感じることなく、その動きを受け入れることが出来たんだ。

 正直、しばらくは変な感じしかしなかった。バアルさんの指なのに、彼から抱いてもらう練習をしているのに……ただ、ぬるぬるしてるなって感覚しかなかったんだ。でも。

「っあ!?……や、何か……今の、バアルさん……」

「ああ、安心致しました……此方が……貴方様の前立腺でございますね」

 嬉しそうに瞳を細めた彼の指先が、少し掠っただけでぞくぞくしてしまった場所を優しく撫でる。

 俺の身体はおかしくなってしまったんだろうか。たったそれだけの刺激なのに、全身が勝手にびくびく震えてしまったんだ。

「なに、これ……あっ、あ、バアル……バアルっ」

「はい、貴方様のバアルはここに……」

 ちょっとだけ怖かった。

 いや嘘だ。滅茶苦茶怖かった……気持ちよすぎて、怖かったんだ。

 いつもは背筋だけに走る、あのぞくぞくした感覚が、頭の天辺や手足の先まで広がっていって。俺の身体なのに、俺の身体じゃなくなった気がして。びっくりしちゃったんだと思う。

 おしりの穴に指を突っ込まれてるのに、こんなに気持ちよくなれるなんて思わなかったから……いや、バアルさんのことを、信じてない訳じゃなかったんだけどさ。

 思わず伸ばしていた手を優しく握ってもらえ、触れるだけのキスを送ってくれる。額や頬、滲んでいた目尻に口へと俺が落ち着きを取り戻すまで、何度も、そっと。

「ん……ごめんなさい、ありがとうございます……もう、大丈夫ですよ……」

「……アオイ様」

 ……嬉しかった。だって、静かに俺の名前を呼ぶ彼の表情にはあからさまに、心配ですと書かれていたからさ。

 だから……ますます頑張ろうって。彼を受け入れられるようになりたいって思ったんだ。

「お願いします……続き、してください……俺、練習して、もっとバアルさんと愛し合えるようになりたいんです……だから……」

 宝石みたいに煌めく緑の瞳が、僅かに大きく見開かれ、ゆるりと細められる。繋いだ手に力がこもった。喜びを隠しきれていない唇が俺にそっと重なった。

「また、怖いと思われた時は、すぐに仰って下さいね? アオイ様が心地よく感じて頂けないのならば、何も意味はないのですから」

「はい、バアルさん……」

 あふれた気持ちが、自然とこぼれ落ちてしまったんだと思う。熱心に見つめる眼差しから、重なっている手のひらの温かさから、彼が俺のことを思ってくれている柔らかい気持ちが伝わってきたから。

「好きです……大好き……」

「……私も、愛しております」

 俺達の距離がなくなって、ゆっくり離れていってしまったのを合図に、再び指が動き出す。

 バアルさんは、じっと俺の反応を見つめながら……くりくりと捏ねるように、前立腺を刺激し始めたんだ。

「ひぁっ……すご、あっ、あっ、んぁっ……」

「……大丈夫ですか?」

「んぅ……大丈夫、です……あっ、気持ちいい……あぁっ、あ……っ……」

 気がつけば、俺は夢中で腰を揺らしてしまっていた。

 新たな気持ちよさを追うことに、すっかり没頭してしまっていたんだ。

 ぞくぞくしてしまう場所に彼の指が当たるように、恥ずかしげもなくヘコヘコと振りたくって。

「斯様に感じて頂けて……大変嬉しく存じます。此方も触らせて頂きますね……」

 もう、堪えられなかった。

 白い頬をほんのり染めて微笑む彼に、びくびく震える俺のものをそっと握られ、撫で擦られて。あっさり俺は、限界を迎えてしまったんだ。

「うぁっ……あ、あ、あ……ッ……」

 激しく撒き散らしてしまったハズなのに……まだ、止まらない。

 竿に絡んだ細く長い指から、ゆったりシコシコされる度に、先端からとろとろとこぼれさせてしまう。

 ずっと甘くイきっぱなしで。頭がくらくらしている俺を、うっとり見つめる彼が更に追い打ちをかけてくる。

 裏筋に指を添えて、すりすりと優しく促されて。また俺は、腰をガクガク震わせながら最後の最後まで絞り出されてしまったんだ。

 声にならない悲鳴を上げていた口が、柔らかい彼の唇によって塞がれる。

 甘やかすような、労るような口づけが与えてくれる心地よさに身を委ねる。徐々に鼓動が落ち着いていき、だんだんと瞼が重くなっていった。
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