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俺だって、少しはバアルさんをドキドキさせてみたい、ときめかせてみたい
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嘘みたいだ。以前は、俺が緊張しすぎるからと、ハグの練習をしてもらっていたのが。
今は、すっかり普通になっている。それどころか、正直落ち着く。彼も当たり前のように、俺を腕の中に閉じ込め、膝の上へと抱き直してくれるもんだから余計に。
ふと見上げれば、いくつもの六角形のレンズで構成された、緑の瞳と視線が絡む。やっぱり、キレイだ……宝石みたいで。
ついつい、じっと見つめてしまっていても、優しい彼は口元を綻ばせたまま。俺の好きにさせてくれている。
おまけに背中をゆったり撫でてくれながら、形のいい唇で、額や頬に優しく触れてきてくれたんだ。最後には……その……く、口にも。
ハグは大分慣れてきたんだけど、やっぱりキスにはまだ慣れない。してもらえるとスゴく嬉しいし、バアルさんとするの……好きだけどさ。
触れてもらえた瞬間、顔まで一気に熱くなってしまうし、心臓は壊れそうなくらいに激しく高鳴ってしまうんだ。いや、まぁ……完全に慣れてしまうのも、それはそれでなんか嫌なんだけどさ。
指を絡めて繋いでいる手の感触を楽しむように、バアルさんは、やわやわ握っては、緩めてを繰り返している。その穏やかな微笑みには、いつも通り大人の余裕に満ちている。
彼から触れてもらえるだけで、緩みきっただらしのない顔を晒してしまう俺と違って。
俺にとっては、彼と一緒に経験するものが全て、初めてづくしな訳だから……仕方がないとはいえ、全く思うところがないって訳でもない。
…………俺だって、少しはバアルさんをドキドキさせたいし、ときめかせてみたい……
そんな、何とも無謀な願望を、心の隅っこの方で密かに抱いてはいるんだ。
実行に移す勇気と機会がないってだけでさ。しかし、思いがけずチャンスだけは、やってきたんだ。
「……アオイ様。宜しければ私めに……貴方様からのお返しを頂けますでしょうか?」
後ろにキッチリ撫でつけられた、オールバックの生え際から生えている触覚を、そわそわ揺らしている彼からの、思いも寄らないお願いによって。
「えっと、それって……俺から、その……バアルさんに……き、キスを?」
静かに小さく頷いてから、彼はそっと俺の様子を窺っている。半透明の羽をパタパタはためかせながら、緑の瞳をキラキラ輝かせながら。
一瞬浮かび上がってきそうになっていたヘタレた俺は、すぐさま引っ込んだ。彼から求められているという喜びによって。
……もし、俺が上手く出来たら……バアルさん…………ドキドキしてくれるかな? 俺に……ときめいてくれるかな?
胸の奥底から湧き上がってきた、いつもとは違う高揚感が、俺の背中をそっと押す。
いつもしてくれる彼に倣って、まずは額に口づけてみることにした。震えが伝わってしまわないように、そっと。
すると、すかさず俺より一回り大きな手が、頭を褒めるように撫でてくれた。良く出来ましたねと、言わんばかりに。
すっかり気を良くした俺は、ふわふわした気持ちのまま、彼の白い頬にも自分の唇を押し当ててみた。
今度もやっぱり彼は、よしよしと撫でてくれて「いい子ですね」と微笑んでくれる。
以前のように歯と歯をぶつけることなく、肝心の唇にちゃんと重ねられた時なんか、両手で包み込むように頬を撫でてくれてから「お上手でしたよ」と抱き締めてくれたんだ。
単純な俺は、舞い上がってしまっていた。彼に沢山褒めてもらえた喜びで心が満たされ、先程の思惑が頭から抜け落ちていることさえ、忘れてしまっていた。
俺にとっては至極重大な、バアルさんをドキドキさせたい、ときめかせてみたい! という目的を。
そして、そのまま二度目の眠りに落ちてしまっていたんだ。
背中をゆったり撫でてくれる、大きな手のひらの温もりを堪能しながら、心地のいい彼の腕の中で。
今は、すっかり普通になっている。それどころか、正直落ち着く。彼も当たり前のように、俺を腕の中に閉じ込め、膝の上へと抱き直してくれるもんだから余計に。
ふと見上げれば、いくつもの六角形のレンズで構成された、緑の瞳と視線が絡む。やっぱり、キレイだ……宝石みたいで。
ついつい、じっと見つめてしまっていても、優しい彼は口元を綻ばせたまま。俺の好きにさせてくれている。
おまけに背中をゆったり撫でてくれながら、形のいい唇で、額や頬に優しく触れてきてくれたんだ。最後には……その……く、口にも。
ハグは大分慣れてきたんだけど、やっぱりキスにはまだ慣れない。してもらえるとスゴく嬉しいし、バアルさんとするの……好きだけどさ。
触れてもらえた瞬間、顔まで一気に熱くなってしまうし、心臓は壊れそうなくらいに激しく高鳴ってしまうんだ。いや、まぁ……完全に慣れてしまうのも、それはそれでなんか嫌なんだけどさ。
指を絡めて繋いでいる手の感触を楽しむように、バアルさんは、やわやわ握っては、緩めてを繰り返している。その穏やかな微笑みには、いつも通り大人の余裕に満ちている。
彼から触れてもらえるだけで、緩みきっただらしのない顔を晒してしまう俺と違って。
俺にとっては、彼と一緒に経験するものが全て、初めてづくしな訳だから……仕方がないとはいえ、全く思うところがないって訳でもない。
…………俺だって、少しはバアルさんをドキドキさせたいし、ときめかせてみたい……
そんな、何とも無謀な願望を、心の隅っこの方で密かに抱いてはいるんだ。
実行に移す勇気と機会がないってだけでさ。しかし、思いがけずチャンスだけは、やってきたんだ。
「……アオイ様。宜しければ私めに……貴方様からのお返しを頂けますでしょうか?」
後ろにキッチリ撫でつけられた、オールバックの生え際から生えている触覚を、そわそわ揺らしている彼からの、思いも寄らないお願いによって。
「えっと、それって……俺から、その……バアルさんに……き、キスを?」
静かに小さく頷いてから、彼はそっと俺の様子を窺っている。半透明の羽をパタパタはためかせながら、緑の瞳をキラキラ輝かせながら。
一瞬浮かび上がってきそうになっていたヘタレた俺は、すぐさま引っ込んだ。彼から求められているという喜びによって。
……もし、俺が上手く出来たら……バアルさん…………ドキドキしてくれるかな? 俺に……ときめいてくれるかな?
胸の奥底から湧き上がってきた、いつもとは違う高揚感が、俺の背中をそっと押す。
いつもしてくれる彼に倣って、まずは額に口づけてみることにした。震えが伝わってしまわないように、そっと。
すると、すかさず俺より一回り大きな手が、頭を褒めるように撫でてくれた。良く出来ましたねと、言わんばかりに。
すっかり気を良くした俺は、ふわふわした気持ちのまま、彼の白い頬にも自分の唇を押し当ててみた。
今度もやっぱり彼は、よしよしと撫でてくれて「いい子ですね」と微笑んでくれる。
以前のように歯と歯をぶつけることなく、肝心の唇にちゃんと重ねられた時なんか、両手で包み込むように頬を撫でてくれてから「お上手でしたよ」と抱き締めてくれたんだ。
単純な俺は、舞い上がってしまっていた。彼に沢山褒めてもらえた喜びで心が満たされ、先程の思惑が頭から抜け落ちていることさえ、忘れてしまっていた。
俺にとっては至極重大な、バアルさんをドキドキさせたい、ときめかせてみたい! という目的を。
そして、そのまま二度目の眠りに落ちてしまっていたんだ。
背中をゆったり撫でてくれる、大きな手のひらの温もりを堪能しながら、心地のいい彼の腕の中で。
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