間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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やっぱり、俺って魅力がないんだろうか

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 ……惨敗だ。バアルさんに喜んでもらえるどころか、彼を悲しませてしまった。

 のぼせてなんて、いなかったから。着替えさせてもらっている間に、すっかり正常に戻った俺を見て、安心したように微笑んではくれたけどさ。

「……俺って、やっぱり……魅力ないのかな」

 バアルさんは、俺にもドキドキしてくれているって言ってくれたけど、今日もいつもどおりだった。

 執事服を脱いだら、一緒にお風呂に入ったら……スキンシップだけじゃ済まなくなるって言ってくれていたのに。

「……貴方様は、大変魅力的でございますよ」

 ふかふかのベッドの上に転がっていた俺のぼやきに、穏やかな低音が答える。

 シャツの襟元を緩め、髪を下ろしたままの彼が隣に音もなく寝転がると、俺を優しく腕の中へと抱き寄せてくれた。

「…………でも、普通だったじゃないですか」

 完全に、自分の不甲斐なさのせいなんだが。この時の俺は、ちょっとだけ拗ねていた。そして、珍しく素直だった。

「……俺は、バアルさんの裸にドキドキして……腰まで抜かしちゃったのに……スキンシップ以上のこと……してくれなかったじゃないですか」

 彼に問われる前に、自分の方からぶつぶつと、心の内をまるっと口にしてしまっていたんだから。

 宝石のように煌めく瞳がぱちぱち瞬く。

 俺の頬をゆるゆる撫でてくれていた、一回り大きな手にすり寄れば、穏やかに綻んでいた口元に艷やかな笑みが浮かんだ。

「……私めを、意識していらっしゃったのですか?」

「……俺だって男ですよ。好きな人の裸見て、何とも思わない訳……ないじゃないですか……」

「……期待していらっしゃったのですか?」

「……むしろ、昨日の時点で期待してましたよ。心だけじゃなくて……身体もバアルさんのものにしてくれるのかなって……んっ」

 あっという間に距離を詰められ、重ねられる。

 いつの間にか頭の後ろをしっかり固定され、腰の辺りにもちゃっかり筋肉質の腕が回されていた。

 優しく食んでくれるのは変わらないんだけど。少しだけ、いつも物腰が柔らかい彼にしては、強引というか……あまり余裕がないような気がする。

 自惚れてしまっても良いのだろうか……彼も、俺にドキドキしてくれているんだって。

 吐息ごと奪われてしまうような触れ合いに、蕩けていた頭が、さらにぼうっとしてくる。身体の奥が疼くような、不思議な感覚が強くなる。

 視界いっぱいに映っていたハズの彫りの深い顔立ちが、徐々にじわりと滲んでいった。

「……今からでも、叶いますでしょうか?」

 浅い呼吸を繰り返しながら、ぼんやりと彼の瞳を見つめていた俺に、柔らかい声がぽつりと尋ねる。

「……いつでも大歓迎ですよ……ってずっと待たせていた俺が言える立場じゃないですけどね」

 ふわりと綻んだ薄い唇につられ、気がつけば俺も笑っていた。指が絡んで繋がれて、再び俺達の距離がゼロになる。

 段々と全身に広がっていく、ふわふわと心地のいい感覚に身を委ね、俺はゆっくり目を閉じた。
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