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★ どうやら、俺は気持ちよくなっているらしい
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なんだか、最初の時よりも早くなっている気がする。あのぞくぞくした感覚が、湧き上がってくるのが。
多分、俺が自覚したからなんだろう。今、彼にしてもらっていることは、マッサージじゃないんだって、そういう行為なんだって。
「……んっ……あ、あの……ホントに俺、変な顔になってません?」
改めて、してもらう段になって俺は、彼から「どちらに致しますか?」と問われた。このまま向き合った形でしてもらうか、彼の胸に背中を預けてしてもらうかを。
悩んだ末に俺は、キスをしてもらいやすいか否かで決めてしまった。その結果、常に彼から顔を見られてしまうことになるのも忘れて。
白く長い指先が、優しく擽るみたいに首の後ろを撫でてくれる。頬や目尻に触れてくれていた薄い唇が、ふわりと綻んで、俺に微笑みかけてくれる。
「……ええ、大変お可愛らしいままでございますよ」
「かっ!? …………ぐ、具体的には……ぁっ……どんな感じ、とか……」
「……可憐なお顔を真っ赤になさって、美しく輝く琥珀色の瞳を綺麗な涙で滲ませ、小さく愛らしい唇からは……」
「ん…………ごめんなさい、やっぱナシで……」
途端につらつらと饒舌になってしまった口を、俺は大胆にも自分の口で塞いで止めていた。
柔らかい彼の唇に、軽く押しつけて離せば「左様でございますか……」と心なしか、しょんぼり触覚を下げた彼が、俺の首元に顔を寄せる。
自分で聞いたくせに悪かったな……
後悔していた俺の身体を、今まで以上に強いあの感覚が襲った。
首の辺りを温かく濡れた何かが這っている。軽いリップ音がする度に、淡い感覚が俺を襲う。びくんっ、びくんっと勝手に全身が跳ねてしまう。
「あぁ……んっ……ば、バアルさ……」
「……いかがなさいましたか?」
「……ま、まさかとは思いますけど……舐めてたり、とか……」
「はい。お嫌でしたか?」
首元から顔を離し、きょとんと俺を見つめる間も、手の動きが止まることはない。腰の辺りから背骨に沿ってゆったりと下から上に、上から下へと触れ続けてくれている。
先程、彼から教えてもらったことにより、俺は分かってしまっていた。ぞくぞくしたり、身体がびくびくしたりするのは、気持ちがよくなっているんだと。
つまり、俺は気持ちがよかったのだ。バアルさんに舐めてもらえて、感じていたのだ。なのに、嫌だったなんて、言える訳がない。
「い、いえ……大丈夫……です……」
かといって、ヘタレな俺が、ちょっと気持ちがよかったです……だなんて、素直に言えるハズもなかった。その結果が、先の曖昧な回答である。
ただ、俺の考えていることなんて、察しのいい彼には筒抜けなのか「では……続けさせて頂きますね」と微笑む彼の触覚は、どこか嬉しそうにゆらゆらと揺れていたんだ。
多分、俺が自覚したからなんだろう。今、彼にしてもらっていることは、マッサージじゃないんだって、そういう行為なんだって。
「……んっ……あ、あの……ホントに俺、変な顔になってません?」
改めて、してもらう段になって俺は、彼から「どちらに致しますか?」と問われた。このまま向き合った形でしてもらうか、彼の胸に背中を預けてしてもらうかを。
悩んだ末に俺は、キスをしてもらいやすいか否かで決めてしまった。その結果、常に彼から顔を見られてしまうことになるのも忘れて。
白く長い指先が、優しく擽るみたいに首の後ろを撫でてくれる。頬や目尻に触れてくれていた薄い唇が、ふわりと綻んで、俺に微笑みかけてくれる。
「……ええ、大変お可愛らしいままでございますよ」
「かっ!? …………ぐ、具体的には……ぁっ……どんな感じ、とか……」
「……可憐なお顔を真っ赤になさって、美しく輝く琥珀色の瞳を綺麗な涙で滲ませ、小さく愛らしい唇からは……」
「ん…………ごめんなさい、やっぱナシで……」
途端につらつらと饒舌になってしまった口を、俺は大胆にも自分の口で塞いで止めていた。
柔らかい彼の唇に、軽く押しつけて離せば「左様でございますか……」と心なしか、しょんぼり触覚を下げた彼が、俺の首元に顔を寄せる。
自分で聞いたくせに悪かったな……
後悔していた俺の身体を、今まで以上に強いあの感覚が襲った。
首の辺りを温かく濡れた何かが這っている。軽いリップ音がする度に、淡い感覚が俺を襲う。びくんっ、びくんっと勝手に全身が跳ねてしまう。
「あぁ……んっ……ば、バアルさ……」
「……いかがなさいましたか?」
「……ま、まさかとは思いますけど……舐めてたり、とか……」
「はい。お嫌でしたか?」
首元から顔を離し、きょとんと俺を見つめる間も、手の動きが止まることはない。腰の辺りから背骨に沿ってゆったりと下から上に、上から下へと触れ続けてくれている。
先程、彼から教えてもらったことにより、俺は分かってしまっていた。ぞくぞくしたり、身体がびくびくしたりするのは、気持ちがよくなっているんだと。
つまり、俺は気持ちがよかったのだ。バアルさんに舐めてもらえて、感じていたのだ。なのに、嫌だったなんて、言える訳がない。
「い、いえ……大丈夫……です……」
かといって、ヘタレな俺が、ちょっと気持ちがよかったです……だなんて、素直に言えるハズもなかった。その結果が、先の曖昧な回答である。
ただ、俺の考えていることなんて、察しのいい彼には筒抜けなのか「では……続けさせて頂きますね」と微笑む彼の触覚は、どこか嬉しそうにゆらゆらと揺れていたんだ。
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