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★ もっと、俺のこと構ってください
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珍しいこともあるもんだ。たっぷり優しく彼から致してもらった後に、俺がしばらく眠ってしまうのはいつものことなんだが……
「……バアルさん? バアル? ……やっぱり寝てるよな……」
しっかり俺に腕枕をしてくれたまま、バアルさんは固く目を閉じている。そっと呼びかけようが、高い鼻を指先でちょんちょんとつついてみようが、ぴくりとも動かない。半透明の羽を縮め、規則正しい寝息を立てながら、時々二本の触覚を揺らすだけ。
兵士さん達との手合いの後、バアルさんは「何も問題はございませんよ」と微笑みかけてくれていたけど、やっぱり疲れていたんだろう。
なんせ多勢に無勢だったし。それに、今日は、一緒に出来たから……俺だけじゃなくて自分も、綺麗にしてから着替えないといけなかったんだしさ。
「……キス、して欲しかったな……」
真新しい、石鹸の香りがする白いシーツの上に、うっかりこぼしてしまっていた気持ちが、誰に聞かれるでもなくぽつんと落ちる。
何故かは、自分でも分からない。けれども、してもらった後は、もうちょっとだけバアルさんに触れて欲しくなるというか……甘えたくなってしまうんだ。
いや、まぁ……いつもバアルさんには、甘えちゃってるし。こういう触れ合いも、まだ3回目なんだけどさ。
……ちょっとだけ、一回だけならいいんじゃないか? と自分の欲望に正直な心の中の俺が、俺をそそのかしてくる。
穏やかな寝顔を前にして、揺らいでしまっている俺に……ほら、前にしかけた時もさ、して頂けないのでしょうか? って残念がってくれただろう? と畳み掛けてくる。
「…………ごめんなさい」
結局、俺は欲望に抗うことが出来なかった。謝罪の言葉を口にしながらも、静かに呼吸を繰り返している薄い唇をこっそり奪ってしまっていた。更には、出来るだけ長く触れ合おうと、特別なキスをするくらいに、ずっと重ねたままでいたんだ。
……さすがにそろそろマズいかな。
顔を離そうとしたが叶わなかった。距離を取ろうとしても、いつの間にか添えられていた手で後頭部を押さえつけられて動けない。
「んぅ? ……は、ぁ……んっ、ん……ふ、ぁっ、んん……」
頭の中がハテナマークで埋め尽くされている間に、優しく上唇を食まれた。僅かに空いた隙間から、湿った熱が口内へと入り込んできた。ゆるゆると動く舌先から与えられる甘い刺激によって滲んだ視界で、嬉しそうに微笑むバアルさんと目が合う。
「ん、ぁ……いつから……ですか?」
「……貴方様が、大変お可愛らしい声で……キスして欲しかったな……と呟いた時からですね」
……ほとんど最初っからじゃないか!!
即座に俺は叫んでしまっていた。勿論、心の中で。そんなことを考えていたもんだから、態度にまでしっかり出てしまっていた。
いくつもの六角形のレンズで構成された宝石みたいな瞳を細め、どこか上機嫌に触覚を揺らしている彼を、じっと見つめてしまっていたんだ。
ますます笑みを深めた彼が、彫りの深い顔を寄せ、額を擦り寄せてくる。また、俺達の距離がゼロになって、優しく何度も触れてくれた後に、バアルさんが「……違いましたか?」と悪戯っぽく笑う。
さっきのは、強請っていた訳じゃなかった。でも単純な俺は、すっかり気持ちがふわふわしてしまっていて……
「……違いません。だから、もっと……俺のこと、構ってください……お願いします……」
認めただけじゃない。さらに追加で強請ってしまっていたんだ。
「畏まりました……」
あふれてしまいそうな喜びを湛えた唇が、俺の額にそっと触れてくれる。目尻のシワを深めて「さあ、どうぞこちらへ……」と広げられた腕の中へと、俺は胸を高鳴らせながら擦り寄っていった。
「……バアルさん? バアル? ……やっぱり寝てるよな……」
しっかり俺に腕枕をしてくれたまま、バアルさんは固く目を閉じている。そっと呼びかけようが、高い鼻を指先でちょんちょんとつついてみようが、ぴくりとも動かない。半透明の羽を縮め、規則正しい寝息を立てながら、時々二本の触覚を揺らすだけ。
兵士さん達との手合いの後、バアルさんは「何も問題はございませんよ」と微笑みかけてくれていたけど、やっぱり疲れていたんだろう。
なんせ多勢に無勢だったし。それに、今日は、一緒に出来たから……俺だけじゃなくて自分も、綺麗にしてから着替えないといけなかったんだしさ。
「……キス、して欲しかったな……」
真新しい、石鹸の香りがする白いシーツの上に、うっかりこぼしてしまっていた気持ちが、誰に聞かれるでもなくぽつんと落ちる。
何故かは、自分でも分からない。けれども、してもらった後は、もうちょっとだけバアルさんに触れて欲しくなるというか……甘えたくなってしまうんだ。
いや、まぁ……いつもバアルさんには、甘えちゃってるし。こういう触れ合いも、まだ3回目なんだけどさ。
……ちょっとだけ、一回だけならいいんじゃないか? と自分の欲望に正直な心の中の俺が、俺をそそのかしてくる。
穏やかな寝顔を前にして、揺らいでしまっている俺に……ほら、前にしかけた時もさ、して頂けないのでしょうか? って残念がってくれただろう? と畳み掛けてくる。
「…………ごめんなさい」
結局、俺は欲望に抗うことが出来なかった。謝罪の言葉を口にしながらも、静かに呼吸を繰り返している薄い唇をこっそり奪ってしまっていた。更には、出来るだけ長く触れ合おうと、特別なキスをするくらいに、ずっと重ねたままでいたんだ。
……さすがにそろそろマズいかな。
顔を離そうとしたが叶わなかった。距離を取ろうとしても、いつの間にか添えられていた手で後頭部を押さえつけられて動けない。
「んぅ? ……は、ぁ……んっ、ん……ふ、ぁっ、んん……」
頭の中がハテナマークで埋め尽くされている間に、優しく上唇を食まれた。僅かに空いた隙間から、湿った熱が口内へと入り込んできた。ゆるゆると動く舌先から与えられる甘い刺激によって滲んだ視界で、嬉しそうに微笑むバアルさんと目が合う。
「ん、ぁ……いつから……ですか?」
「……貴方様が、大変お可愛らしい声で……キスして欲しかったな……と呟いた時からですね」
……ほとんど最初っからじゃないか!!
即座に俺は叫んでしまっていた。勿論、心の中で。そんなことを考えていたもんだから、態度にまでしっかり出てしまっていた。
いくつもの六角形のレンズで構成された宝石みたいな瞳を細め、どこか上機嫌に触覚を揺らしている彼を、じっと見つめてしまっていたんだ。
ますます笑みを深めた彼が、彫りの深い顔を寄せ、額を擦り寄せてくる。また、俺達の距離がゼロになって、優しく何度も触れてくれた後に、バアルさんが「……違いましたか?」と悪戯っぽく笑う。
さっきのは、強請っていた訳じゃなかった。でも単純な俺は、すっかり気持ちがふわふわしてしまっていて……
「……違いません。だから、もっと……俺のこと、構ってください……お願いします……」
認めただけじゃない。さらに追加で強請ってしまっていたんだ。
「畏まりました……」
あふれてしまいそうな喜びを湛えた唇が、俺の額にそっと触れてくれる。目尻のシワを深めて「さあ、どうぞこちらへ……」と広げられた腕の中へと、俺は胸を高鳴らせながら擦り寄っていった。
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