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★ 好きな人に触れてもらえるのが、こんなに気持ちがいいなんて
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彼の触り方は、終始変わらずゆったりとした優しい手つきなのに。俺の身体の反応は、時間が経てば経つほど過剰になってしまっていた。
今なんて、耳に軽く息を吹きかけられただけなのに。変な声を上げながら、彼にしがみついてしまったしさ。
後、滅茶苦茶言い出し辛いんだけど……勃っちゃってる。確実に。しかも、結構前から。
いや、気持ちがいいことをしてもらっているんだから、男として当然の反応なんだけどさ……現にさっきだって、下半身が大変なことになってたんだし……気づかなかっただけで。
にしても、どうしたもんか……やっぱり、伝えるべきだよな? 俺達、今、エッチなこと……してるんだし……
考えあぐねていた俺に、機会が訪れた。俺の鼻先で艷やかな笑みを浮かべた唇が、どこか甘さを含んだ低音で尋ねたことによって。
「……アオイ、私にして欲しいことはございませんか?」
あ……これは、もうバレてるな、絶対……
世話好きで、俺のことを思う存分甘やかしてくれる優しい彼は、なんでか時々意地悪になる。
特に今みたいに、熱のこもった眼差しで射抜くように俺を見つめてくる時は。お陰でドキドキ高鳴っている心臓が、ますます煩くなってしまうから困ってしまう。
「……言わないと、してくれないんですか?」
「……言って頂けた方が、私は大変嬉しく存じます」
「…………ここ、触って…………欲しいです……」
俺の唯一の抵抗は、速攻で無駄な足掻きに終わった。
いやだって、好きな人から寂しそうな笑顔で、言ってくれたら嬉しい、だなんて強請られたら、言うだろ、普通。滅茶苦茶恥ずかしいけどな。
さすがに、名称を口にする勇気は欠片も無かった。なので、彼の手を取り、そこへと導くことで示した。
でも、後から考えたらこの行動も十分、思い出す度にベッドの上で転げ回りたくなるくらい、恥ずかしいことだったよな……今更遅いけどさ。
「畏まりました……」
色っぽい目尻のシワを深めて、バアルさんが会釈する。あふれんばかりの喜びを湛えた唇で、触れるだけのキスをしてくれる。
それが合図だったみたい。大きな手が、張りつめている俺のものを、ズボン越しにやわやわと握ってくれる。指先で優しく撫で擦り始めた。
「あっ…………ん……っ…………」
比べものにならなかった。まだ、直接触ってもらえている訳じゃないのに。全身が一気に熱くなって、鼓動が激しくなっていく。
さっきまでは少しくらい、睫毛長いな……とか、やっぱりカッコいいな……とか。彼の端正な顔を眺める余裕はあったのに。どんどん頭の中が真っ白になってしまう。
ただひたすら、気持ちがいいってことしか考えられなくなっていく。
思考が塗り潰されているせいなんだろうか? 彼の手が、ゆるゆると上下に動く度に、聞こえるハズのない音が。大きな自分の鼓動音に混じって、ヌチャ……ヌチャ……と湿った音が、聞こえている気がするんだ。
「……力加減に、問題はございませんでしょうか?」
「だ、大丈夫です……ぁッ……だから…………もっと……」
この段階で、すでに俺の頭に冷静な部分は、微塵も残っていなかったんだろう。
でなけりゃ、だらしなく口を半開きに開けたままになんてしない。恥ずかしげもなく自ら腰を浮かして、彼の手のひらに擦りつけるようにヘコヘコ振って強請るようなことはしない。というか出来ない。
「……貴方様のお望みのままに」
するりと下着ごと、ズボンを下ろされた感覚がして、直後に温かく大きな手が、濡れそぼった俺のものを優しく包み込んだ。
男同士だからか、彼自身の経験の豊富さからか。その両方かもしれないけれど、俺が一人でしていた時に、気持ちがいいなって思っていた部分を、的確に指の腹で撫でてくれる。
「あぁっ……ぁ……そ、そこ……」
「こちらが宜しいでしょうか?」
「んっ……はい……気持ちいい、です……」
全体を上下に擦ってもらったり、先端を優しく撫で回してもらったり。でも、ちゃんとキスしてくれるし、頭もよしよしと撫でてもらえる。俺は、もう夢中だった。
もっと、気持ちよく……して欲しい……もっと、もっと……バアルさんに、触って欲しい……気持ちよくなりたい……
自分から彼の口に重ねたり、優しい手の動きに合わせて身体を揺らしたり。全身で、彼がくれる心地のいい感覚に、溺れてしまっていたんだ。
「っあ、あ、も…………声、我慢出来な……ひぁ……」
「……承知致しました」
「んん……んっ……ふ、んぅ……っ……」
その時、俺の声を遮る為にしてくれたキスは、いつもと違うものだった。
前に一回だけあった、バアルさんの気持ちが魔力と一緒に流れてきた時のものとも違う。腰の辺りがぞくぞくして、唇だけじゃなく、口の中にも温かいものが入ってきて。ゆっくり動くそれと舌先が触れ合うだけで、ぴりぴりしたものが全身に走ったんだ。
初めての感覚だったけど……これも気持ちがいいなって思えた俺は、積極的に自分から擦り合わせていた。滲んだ視界に映る、彼の笑みが深くなったのを見て、ようやくだった。
ああ、この温かくて、気持ちいいの……バアルさんの舌なんだな……
認識出来て、少しは驚いた。でも、それ以上に嬉しかったんだ。なんだか、特別なキスをしてもらえた気がしてさ。
お互いを食べ合っているみたいに絡めている内に、真っ白だった頭の中にチカチカと星が瞬き始める。
そんなに強く触られていないのに、急に俺のあそこも、腰も、ビクビク震えて。声にならない叫びを上げながら、大好きな彼の手に包まれながら、俺はイってしまっていたんだ。
突然だが、今の俺は無敵だ。
なんせ、好きな人の前で、今までの情けない自分を遥かに上回る痴態を晒した後だからな。
もう無だ、無。だから、こんなことだって、平気で口にすることが出来るんだ。
「……お願いします……バアルさん……俺のこと……好きって、言ってください…………後、可愛いって……」
「好きです、愛しておりますよ……アオイ。先程の貴方様も、大変お可愛らしかったと私は存じておりますよ」
気配り上手な彼は、俺が余韻で動けなくなっている間に、手早く汚れを清めてくれていた。ちゃんと新しい下着とズボンに着替えさせてくれていた。
だからパッと見、そういうことを致してもらった後だとは分からない。けれども、俺の脳みそには、しっかりと焼きついてしまっていたんだ。
全身でたっぷり味わった気持ちよさも。情けない声を出して、涙やらなんやらで顔をぐしゃぐしゃにしながら、彼の手を汚してしまったことも。
お陰で俺の気分は、下向きどころか地面にめり込んでしまっている。
「……でも……変な声、いっぱい出しちゃったし……それに、バアルさんの綺麗な手に……俺……」
「貴方様の愛らしい声が聞けて、私は大変嬉しく存じました。そして、何より私は今、大変満たされております……私の手で、気持ちよくなって頂けて……」
筋肉質の長い腕に包まれて、ふかふかのベッドに力なく沈んでいた俺を、柔らかい声が励ましてくれる。大きな手で、頭をよしよし撫で回してくれる。
あっさり気分が上を向き、ちょこっとだけ顔を上げた俺を、温かい微笑みが出迎えてくれた。額にそっと口づけてくれた。
「……もう一回、キスしてください……」
「一回と言わず、何度だって致しますよ」
貴方様が求めて頂けるのでしたら……と心の底から嬉しそうに笑う彼の唇が、俺のに重なる。
相変わらず単純な俺は、恥ずかしかった気持ちなどすっかり忘れてしまっていた。そのまま優しい彼に甘やかされながら、ゆったりと眠りに落ちていった。
今なんて、耳に軽く息を吹きかけられただけなのに。変な声を上げながら、彼にしがみついてしまったしさ。
後、滅茶苦茶言い出し辛いんだけど……勃っちゃってる。確実に。しかも、結構前から。
いや、気持ちがいいことをしてもらっているんだから、男として当然の反応なんだけどさ……現にさっきだって、下半身が大変なことになってたんだし……気づかなかっただけで。
にしても、どうしたもんか……やっぱり、伝えるべきだよな? 俺達、今、エッチなこと……してるんだし……
考えあぐねていた俺に、機会が訪れた。俺の鼻先で艷やかな笑みを浮かべた唇が、どこか甘さを含んだ低音で尋ねたことによって。
「……アオイ、私にして欲しいことはございませんか?」
あ……これは、もうバレてるな、絶対……
世話好きで、俺のことを思う存分甘やかしてくれる優しい彼は、なんでか時々意地悪になる。
特に今みたいに、熱のこもった眼差しで射抜くように俺を見つめてくる時は。お陰でドキドキ高鳴っている心臓が、ますます煩くなってしまうから困ってしまう。
「……言わないと、してくれないんですか?」
「……言って頂けた方が、私は大変嬉しく存じます」
「…………ここ、触って…………欲しいです……」
俺の唯一の抵抗は、速攻で無駄な足掻きに終わった。
いやだって、好きな人から寂しそうな笑顔で、言ってくれたら嬉しい、だなんて強請られたら、言うだろ、普通。滅茶苦茶恥ずかしいけどな。
さすがに、名称を口にする勇気は欠片も無かった。なので、彼の手を取り、そこへと導くことで示した。
でも、後から考えたらこの行動も十分、思い出す度にベッドの上で転げ回りたくなるくらい、恥ずかしいことだったよな……今更遅いけどさ。
「畏まりました……」
色っぽい目尻のシワを深めて、バアルさんが会釈する。あふれんばかりの喜びを湛えた唇で、触れるだけのキスをしてくれる。
それが合図だったみたい。大きな手が、張りつめている俺のものを、ズボン越しにやわやわと握ってくれる。指先で優しく撫で擦り始めた。
「あっ…………ん……っ…………」
比べものにならなかった。まだ、直接触ってもらえている訳じゃないのに。全身が一気に熱くなって、鼓動が激しくなっていく。
さっきまでは少しくらい、睫毛長いな……とか、やっぱりカッコいいな……とか。彼の端正な顔を眺める余裕はあったのに。どんどん頭の中が真っ白になってしまう。
ただひたすら、気持ちがいいってことしか考えられなくなっていく。
思考が塗り潰されているせいなんだろうか? 彼の手が、ゆるゆると上下に動く度に、聞こえるハズのない音が。大きな自分の鼓動音に混じって、ヌチャ……ヌチャ……と湿った音が、聞こえている気がするんだ。
「……力加減に、問題はございませんでしょうか?」
「だ、大丈夫です……ぁッ……だから…………もっと……」
この段階で、すでに俺の頭に冷静な部分は、微塵も残っていなかったんだろう。
でなけりゃ、だらしなく口を半開きに開けたままになんてしない。恥ずかしげもなく自ら腰を浮かして、彼の手のひらに擦りつけるようにヘコヘコ振って強請るようなことはしない。というか出来ない。
「……貴方様のお望みのままに」
するりと下着ごと、ズボンを下ろされた感覚がして、直後に温かく大きな手が、濡れそぼった俺のものを優しく包み込んだ。
男同士だからか、彼自身の経験の豊富さからか。その両方かもしれないけれど、俺が一人でしていた時に、気持ちがいいなって思っていた部分を、的確に指の腹で撫でてくれる。
「あぁっ……ぁ……そ、そこ……」
「こちらが宜しいでしょうか?」
「んっ……はい……気持ちいい、です……」
全体を上下に擦ってもらったり、先端を優しく撫で回してもらったり。でも、ちゃんとキスしてくれるし、頭もよしよしと撫でてもらえる。俺は、もう夢中だった。
もっと、気持ちよく……して欲しい……もっと、もっと……バアルさんに、触って欲しい……気持ちよくなりたい……
自分から彼の口に重ねたり、優しい手の動きに合わせて身体を揺らしたり。全身で、彼がくれる心地のいい感覚に、溺れてしまっていたんだ。
「っあ、あ、も…………声、我慢出来な……ひぁ……」
「……承知致しました」
「んん……んっ……ふ、んぅ……っ……」
その時、俺の声を遮る為にしてくれたキスは、いつもと違うものだった。
前に一回だけあった、バアルさんの気持ちが魔力と一緒に流れてきた時のものとも違う。腰の辺りがぞくぞくして、唇だけじゃなく、口の中にも温かいものが入ってきて。ゆっくり動くそれと舌先が触れ合うだけで、ぴりぴりしたものが全身に走ったんだ。
初めての感覚だったけど……これも気持ちがいいなって思えた俺は、積極的に自分から擦り合わせていた。滲んだ視界に映る、彼の笑みが深くなったのを見て、ようやくだった。
ああ、この温かくて、気持ちいいの……バアルさんの舌なんだな……
認識出来て、少しは驚いた。でも、それ以上に嬉しかったんだ。なんだか、特別なキスをしてもらえた気がしてさ。
お互いを食べ合っているみたいに絡めている内に、真っ白だった頭の中にチカチカと星が瞬き始める。
そんなに強く触られていないのに、急に俺のあそこも、腰も、ビクビク震えて。声にならない叫びを上げながら、大好きな彼の手に包まれながら、俺はイってしまっていたんだ。
突然だが、今の俺は無敵だ。
なんせ、好きな人の前で、今までの情けない自分を遥かに上回る痴態を晒した後だからな。
もう無だ、無。だから、こんなことだって、平気で口にすることが出来るんだ。
「……お願いします……バアルさん……俺のこと……好きって、言ってください…………後、可愛いって……」
「好きです、愛しておりますよ……アオイ。先程の貴方様も、大変お可愛らしかったと私は存じておりますよ」
気配り上手な彼は、俺が余韻で動けなくなっている間に、手早く汚れを清めてくれていた。ちゃんと新しい下着とズボンに着替えさせてくれていた。
だからパッと見、そういうことを致してもらった後だとは分からない。けれども、俺の脳みそには、しっかりと焼きついてしまっていたんだ。
全身でたっぷり味わった気持ちよさも。情けない声を出して、涙やらなんやらで顔をぐしゃぐしゃにしながら、彼の手を汚してしまったことも。
お陰で俺の気分は、下向きどころか地面にめり込んでしまっている。
「……でも……変な声、いっぱい出しちゃったし……それに、バアルさんの綺麗な手に……俺……」
「貴方様の愛らしい声が聞けて、私は大変嬉しく存じました。そして、何より私は今、大変満たされております……私の手で、気持ちよくなって頂けて……」
筋肉質の長い腕に包まれて、ふかふかのベッドに力なく沈んでいた俺を、柔らかい声が励ましてくれる。大きな手で、頭をよしよし撫で回してくれる。
あっさり気分が上を向き、ちょこっとだけ顔を上げた俺を、温かい微笑みが出迎えてくれた。額にそっと口づけてくれた。
「……もう一回、キスしてください……」
「一回と言わず、何度だって致しますよ」
貴方様が求めて頂けるのでしたら……と心の底から嬉しそうに笑う彼の唇が、俺のに重なる。
相変わらず単純な俺は、恥ずかしかった気持ちなどすっかり忘れてしまっていた。そのまま優しい彼に甘やかされながら、ゆったりと眠りに落ちていった。
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