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初めて見る、バアルさんの寝顔
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早起きは三文の徳っていうけどさ、正直得した経験がなかったんだよな。俺の場合。
強いて言えば、今何時だろ? って端末見て、あーまだ後一時間寝れるわ、ラッキーって二度寝することくらいかな。
んで、うっかり寝過ごしかけて、慌てて起きるまでがセット。
まぁ、そもそも三文って、ごく僅かな金額らしいからさ。ちょっぴり得した気分にはなれてるから、間違ってはないんだよな。だったらさ。
……この光景は、一体何文の徳に……いや何百、何千両の徳になるっていうんだ?
珍しく、綺麗にパチリと開いた視界。映ったのは、いくつもの六角形のレンズで構成された複眼を、宝石みたいに綺麗な緑の瞳を固く閉じている彼。
少し伸びて、渋さを増した白い髭が似合う口元から、規則正しく静かな呼吸を繰り返している彼。
俺の……す、好きな人であるバアルさんの、無防備な寝顔が映っている。
朝まで腕枕をしてくれていただけでなく、俺が眠りにつくまで、いつものように撫でてくれていたんだろう。頭の後ろと背中を支えるように、俺より一回り大きな手が添えられている。
白く艷やかな髪は、キッチリと後ろへと撫でつけられているのではなく、緩んでサラサラ。無造作に、額や、目尻のカッコいいシワ、生え際から生えている触覚にかかっていた。
規則正しい寝息を立てているだけで、大人の男性の色気が漂いまくっている。
にも関わらず、シャツのボタンが、上から3つも外れてしまっているせいだ。白い肌に浮かぶ綺麗な鎖骨と逞しい胸板が、チラリどころかバッチリ見えてしまっている。目の保養過ぎて、逆に毒になりそう。
現に今、俺の心臓は、全力疾走でもしたのかってくらいにバクバクと乱れまくっているしさ。
それにしても珍しい……というか、初めてじゃないか? 俺が、彼の寝顔を見れるなんて。
何時から起きているのかは、ぐーすか寝ている俺には知る由もない。が、いつも決まって俺が目を覚ました時には、高鳴り過ぎて心臓に悪い、柔らかい微笑みと共に朝の挨拶をしてくれるんだけど。
でも、窓際のチェストにクッキーが入った包みの代わりに新しく、赤い……ポピーだっけ? 可愛らしい花が飾られているから、一度起きてはいたんだろうな。
ということは、無事お裾分けという名のお礼を受け取ってもらえたんだろう。元気に咲く鮮やかな赤い花に、胸がじんわりと温かくなる。
後で、バアルさんにも、お礼を言わないとな……
視線を戻せば飛び込んできた、大きな窓からこぼれる日差しに、ぼんやり照らされているバアルさん。健やかに眠る彼の姿に、自惚れてしまいそうになってしまう。俺に、心を許してくれているんじゃないかって。
…………ちょっとだけ、触っても……いいかな?
胸の内に湧いた、あまりにも魅力的で抗えない衝動。気持ちが浮き立つそれに背中を押され、気がつけば俺は、きめ細やかな白い頬に手を伸ばしてしまっていたんだ。
「……やっぱり、すべすべだ」
そっと指先で撫でれば、また触れたくなってしまう触り心地のいい肌に、何の気なしに口からぽろりと、素直な感想を漏らしてしまっていた。
幸い、長いまつ毛が僅かに震えただけで、彼の眠りを妨げてしまわずに済んだけど。あまりにも迂闊すぎるだろ。
少し間を置いてからもう一度、起こしてしまわないように慎重に彼に触れる。
意識が無くても、伝わるものなんだろうか。ゆるゆると頬を撫でる度に額の触覚が僅かに揺れ、背にある半透明の羽がぱたぱたとはためく。
目の前にある、普段のカッコいいバアルさんとは真逆の光景によって、あっという間に上書きされてしまっていた。
俺の胸を占めていた、悪いことをしているっていう気分が、ほっこりとした温かいものに。だから余計に、調子に乗ってしまったんだと思う。
…………俺からバアルさんに……き、キスしたことって、ない……よな。
不意に過ぎった考えを、何故か一切躊躇なく、実行に移そうとしていたんだからさ。
強いて言えば、今何時だろ? って端末見て、あーまだ後一時間寝れるわ、ラッキーって二度寝することくらいかな。
んで、うっかり寝過ごしかけて、慌てて起きるまでがセット。
まぁ、そもそも三文って、ごく僅かな金額らしいからさ。ちょっぴり得した気分にはなれてるから、間違ってはないんだよな。だったらさ。
……この光景は、一体何文の徳に……いや何百、何千両の徳になるっていうんだ?
珍しく、綺麗にパチリと開いた視界。映ったのは、いくつもの六角形のレンズで構成された複眼を、宝石みたいに綺麗な緑の瞳を固く閉じている彼。
少し伸びて、渋さを増した白い髭が似合う口元から、規則正しく静かな呼吸を繰り返している彼。
俺の……す、好きな人であるバアルさんの、無防備な寝顔が映っている。
朝まで腕枕をしてくれていただけでなく、俺が眠りにつくまで、いつものように撫でてくれていたんだろう。頭の後ろと背中を支えるように、俺より一回り大きな手が添えられている。
白く艷やかな髪は、キッチリと後ろへと撫でつけられているのではなく、緩んでサラサラ。無造作に、額や、目尻のカッコいいシワ、生え際から生えている触覚にかかっていた。
規則正しい寝息を立てているだけで、大人の男性の色気が漂いまくっている。
にも関わらず、シャツのボタンが、上から3つも外れてしまっているせいだ。白い肌に浮かぶ綺麗な鎖骨と逞しい胸板が、チラリどころかバッチリ見えてしまっている。目の保養過ぎて、逆に毒になりそう。
現に今、俺の心臓は、全力疾走でもしたのかってくらいにバクバクと乱れまくっているしさ。
それにしても珍しい……というか、初めてじゃないか? 俺が、彼の寝顔を見れるなんて。
何時から起きているのかは、ぐーすか寝ている俺には知る由もない。が、いつも決まって俺が目を覚ました時には、高鳴り過ぎて心臓に悪い、柔らかい微笑みと共に朝の挨拶をしてくれるんだけど。
でも、窓際のチェストにクッキーが入った包みの代わりに新しく、赤い……ポピーだっけ? 可愛らしい花が飾られているから、一度起きてはいたんだろうな。
ということは、無事お裾分けという名のお礼を受け取ってもらえたんだろう。元気に咲く鮮やかな赤い花に、胸がじんわりと温かくなる。
後で、バアルさんにも、お礼を言わないとな……
視線を戻せば飛び込んできた、大きな窓からこぼれる日差しに、ぼんやり照らされているバアルさん。健やかに眠る彼の姿に、自惚れてしまいそうになってしまう。俺に、心を許してくれているんじゃないかって。
…………ちょっとだけ、触っても……いいかな?
胸の内に湧いた、あまりにも魅力的で抗えない衝動。気持ちが浮き立つそれに背中を押され、気がつけば俺は、きめ細やかな白い頬に手を伸ばしてしまっていたんだ。
「……やっぱり、すべすべだ」
そっと指先で撫でれば、また触れたくなってしまう触り心地のいい肌に、何の気なしに口からぽろりと、素直な感想を漏らしてしまっていた。
幸い、長いまつ毛が僅かに震えただけで、彼の眠りを妨げてしまわずに済んだけど。あまりにも迂闊すぎるだろ。
少し間を置いてからもう一度、起こしてしまわないように慎重に彼に触れる。
意識が無くても、伝わるものなんだろうか。ゆるゆると頬を撫でる度に額の触覚が僅かに揺れ、背にある半透明の羽がぱたぱたとはためく。
目の前にある、普段のカッコいいバアルさんとは真逆の光景によって、あっという間に上書きされてしまっていた。
俺の胸を占めていた、悪いことをしているっていう気分が、ほっこりとした温かいものに。だから余計に、調子に乗ってしまったんだと思う。
…………俺からバアルさんに……き、キスしたことって、ない……よな。
不意に過ぎった考えを、何故か一切躊躇なく、実行に移そうとしていたんだからさ。
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